第四章 十四
事あるごとに父上や叔父上にチクチクと苦言をもらっても、ついその優しさに甘えて女としての修行を避けていた。
苦手だからとか、自分には向いていないとか、適当な言い訳を並べてずっと逃げていたツケが、今になって回って来ただけなので自業自得には違いない。
「クソッ……どうして私は何もして来なかったのだ……こんな……こんな私では……」
力なく地に伏して止めどなく流れる涙も、落ちてはすぐに消えて行く。どんなに地を叩いたところで、愚かだった私の行為は盆には帰ってこない。
出会った時は怯えて震えるだけの小さな少年だったのに、どうしてこうも彼の存在が心の大部分を占めるまでになったのだろう。
彼の事を考えると胸が痛い
ーー料理が上手いところが大好きだ。お腹も心も満ち足りて幸せになれるから。
彼の事を考えると呼吸が苦しい
ーー私の名を呼ぶ声が大好きだ。信頼と愛情に溢れていて勇気を貰えるから。
彼の事を考えると涙が止まらない
ーー剣を振る姿が大好きだ。ひたむきで真っ直ぐな心が伝わって来るから。
彼を今すぐ抱きしめたい
ーーとにかく大好きだ。私の全てを捧げてもいい。ともに生きて欲しい。
情勢は非常に不利だが、このまま逃げるなどという選択肢は最もあり得ない。
ハイドラが私の事をどう思っているのか、はっきりこの耳で聞くまでは、諦めはつかない。
たとえ結果が負け戦であっても、是が非でも安が否でも再び彼の前に立たねばなるまい。
ぐねぐねと曲がりくねる道にまんまと迷い込んだ挙句に、ようやく進むべき道を見つけた私は、涙で腫らした眼を上に向けて、なんとか立ち上がる事ができた。
「フラウラ、頼みがある。ハイドラが何処へ言ったか教えてくれるか?」
軽く彼女の手に触れ、自分の願いを伝えてみた。
それまで変なものを見るような眼で、私を見ていたフラウラは、ニッコリと微笑み大きくうなづいた。




