34.お前ら、ほんとにヒマだな
翌日継続試合。
お前ら、ホント暇なんだな。
今日も同じように延長戦とかだったらどうする気だ?
…いや、さすがにないか。ここまで来たら最後まで観たいよな。
ここまで読んでくださった皆様は、最後までお付き合い頂けます、ヨネ?
眠い。
腰が痛い。
疲れた。
喉が痛い。
ブウブウ言いたいのを堪えながら、それでも能口は球場に足を運んだ。
キャプテンは、一応確認だが、と前置きしていたが。
決勝戦を見に来るのは、あくまでも個人的な事であって、チームとしてではない。
だから、体調の悪い者や都合のつかない者は、こなくてもいい。
そう言っていたのだが。
能口としては、ここまで付き合って止めるわけにも行かない。
そう思い、無理やり球場にきたのだが。
「お前ら、ほんとにヒマだな」
「そういうお前だって」
南洋第一の三年生ナインは、全員そろっていた。
みんな眠そうな顔をしていたが、三年間同じチームの中で共に戦ってきた仲間である。
考えている事は、大体同じらしい。
「みんなそろったか。さすがに今日は席も空いているだろう。行くぞ」
キャプテンの号令で、ぞろぞろと階段を登る。
球場は、さすがに満席とは行かなかった。
両校の応援団はそろっていたが、一般生徒は自由参加とされたらしく、昨日の半数ほどしかいないようだ。
その代わり、報道陣やテレビ関係者がかなり来ていた。
延長50回を数えてまだ0-0のままとなると、地区大会とはいえ歴史的なニュースになる。
試合前だというのに、イヌイの周りには何人かの記者が取り囲んでいた。
「あの記者たち、常識ってものがないのか」
「イヌイも、常識ないほうですから。自分で追い払えないんでしょう」
さすがに海浜のキャッチャーが見かねたのか、イヌイの腕を引きずってうまく逃がしてやった。
「…ところで、尾形は今日も投げるのか?」
「ええ、今朝、俺の携帯に電話があって、そう言ってました」
「へえ、昨夜お前が言ってたように、アイツもバカを貫くつもりだな?」
「それが…」
口ごもる能口に、キャプテンや他のナインは心配そうな顔を向ける。
「今日の試合、自分はかっこよくないかも知れないが、見捨てないでくれって」
「…うまく投げられないって事か?」
「そりゃ、昨日あれだけ投げてりゃな。肩が壊れないか心配だぜ」
「いや、それも勿論あるだろうけど、そういう意味じゃなさそうなんだ」
「じゃあ、どういう事だよ」
「わからない…けど…」
能口の目線の先に、昭和のベンチがあった。
投球練習をしているのは、尾形ではなかった。
尾形は、ベンチの奥で肩や腕をアイシングしている。
昨日のダメージが、一晩で抜けるはずもない。
だが、しかしイヌイは全く平気そうな顔で、投球練習をしているのだ。
能口には、訳が判らなかった。
~ ・ ~
延長51回の表、昭和のマウンドに立ったのは、別のピッチャーだった。
地区大会の3、4回を1失点で投げきった、好投手である。
一方の尾形は、ファーストを守っていた。
投げる機会のあまりないポジションだけに、肩や腕の負担はないが。
「あいつ、なにやってるんだ?」
「怪我を押してまで、出ることないだろ。替わりがいない訳じゃないし」
「…」
尾形は、海浜のベンチを見つめている。
その奥に座る、イヌイしか、見ていない。
能口は、不安そうに尾形を見つめた。
「なに、する気だ…?」
昭和の二番手ピッチャーは、本格的なオーバースローで投げるタイプだ。
尾形と違って、打たせてとるタイプではない。
直球の切れとフォークが武器である。
変化球は得意ではないので、出会い頭の一発は充分あり得る。
とはいえ、まだ初打席。
海浜の素人打線は、ただ振り回すことしか出来ず、きれいに三者三振だった。
昨日、あんだけ投げて、今日はさすがに休養日だろうと思ったら、本職のファーストをこじ開けて出場する尾形君。ナニヤラカスキダ?
あ?イヌイが出るなら俺も出る?
だからアレは人間じゃ…




