【はじまらなかった二人のこと】
pixiv公式企画『pixiv1000字ショート~切ない~ 』へ参加した作品の再掲です。
20240828 pixiv投稿。
※微百合
お互いに、女子高生という無敵の時代からはるかに時間が流れた。
進学先が違っても、就職先が遠くても、細くちぎれなかった関係。
『結婚するの』
招待状は手渡ししたいと、久しぶりに待ち合わせたカフェ。
ふんわり幸せそうに笑う彼女は変わらず愛らしかった。
「ほんとは呼ぶつもりはなかったの」
「ひど」
「あんたに見せたくないの。わかるでしょ」
「まぁ、見たくはないかな」
「でも私があんたのこと大好きだって、彼は知ってるから」
「そりゃ断れない」
当日仮病でもいいから、招待状だけは受け取って。
アイボリーの上品な封筒。幸せな呪いの手紙。
何かを始める気も、何かが変わることもない。
ただ、女子高生だったあのころから変わらないものがあった。
私たちは恋をしていた。
お互いに友情というには甘ったるく、重苦しく、息のしづらい感情を抱いていた。
でも二人してそれを発展させる気はなかった。
恋人同士のような距離感で、それでも私たちは友人だった。
高校三年間の蜜月を経て、会う頻度が減っても、彼女は私の特別なままで、彼女の特別も私のまま。
でも、彼女が真っ白なドレスを着て、えいえんのあいを誓うのは、私じゃない。
彼女は他人の妻になろうとしている。それでいいと思っている。
私にも恋人がいる。彼がプロポーズの準備をしているのを察している。それを受け入れる気持ちがある。
立場が逆になったら、彼女も私と同じように、私の晴れ姿なんか見たくないというだろう。想像がつく。
私たちは、この気持ちを恋だと認める強さはあった。
でも、恋人になるには、私たちは若くて、弱かった。
それだけのことだった。
きっとどこにでもよくある、話の終末。
ここまでお読みいただきありがとうございました。




