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シモン中央学園の問題児達は斯く語りき  作者: 糸又 字四
「自己を厭い続ける」
26/41

どうしようもない生物

――――シモン中央学園・寮に続く道/夕暮――――


ラプラス研究クラブから解放されるころには、すっかり日が暮れていた。陽光は定時退社しやがったらしい。

カリスタはベンジャミン代表の手伝いを申し出たので、先に寮に戻るジキルとマキナだけをお見送りする事となった。


「んじゃ自分らは先に寮に戻るんで、お先に失礼します橘先生」


「帰還、さようなら橘先生」


どうやら特別対応教室の生徒らは全員同じ寮らしい、まぁ問題児と通常生徒を同じ寮に入れたら問題が発生するのは理解できる。カリスタがその最たる例だが、問題児という爆弾を島流しのごとく離れの寮に押し込んだとして、それは解決には繋がらないだろうに。


「んじゃ、あまり夜ふかししないようにね」


マキナとジキルに手を振りつつ、二人の背中が手のひらに収まるほどの小ささになるまで待つ。


さて、普通の生徒ならばこのまま放置して仕事に戻れるのだが、如何せん相手は特別対応教室の生徒な上に、恐らく『()()()()()()()()』と推測できる生徒だ。

最早それは、放置する方が職務怠慢まである。


であるならば、監視(ストーキング)するのが正しいだろう。


すぐ近くの木々や建物の凹凸を伝って建物の屋根へ、そして次は屋根から屋根へ、薄暗くなり街灯がぼんやりと照らし始めた街を駆ける。

今の僕の姿を見るものによっては、大八洲の漫画に出てくる『ニンジャ』のように見えるかもしれない。


眼下には沢山の生徒や教師が一方向に向かうが、マキナとジキルはその流れに逆らうかのように歩く。どうやら特別対応教室の生徒寮はかなり遠いところにあるらしい。


「⋯⋯はぁ、最近大変なことしか無いな?心当たりがないとは言えないんだけどさぁ」


「疑問、そうなの?」


「いきなり特別対応教室にぶち込まれたかと思えば、橘先生にボッコボコにされたり、カリスタに半ば無理矢理クラブに所属させられたり⋯⋯なんかもう呪われてるとしか思えないんだが?」


「?⋯⋯それらは拒絶すれば解決可能、特にクラブ」


「んぁー⋯⋯まぁそうっちゃそうか、まぁでもあのクラブに所属してたい理由もあるんだよなぁ」


面倒臭そうな顔をするジキルに反して、マキナの表情は微塵も動かずに機械のような顔をしていた。


「⋯⋯前提、そもそもなぜカリスタに所属させられることに?」


「いや、まぁ、荷物運ぶのを手伝ってたら布教をされて、面倒くさくなって⋯⋯まぁもう割り切ったけどさぁ⋯⋯マキナはどうなんだ?」


「忠告、厳密には一つもクラブに所属していない、よく招かれるだけ、不思議」


「そりゃまぁ、あのラプラス・マクスウェルの養子だからじゃねえの?自分といえど、聞いたときはマジで驚いたんだからな?」


「⋯⋯質問、もしかして私、普通じゃない?」


「今更?????」


メフィスト(悪魔)キリエ(天使)が隣に並んで仲良く談笑する光景は、まるで喜劇かジョークの類にしか見えなかった。




⋯⋯いきなりだが、裏社会の話をしようと思う。


僕は裏社会で10年ほど暗殺者をやっていたわけだが、その過程で多種多様な人物を見たのは言うまでもない。


亡国であるバベルの公家であり群に匹敵する個でもある『大罪貴族』

プルリブスの特務機関であり対企業殲滅部隊『国家倫理捜査委員会』

ロマノフ帝国の始末屋であり黒杖の争いにも投下された『黒き黎明』


良くも悪くも世界は広く、多様を許容するらしい。作家が聞けば垂涎ものだが、その中で最も特異な人物群、組織があった。


その組織は誰一人として自身が所属する組織の全貌を知らず、だからといって組織として統制が取れずに崩壊しているわけでもない、不可思議奇っ怪極まる集団。

各々が自らの信念に則って行動しており、当人だけが満足する行為故に、一切に利をもたらさない有害無益にして害悪無利。

裏社会の一員として扱われておきながら、()()()()()()()()()()()という異常性を持つ組織。


そして何よりも、やつばらはある疾患を患っている


()()()()()()()()()()()


端的に言えば『()()()』の病。

殺人鬼、人を殺す鬼というのだから、人とは違う連中。


本来、生存に不必要な筈の殺戮を生態とし、本能とする『どうしようもない』生物達。

本能のように、真実のように、真髄のように、無意味に無価値に無責任に、理由のない死と殺意を振りまくだけの人間とは違う生物。


人を殺さずにはいられないから殺す。

人を殺さなければ息苦しくてたまらないから殺す。

人を殺そうと思わずに人を殺す。


そしてなにより殺人鬼が殺人鬼たる所以、それは『伏線も予兆も無い』という点。


美味しい料理を食べている最中に殺す。

人と楽しげに話しているのに殺す。

すれ違った見知らぬ他人だけど殺す。

明日の映画が楽しみだけど殺す。

昨日の失恋が辛かったけれど殺す。

殺す理由がないけれど殺す。

殺す理由があるけれど殺す。


たとえ歴戦の古兵だとしても、須臾の時間で殺意の塊に転ずる事を予測できないほどの突発性。そしてなによりも、各々の信念を持って殺人を行う彼らは、自身が所属する組織を『止まる事なき非現(アンリミテッド・)実的連続殺人事変(アンリアルキラー)』と呼んで殺害を繰り返す。


今僕の目の前で、目の色が変わったジキルが片手に持ったナイフを、マキナのうなじに振り下ろそうとしているように、衝動的に殺人を行う哀れな病人たちである。

『殺人鬼』

人を殺す鬼、シリアルキラーとも。

殺人犯とは違い、目的のない殺人を繰り返す生物。

善悪で定義できるものではなく、遭遇するほうが運が悪く、寂しがり屋のただの人間。


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