表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロンギヌス  作者: 白河・DG・夜舟
翌日継続試合

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/49

37.やるからには、容赦なく

 ぶつけられた方は、元々腕の無い肩。痛い以外は、影響はそれほどでもないです。

 そういうことでは、ないのです。

 ベンチの中で、テキパキと海浜のキャッチャーが応急処置を施していく。

「直接、骨に当たってんな。筋や筋肉じゃないだけましだ。ただ、しばらくは腫れるし痛いな」

「…あいつ、わざとだ」

 うめくような小声で、イヌイが言った。

「わざと?」

「ああ…」

「…どうする」

「借りは、返す。絶対に」

「だろうな」

 ニヤリと笑うと、わざとらしくぶつけられた肩をキャッチャーは叩いた。

「ウギャアッ!」

「その元気があれば大丈夫だろう。さっさと塁に行け」

 イヌイは、恨めしそうに睨み付けながら、一塁ベースに向かった。


              ~ ・ ~


 尾形は、すぐにファーストの二番手ピッチャーと交代した。

 塁のカバーに入った尾形を、イヌイが睨み付ける。

 当然といえばそうだが、イヌイが地区大会で塁に出るのは初めてである。

 リードも取らないし、まして盗塁することなど論外だろう。

「どういうつもりだ」

「別に」

「わざとぶつけただろう」

「まさか」

「真剣に勝負するんじゃ、なかったのか」

「勝つためだ」

 尾形は心底悔しそうに、しかしそれでもきっぱりと言い切った。

「俺にぶつけて、投げさせないようにすることでか?」

「そんなヤワな奴じゃ、ないんだろ」

 一塁に投げられた牽制球をキャッチして、儀礼的にイヌイの胸を叩いた。

 リードも取らないランナーに牽制など無意味だが、2巡目に入るトップバッター相手に、間合いをとったらしい。

「じゃあ、どういうことだよ。なんで俺に投げたんだ?」

「責任をとるためだ」

「責任?」

 カキーン…

 久しぶりに響く快音に、イヌイは反射的に走りだした。

 ボールが目の前を抜けていく。

 セカンドが全速力で走り、抜けそうなボールに飛びついて止めた。

「げっ、それ取るかっ?」

 ドタドタと走るイヌイを見ながら、尾形は倒れたセカンドからトスを受け取る。

 ステップを切って、勢いよく2塁ベールカバーに入ったショートに送球。

 さすがに鍛えられた守備である。

 巨漢を倒して、慣れないヘッドスライディングするイヌイ。

 ボールはやや高くそれて、カバーのショートがジャンプしてボールをキャッチ。

 なんとか伸ばした長い手が、先にベースを触った。

「セーフ!」

 しかし、その真上に遊撃手のスパイクが落ちる。

「ギャっ!」

 激痛に、叫んだイヌイ。

 バランスを崩した遊撃手は、そのままイヌイの体の上に倒れ込んだ。

「た、タイム!」

 二塁球審が審判が試合を止める。

 他の審判も集まってきた。

 海浜のベンチから、キャプテンが出てくる。

 それに合わせるかのように、昭和の選手も二塁ベース付近に集まってきた。

 観客席も、ザワザワとし始める。

 昭和の遊撃手は、すぐに起き直った。

 しかし、イヌイはまだ起きない。

「わざと、くさいな」

「まさか。ラフプレー、とは言えないだろ?」

「送球はギリギリだったし、今の尾形に送球のコントロールは求められないんじゃねえか?」

「一塁に投げれば確実にアウト取れたはずだ?なにもギリギリの二塁に投げることはないだろ」

「いや、ピッチャーのファーストへのベースカバーが遅れていた。それに、ああ見えて、海浜の1番バッターは結構足速いぞ」

「まあな。足の遅いイヌイを刺した方が確実性は上という判断も、あるか…」

「状況としては、不可抗力だな」

 キャプテンが腕を組んで、険しい顔のまま言った。

「だから、審判も、海浜のナインも、なにも言わないんだよな。

 ただ、尾形のコントロールは、別に関係ないな。イヌイにぶつけた時は、間違いなく肩を狙っていた」

「…あいつ、かっこわるいって、このことなのか?」

 愕然とする気持ちを、能口は抑えられなかった。


 新品のユニフォームをドロドロにしながら、イヌイが起きなおった。

 海浜の客席から起こる歓声に、イヌイは息を切らせながらも、手を上げて応えた。

 海浜のキャプテンがその様子をみて、コールドスプレーをかけている。

「まずいな。がっちり踏まれてるぞ」

「でも、治療にいく様子、ありませんね」

「そこまでの必要はないということだろう?」

「いや…スパイクを履いた靴で踏まれてるんだぞ。後で絶対に腫れる」

「なに考えてるんだ、アイツ?」

「代わりは、いないのさ」


 明らかに、勝利のために、チームとして、イヌイ潰しに動いています。

 汚くても卑怯でも、強い方が勝つのです。

 何が何でも、何と言われようと、どうしても勝ちたいのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ