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第23.5話

今回は間に割って入った和哉が屋上に来る経緯の話です。

「頼む神代! 陸上部に入部してくれ!」


「いや、是非とも我がサッカー部に!」


「何言ってやがる! 神代はバスケ部に入部するんだ!」


「バレーボールが一番良いぞ神代!」


「違う! ウチの空手部に決まってるだろうが!」


「え、え~っと……」


 高校入学二日目の昼休み。


 俺――神代(かみしろ)和哉(かずや)――は弁当食べ終えた後に図書室へ向かっている途中、二年生の先輩方から執拗な部活の入部勧誘をされていた。何故こんな状況になっている理由は、この人達は俺が中学の頃に各運動部から助っ人として大会に出て好成績を残した事を知っているからだ。


 俺は幼い頃から武道の達人である師匠にミッチリ鍛えられた事により、(決して自慢ではないが)身体能力が常人より高い故に、運動部から助っ人として大会に出ていた。だからこの先輩達はそんな俺を確保しようと、躍起になって勧誘してるって訳だ。


 だけど先輩達には悪いが俺はどこの部活にも入部する気は無い。師匠の修行と比べるまでも無いんだが、学校の部活は大して刺激が無い上に、俺と本気でやりあえる相手が全然いない。栖鳳学園の高嶺の花と謳われている生徒会長の佐伯紫苑先輩が武道をやっていると聞いて一度手合わせをしたいと思っているが、一年の俺がそんな事を早々にすると面倒な事になりそうだから、もう少し時間が経ってから挑もうと決めていた。


 っと、話が途中から脱線してしまったが、今の俺は部活には興味無いから、先輩達には悪いが断らせてもらおう。


「すいませんが、俺は部活に入る気は無いのでお引取りを――」


「何を言ってるんだ!? それほどの腕前があるのに凄く勿体無いじゃないか!」


「お前みたいな逸材を逃すわけがないだろう!」


「俺はお前が入部すると言うまで諦めないぞ!」


『『さあ神代! 是非とも我が部の入部届けにサインを!』』


 ………この人達は人の話しを聞く気は全然無いみたいだな。恐らく何度断っても執拗に勧誘すると思うから口で言っても無駄だと思う。かと言って先輩相手に荒事な真似をする訳にはいかない。どうやれば先輩達が諦めてくれるのかを考えているが………一先ずこの場から逃げるとするか。


「大変申し訳ありませんが、俺はどこにも入部する気はありませんので悪しからず。それでは」


『ああっ! 待てぇ!』


 隙を見計らったかのようにダッと逃げ出す俺を見た先輩達が逃さんと言わんばかりに追いかけようとする。


 さて、次の曲がり角で曲がって先輩達の姿が見えなくなったから、ここで高速移動法である宮本流奥義の『疾足』を使って階段に到着っと。


 そしてそのまま階段を上っていると、


『あ、あれ? 神代の奴、どこに行きやがった!?』


『クソッ! 昨日と同じくまた見失ったか!』


『まだそう遠くへは逃げていない筈だ!』


『俺は絶対に諦めないぞ神代!』


『絶対に奴を何が何でも入部させてやる!』


 下にいる先輩達が俺を見失った事により、再び躍起になって俺を探し始めようとしていた。


 声を聞く限りだと、あの先輩たちは虱潰しに俺を探そうと必死になっているから、どこかで隠れて昼休みをやり過ごすとしよう。


 そうと決まれば隠れる所に向いていると言えば……今のところ屋上だな。よし、今から屋上に行って昼休みを潰すとするか。







「ふうっ。ここならそう簡単に見付からないだろうな」


 屋上に着いた俺は誰にも見えない位置に隠れるように横になっている。もうついでに気配も消して、な。


 それにより、誰かが屋上に来ても俺の存在に気付くことは無い。一先ずは次の授業が始まるまでここで昼休みを過ごす。そして放課後には先輩達に捕まる前にさっさと帰宅して、道場で師匠と修業だ。


「あ、そういや綾ちゃんどうしてるかな?」


 師匠との修行を考えてる際、つい綾ちゃんの事を思い出してしまった。あの子とはここ最近会ってないから、今はどうしてるのやら。


 因みに師匠の名前は宮本竜三であり、綾ちゃんは師匠の孫娘。修行に関しては凄く厳しい師匠だが、綾ちゃんの事となると甘くなる。それだけ師匠にとって孫の綾ちゃんが大好きだって言う証拠だが。もしあの子が誰かに苛められていると師匠が知ったら、絶対にその相手を許さないだろう。例え相手が子供であっても、な。と言っても、ちゃんと加減はすると思うが。



 ガチャッ



「ん?」


 突然屋上の扉が開く音が聞こえた。


(もしかしてあの先輩達が来たのか? いや、見つけるにしては速すぎると思うんだが……)


 そう考えながら俺は誰が来たのかを確認する為にソッと窺うと、


「………どうやら天城はまだ来てないようですね」


(あれ? 誰かと思ったら愛(まな)姉(ねえ)じゃないか)


 来た相手が知ってる人だと分かった瞬間に少し安心した。何故か竹刀を持っている事に少し疑問だが。


 あの人は羽瀬川愛美。俺の従姉であり、小さい頃はよく遊んでもらった人だ。今でも愛姉とは時折剣道の相手をする……とは言っても、俺と愛姉では実力差があるので、殆ど俺が受け身になって攻撃を避けたり防いでいるがな。言うまでもないと思うが、俺が受け身にならないと愛姉とは勝負にならないから、敢えてそうしているだけだ。別に俺がMな訳ではない。


(けど愛姉が屋上に来るなんて意外だったな。普段は図書室で読書してるのに)


 愛姉とは中学が一緒だったので、普段の行動パターンは分かっている。だから愛姉が屋上に来るのが珍しいのだ。あの様子だと誰か来るのを待っているみたいだが……ひょっとして愛の告白とか? そして相手は絶賛片思い中の天城修哉さんだったりして。


(いや、それはないか。でなきゃ竹刀なんて持ってくる訳ないし)


 と言うか愛姉の様子がいつもと違う。まるで状況次第では許さんと言わんばかりに。


「……天城がもし本当に女に現を抜かしてたら絶対に……!」


(え? 修哉さんを叩きのめす? どう言う事だ?)


 愛姉の発言に思わず目が点になる。あの二人は喧嘩でもしたのか?


「フフフフフ……もしその時はわたくしがこの竹刀で叩きのめしてさしあげますわ……!」 


(怖っ! 何か黒いオーラを出しちゃってるよ! ってか、一体愛姉に何が遭ったんだ?)


 あの人があそこまでになって怒るって事は尋常じゃないぞ。修哉さんは愛姉に一体何をしたのやら。

この後、暴走する愛美に和哉が割って入ると言う事でした。

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