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第24話

今回はフライング気味での投稿です。


それではどうぞ!

「ちょっと訳あって屋上に来ただけだ。ってか、そんなことよりも愛姉(まなねえ)。さっきも言ったが、丸腰の天城先輩相手に得意の上段攻撃をやるなんて何考えてるんだ?」


「和哉には関係ありません! 早くそこをどきなさい!」


「今の愛姉を見て退く訳にはいかないな」


 羽瀬川の上段攻撃を左手で受け止めてるの男子生徒は神代(かみしろ)和哉(かずや)で、俺の後輩であり羽瀬川の従弟。


 神代とは中学の頃に羽瀬川を通して知り合いになり、そしてAMAGIによく来る常連客の一人だ。AMAGIに来る事もあって、神代が綾ちゃんの祖父の弟子である事も知った。小さい頃から綾ちゃんの祖父により厳しい修行でミッチリ鍛えられた事で、途轍もない身体能力を持っている。それにより以前通っていた中学の全ての運動部から執拗な部活勧誘されるほどの引っ張り凧が1ヶ月以上続いてた事があった。神代本人はどこも入部する気は無く、物凄くウンザリしていたが。


 因みに神代は結局どこも入部しなかった。練習試合や大会の助っ人だけなら参加すると妥協したのだが、神代が参加すると勝利と好成績を残す事が災いし、執拗なまでの部活勧誘が続く羽目になったらしい。恐らく今でも部活勧誘されてるに違いない。………って、今はそんな事を思い出してる場合じゃない。


「か、神代。助けてくれるのは感謝するが、これは俺と羽瀬川の問題だから――」


「何言ってんですか。愛姉の上段を生身で喰らったら怪我どころじゃすまないって事は、天城先輩もよく知ってる筈だ」


「まぁ、確かにそうだが……」


「それに、危機的状況に陥ってる先輩を助けるのは後輩の務めだし」


 そんな事をするのは神代しかいないと突っ込みたかったが、折角助けて貰ったのに、そんな突っ込みは助けてくれた後輩に失礼だと思って言わなかった。


 にしても凄いな神代は。あの羽瀬川の上段を涼しい顔をして素手で難なく受け止めるとは。


「こ、この……! 和哉、さっさとその手を放しなさい!」


「そうしたら今度は俺に攻撃をしそうな気がするぞ」


 攻撃を防がれた羽瀬川はさっきから竹刀を握っている神代の手から逃れようとしているが、全然ビクともしていなかった。腕力がある羽瀬川ですら、神代の前では大した事は無いみたいだ。それだけ二人の間にはかなりの差があると言う証拠と言ったところか。


「けどまぁ、今の愛姉に何を言っても無駄みたいだから一先ずは――」


 そう言って神代は空いてる右手で、


「これで頭を冷やしな」



 バチンッ!



「うぐっ!」


「うわっ……」


 羽瀬川の額にデコピンを喰らわせた。それも凄く痛そうな音もして。俺は喰らってないが思わず痛そうに顔を顰める。


 そして神代のデコピンを喰らった羽瀬川は竹刀を離すと、すぐに額を両手で押さえて顔を伏せた。


「~~~~~!!!!!」


 物凄く痛いと顔に出している羽瀬川。ああするって事は相当痛いだろうな。でなければあんな顔はしない。


「お、おい神代。お前ちゃんと加減したんだろうな?」


「勿論」


「その割には凄い音がしたと思うんだが?」


「もし俺が本気でやったら愛姉は今頃軽く吹っ飛んでますよ」


「軽く吹っ飛ぶって……」


 デコピンでそれだけの力を出せるのかよ。神代って本当に規格外な奴だな。


「はい。竹刀は天城先輩に預けときますよ」


「あ、ああ……」


 竹刀を渡そうとする神代に俺は戸惑いながらも受け取る。まぁ取り敢えず竹刀さえ回収出来れば、羽瀬川とちゃんと向き合って話せるから良しとしよう。


「で? 少しは落ち着いたか、愛姉?」


 そう言って神代が話しかけると、未だに痛みに悶えてる羽瀬川は顔を上げようとする。


「か、和哉ぁ……!」


 涙目になりながら神代を睨む羽瀬川。普段から剣道の打ち合いで痛みに慣れている羽瀬川でも、神代のデコピンはそれ以上に痛かったんだろう。音を聞いた俺でも痛そうだと分かってたし。


「何故わたくしの邪魔をするのですか!? これはわたくしと天城の問題です! 貴方は引っ込んでなさい!」


「確かに二人の問題に部外者である俺が口を出す権利は無いな。けどなぁ、種類は違えど愛姉と共に武道を学んでいる従弟として、とても見過ごせないんだよ。竹刀を使って天城先輩を叩きのめそうとする愛姉の行動が、な。とても剣道家を目指そうとする人のやる事じゃないと俺は思うぞ」


「っ!」


 神代の台詞に羽瀬川は思い出したかのように急に静まりかえった。


「余計なお世話だと思うが、これだけは言わせてくれ。相手を叩きのめす為に怒り任せで丸腰の相手に竹刀で暴力を振るったら剣道家として最低だよ、愛姉」


「………………………」


「か、神代。何もそこまで言わなくても……」


「たとえお二人の痴話喧嘩でもそう言う訳には行きませんよ、天城先輩」


「痴話喧嘩って……」


 俺は羽瀬川と付き合ってはいないんだがな……。


 けれど武道家である神代としては、羽瀬川の行為はそれだけ見過ごせないと言うのが良く分かった。コイツは武道の事になると自分だけじゃなく、相手にも厳しいからな。恐らく綾ちゃんの祖父に相当叩き込まれているんだろう。


「とまぁ、俺が言いたい事はそれだけです。出しゃばった真似をしてすいませんでした。後は二人で話し合ってください」


「あ、ああ……」


 神代は俺に頭を下げて謝罪した後に屋上から去ろうとする。


「っと、危ない危ない。こっちから出たらまたあの先輩達に捕まってしまうんだったな。仕方ない。近道するか」


 は? 近道って……。屋上から出るには、そこの出入り口しか無い筈なんだが……? 


 思わず首を傾げながら聞いてると、何と神代はあろう事か突然ダダダッとフェンスがある方へと走り出し、


「それじゃ俺はコレにて失礼します!」


「お、おい待て神代! そっちは……!」


「とうっ!」


 そのままジャンプしてフェンスを飛び越えてしまった。


「おいおいおい! あのバカ何やってんだよ!!」


 俺はすぐに神代が飛び降りた所を見下ろして見ると………これまたビックリ。神代は何事も無かったかのように地面に着地していた。


 確かこの学校って4階建てだったよな。にも拘らず、問題無く着地する神代って……本当にどんだけ規格外なんだよ! 神代の身体能力は化け物か!?


「………………………」


 余りの出来事に俺が思わず目が点になってると、下にいる神代がコッチを見て手を振りながら去って行った。

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