33.帰路
原文が変な展開になっていたので直しました。
いえ、読者の方には全く関係ないですね。
「能口ぃ、余計なこと言うから、いい迷惑だろうが」
「そんな事は尾形にいえよ。あの野球馬鹿に」
尾形は結局、最後まで投げきった。
50イニング、打者170人に対し、安打10、四球2の215球という成績だった。
最後の方は、もう肩を上げるのも辛そうだった。
延長四十回位から、海浜の打線にようやく当たりが出てきたが、昭和の守備陣が無失策の完璧な守りを見せた。
明らかなファインプレーが5つ。
外野に抜けたものの、鉄砲肩をみせて刺した走者が3人。
延長四十二回からは毎回走者を背負ったピッチングになったが、併殺打6回という打たせて取るピッチングを心がけていた。
海浜の四番に対しては、尾形にとって屈辱ともいえる敬遠を2回繰り返した。
監督からピッチャー交代の指示が出た時も、猛烈に抗議し、押し切ってしまった。
まさに、野球馬鹿だ。
敵味方を問わず、観客席も含めて誰もがそう思っていた。
それでも昭和のナインは、自分たちのチームの勝敗を尾形に託し、誰も文句一つ言わなかった。堅守で彼をもり立てていった。
~ ・ ~
「結局、イヌイの奴、いくつ投げたんだ?」
「はい。50イニングの打者151人に対し、安打1の452球です。初回の安打と、二回にバントを2回、守備陣に処理させた後は、全て三振ですね」
「連続三振記録…」
「はい。145連続奪三振。全て三球で討ち取ってます」
「…人間じゃ、ねえな」
「絶対、人間じゃねえよ」
星さえ見え始めた夜空の下で、帰りを急ぐ観客に紛れながら、南洋第一ナインは口々にそう言い合った。
「能口、明日の試合、どっちが勝つと思う?」
「…わかんないですね、キャプテン」
「なんだ、どうみてもイヌイ有利だろうが」
キャプテンは、にこやかな笑みを浮かべている。
このところの、能口のイヌイファンぶりを見ているのだろう。
「…わかんないです。イヌイは元からバカですけど、尾形の奴も相当な野球バカですよね」
「随分な言い方だな」
「昭和野球部が勝ちたいなら、ピッチャーを代えれば済むことですよね。現に監督もそういう指示を出していたし。だから、別にイヌイが有利という訳じゃないです。
でも、尾形も、他のナインも、そうしようとはしなかった」
「みんなして、バカばっかりそろってるわけか」
「海浜のナインも相当なバカばかりですけど、昭和のナインも負けていない。
だから、明日はどっちがバカを貫けるかがカギじゃないかと思うんです」
「能口…」
「はい?」
「お前、熱でもあるんじゃないのか?」
キャプテンは呆れた顔をした。
しかし、それでもなにか納得したような顔で、そう言った。
(続く)
いや尾形君、身体壊すよ、交代しなよ。
イヌイが交代しないなら、俺も投げる?
あれは人間じゃないんだから、一緒にしない方がいいよ。
SFじゃないんだから、人間なんだろうって?
いや、この作品、元々はSF…




