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pixiv1000字ショート:テーマ【切ない】  作者: 唐子


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【さいごのラブレタァ】

pixiv公式企画『pixiv1000字ショート~切ない~ 』へ参加した作品の再掲です。

20240827pixiv投稿。


※死別


前話のアンサー。



『 莫迦者。聞いているか。


 初の手紙があれとは、一体全体どういう訳だ。お前がこんなにも無責任で、無礼で、大莫迦であったとは。呆れて物も言えない。


 婚約は継続だ。人伝の破棄など受け入れない。

 何処にいて何をしようが、お前は死ぬまで、死んでも私の婚約者だ。様を見ろ。


 しかもなんだ。お前の兄にも弟にも行き先を告げぬとは。何という兄弟不幸。恥を知れ。彼奴らが如何にお前を慈しんでいたか、よもや知らぬとは言わさんぞ。


 兄も、弟も、泣かなかった。

 仕方のない妹だ姉だと眉尻を下げて、私の前では、以前と変わらない態度で接してくれた。

 お前が手元から去ったのは私の所為だと詰ってもいいのに、ただお前の意思を尊重した。さいごまで


 大莫迦者、聞いているか。

 私が、同情でお前と婚約したとでも思っていたのか。

 同情で三年もの青春の月日を、お前に費やしたとでも。


 会いにいく度申し訳なさそうにする。

 面会して幾許もしない内に兄や弟に相手をさせる。

 そのくせ寂しそうな顔で見送るお前を、三年もの間、何も思わず見舞っていたとでも。


 目が大きく見えて嫌だといったかんばせも。病み窶ればんだと厭った痩身も。

 天邪鬼ばかり吐く唇も、一度だって縋り付いてこなかった華奢な指も。

 お前は嫌がらせと取っていたが、そんな訳あるか。


 私の傷の浅い内になど、余計なことを考えたのだろう。大莫迦者。

 傷に浅いも深いもない。傷は傷だ。お前という傷だ。その傷を癒すか否は私の決めんとする処だ。


 だからこの傷は、後生大事に抱えて生きてやる。


 様を見ろ。生涯忘れてなどやるものか。


不一 』



「おい大莫迦者。聞こえているか」


 累代と刻まれた墓石を前に、男は悪態をついた。

 指先で摘まんだ青い紅葉を一葉、くるりと回す。思い出すのは、彼女がまだ婚約者じゃなかった頃。

 寝付きがちな友人の妹に季節の土産でも、と渡した鮮紅の紅葉。


『うれしい、お兄様。ありがとう!』


 紅葉と同じく頬を赤く染めて綻んだ顔に、声に。一瞬で意識を奪われたなんて、彼女は思いも寄るまい。

 色形の整った青葉を墓前に供える。

 喜ぶ顔が見たくて、言葉を交わしたくて、兄弟に呆れられるほど手土産をもって足繁く通ったというのに。

 彼女は勝手に申し訳なく感じて、勝手に離れていった。勝手に男を悪者に仕立て、勝手に心を自由にして。


 幸せになれと、言い残して。


「お前が勝手に逝くのなら、お前を想い続けるのも、私の勝手だな」


 様を見ろ、大莫迦者。


遅すぎた愛の言葉。



お悔やみの手紙は、頭語を省略します。

『不一』とはまだ書き足りない、書き尽くせていないという意味。『草々不一』とも。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

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