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ロンギヌス  作者: 白河・DG・夜舟
4回戦

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18/49

18.なにか、変だ

 まあ、たしかに、当たりすぎ。

 何か、変だ、と、思わないとねぇ?

「おしかったなー。でも、これならいつか点が入るぞ」

「でも、東征のバッター、当たり過ぎじゃないですか?」

 なにか、変だ。

 能口は、相変わらず振り回すしか能のない海浜のバッターを見ながら考えていた。

 もし自分たちが東征のバッターで、ある程度練習の期間を貰えれば、イヌイの速球に合わせてバットを振ることは可能だろう。

 ただ、出所の判らない球に合わせてスイングをすることは、かなり難しい技術だ。

 自分たちが対戦した時は、故にその必要がないバントを多用したくらいだ。

 まぐれを狙って振るのは判るが、それにしては当たり過ぎる。

 まるで、事前にコースが判っているみたいだ。

 しかし、イヌイはコースを散らして投げている。

 どうやって…

「なんだ、また三者三振か。毎度の事とはいえ、だらしないな」

 ぼやくキャプテンに、能口は尋ねた。

「海浜のバッター、どうすれば打てますか?」

「まあ、スイングは曲がりなりに振れてるんだから、あとはタイミングを合わせてコースを読めばいいんじゃないか。ボールを良く見て振っていかないとな。

 …あいつらのレベルでアドバイスするなら、それ位だな」

 今更、細かい技術を教えても身につかないだろう。

 キャプテンはそう言って笑った。

「じゃあ、スイング、タイミングがもし合ってきたら、コースはどうやって見分けます?」

「そりゃ、ピッチャーのフォームとか握りとか、前の配球を読むとか、色々あるだろう」

 いや、違う。

 イヌイの投球フォームは、ビデオで見る限り癖など見当たらなかった。

 ストレートしか投げない事もあるが、毎回同じフォームで投げている。

 回が進んでも、それは全く変わらなかった。

 東征のナインが研究しても、おそらく自分たちと同じだとしか思えない。

 それに配球を読むにしても、初回の初球から積極的に振って行けるのはやはりおかしい。

 せめて何球か様子を見る事すらしていないのだから。

「そういうのでは無い場合は、コースは判りませんか?」

「後は、サインを盗むとか?」

 キャッチャーが、思いついたように言った。

「ほら、俺らのバッテリーだと、サインで球種とコース決めとくだろ。投げる直前までミットを他の所にずらしておけば、相手ベンチとかから見られてもコース判らないから、向こうでもしぼりようがないし」

「でも、アイツらは元々サインなんて出してないし…あっ!」

 そうだ、サインどころか、キャッチャーは元から構えた所以外にミットを動かしていないじゃないか。

 イヌイの球が見えづらいのはキャッチャーも同じなんだ。

 しかも速くて重いんだから、受ける側としては、サインでコースを確かめる事が出来なければ…

 構えた所にイヌイが投げてくれるのを、待つしかない。

 東征は、キャッチャーのミットの位置を盗み取って、サインで送っているんだ。

 能口は、東征のベンチを見渡した。

 が、そんな素振りを見せる奴はいない。

 ベンチからだと、ミットまで見えづらいらしい。

 コーチボックスに立っている奴も、そんな感じでは無さそうだ。

 あとは、キャッチャーの正面、もっとも観察しやすい所は二塁ベース。

 ランナーがいないなら、その延長線上…

 いた。

 センター後ろのバックスクリーン付近に、東征の制服をきた集団が。

「おい、能口、どこ行くんだ?!」

 駆けだそうとする能口を、キャプテンが止める。

「あいつら、あんな所でスパイしてるんだ!止めさせる!」

「なにぃ!」

 南洋第一ナインは一斉に立ち上がった。

「すいません、通して下さい!」

「ちょっと通して…」

「御免なさい」

 観客をかき分けるように通路まで上がると、センター裏に向かって急いで走り出す。

 最初、東征の制服組は気づいていなかったようだが、ユニフォームをきた一団が、血相を代えて走ってくるのだ。気づかないわけには行かない。

 クモの子を散らすように走り出すと、応援に夢中になっている一般観客席に紛れ込んでしまった。

「くそっ!」

 それでも後を追おうとする能口を、キャプテンが止めた。

「よせ。もう見つからない。それに他の学校とトラブルを起こす訳には行かない」

「あいつら、すげえ練習してきたんだとばかり思っていたのに…」

「まあ、スパイは頂けない行為だがな。なんの策も取らない海浜のバッテリーにも問題はあるだろうな」

「キャプテン!」

「まあ待て。何もしないと言ってるんじゃない」

 キャプテンは、部員を何人か残して、見張らせることにした。

「能口、お前海浜のベンチにこのこと伝えてこい」

「えっ?審判団に報告しないんですか?」

「俺たちは当事者じゃない。もうアイツらと戦う権利はないんだ。

 だから、どうするかはアイツらが決めることだ」

「…はい、判りましたキャプテン」

 釈然としない気持ちはあるが、とにかく能口は海浜のベンチに向かった。


 バックスクリーン付近に相手チームと分かる格好で観客がいるなら、スパイしてますよ、と言っているようなもの。いやでも、ただ単に観てるだけ、と言い逃れできますね。

 まあ、見つかると厄介なので、隠れちゃいますね。

 対策しない方も悪いでしょ、とも言えますし。

 という、キャプテンの判断です。

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