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シモン中央学園の問題児達は斯く語りき  作者: 糸又 字四
「自己を厭い続ける」
32/41

往々にして物事は複雑怪奇で

――――シモン中央学園・学園長室/深夜――――


「で、()()()()()()()()いると?」


学園長室にて、眼前に座ったセフィラは紅茶を置いてからそう言った。

ジキルが誰も殺していないと判明した後、僕は連続殺人事件に関して調べてみた。


死体だけが存在しないとか。血痕だけが存在するとか、それだというのに他殺と断言できる現場であるとか、さながら都市伝説じみた事件である。

現場を直接見ているわけでもないし、噂話だけをかき集めた信頼性もへったくれもない証拠だが、そうだとしても()()()()()()だと、それとなしに連想してしまう事件だった。


「⋯⋯まぁ対処できない問題はさておき、はいこれ仕事の報告書」


僕は懐の奥に仕舞い込んでいた、クシャクシャに丸められて傍目からはゴミにしか見えない紙を開いてから渡す。


「どうせ君のことだから、周辺は人払いしてるだろうし、盗聴機器の有無も確認してるだろうから言うけれど、仕事の難度はプルリブスに比べたらマシだったよ」


アルビオン王国は、世界でも有数の魔術先進国である。


僕の地元(大八洲)は未だに飛脚で物を運んでいることもあるってのに、アルビオンでは箒に乗った魔女が荷物を運び、工事は魔術で設計図通りに行い、警察でさえ杖を構えて捕縛を行う。


となれば当然、機密保持の手段も、諜報の手段も魔術が大半だ。

それ故に、魔術以外の手段で探られるのは想定外だったのだろう。


「違法薬物の密輸、人攫いに人身売買⋯⋯倫理的にアウトな実験までやろうとしてるくせに、どうして探られる対策はマトモにできないもんかね⋯⋯まぁこっちとしては楽でありがたいけどさ」


変装や遠距離からの監視、魔術の絡まない盗聴機械、それらの対策は想定外なのか殆どされていない。だからこそ、僕なんかが潜入できて諜報できたわけだが。


「まぁそちらに関しては立花先輩がいなかったとしても何れ対処しておりました、私個人でもそれは可能ですし、最悪の場合はラプラス・マクスウェルにどうにかしてもらおうかなぁと」


あらやだこの後輩すごい有能、有能すぎて怖い。


「⋯⋯ところで後輩、話は変わって一つ気になることがあるんだけれども、いいかな?」


「お望みであるのならば」


雑談から探りへ、取るに足らない会話から疑問の解消に切り替える。


「率直に聞くけれど、僕の担当でもある特別対応教室の生徒、()()()()()()()()()()()()()


「⋯⋯どうしてそう思ったのですか?」


肯定も否定もせず、ただいつもと変わらない微笑をして質問に質問で返すセフィラ。


「いや、まぁ、そりゃあそうだろう?万能の才能(カリスタ)人造の人間(マキナ)二重の人格(ハイド)、漫画かってくらいの異色なメンツだし、そりゃあ当然そう思うよ」


「なるほど、では立花先輩はあの生徒らをどのような生徒だと?」


そう言われたので、僕は顎に手を当て少し考えてみた。


最初の考えは、将来的に国家を揺るがしかねない才覚。

だがカリスタとマキナならともかく、ジキル一個人にそれが可能とは思えない。

何よりも、そのような子供であるならば学園長という立場のセフィラから推薦状が出されるはずだ。

つまり、可能性は低い。


次に考えられるのは、セフィラ個人の敵対陣営のスパイ。

子供をスパイとして扱い情報を集めるのは無くはない、見たこと無いは言えないし、僕もされたことがないとは言えない。

だが、純粋無垢なマキナや一市民であるハイドならともかく、カリスタのような公明正大かつ善良な台風みたいな性格では、スパイなどの悪事は難しいだろう。


そして最後は()()()()()()()、アルビオン王国に災禍と凶事を齎すという怪猫。

消去法だが、これくらいしか疑わしく、関連性がないものがない。


「で、答え合わせはどうなんだい?後輩」


その問いにセフィラは、否定か肯定かわからない笑顔だけを返してくる。だが否定しないというのならば、肯定なのだろう。


「実のところ、件の怪猫に関しては私と言えどわかりきっているわけではなくてですね⋯⋯上からの指示通りに動いている、というのが実情です」


「上ってどのくらい?」


この国の一番上(アルビオン王室)ですね」


⋯⋯⋯⋯?




⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯!?


一瞬だけマジで理解できなかった、いや、マジで思考が停止した。人間って本当に驚くとマジで思考停止するんだなって思わされた。


「⋯⋯辞職って」


「ダメです」


常に懐にしまってある辞職届を出す前に、口から言葉を出し切る前に、防がれるかのごとく食い気味で言われた。


「まぁ、先輩の教室に関して様々な事情が入り乱れている、というのが正しいかと。国家を揺るがしかねない才覚や上からの指示、怪猫の関係者といった爆弾を一箇所に集めた、というのが実情ですね」


「つまり僕にそんな爆弾をどうにかさせようとしているわけかい?」


「えぇその通り、出来ますよね?」


「⋯⋯⋯⋯ねぇやっぱり辞」


「絶対にダメです、マジで嫌です」

ちなみに橘立花が常に辞職届を懐にしまっています。

使われることはないでしょう。

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