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7.遊星サイド それぞれの道へ

 



 遊星は瑠衣に気づかれたことに少なからずショックを受けていた。


 隣に座る19歳を、なめていた訳ではない。

 勘がいいのは知っていた。

 だが、警戒せず接していた自覚が無かった。


(こんなに簡単に人を信用する奴だったか……おれは?)


 まるで性格が違う。

 考え方も異なる。

 世代も別。

 共通点は無いに等しい。


 しかしこういうことは前にもあった。


 脳裏に浮かんだのは絶対的自信を隠すことの無く、常に強者のほほえみを浮かべる人物。

 完ぺきとは程遠い計画で感覚的にものごとの本質を捉えてしまう。

 自分とは対照的で、無いものばかり持っている人だ。


(なら、これも必然だったということか)




 大きなザックを背負い、紅い槍を差している今時のギャルと、ラップトップを片手に持つ黒スーツ。

 昼食を食べ終えた二人は、食後の運動に散歩をしていた。



「これからどうする?」



 聞いたものの、遊星には瑠衣の回答が何となく分かっていた。



「んー。笠原さんの仕事は、ウチはいいかな」

「そうか」

「遊星くんはやるといいよ。何というか、笠原さんの目的って、それだけで達成でしょ?」



 笠原が『メンテの人』を探すのは協会が失態を犯す前に本人に情報をリークするためだ。

 究極の現状維持。

 遊星が協会内部に入った時点で、笠原の勝利だ。



「どうするんだ? まさか、さっきの大声でお礼を言えたことにして引退じゃないだろう?」

「……国務探索員やってみようかなって」


 整ったウルフカットの襟足を何度も触り、何か探るように瑠衣は答えた。


「いいんじゃないか? レスキュー」

「うん。別に探索して、新しい何かを発見するのもいいんだけど、ウチは人を助けたいかな~」

「そうか」

「また、遊星くんのことも助けてあげるね」

「それなら、無茶しても安心だ」



 2人の歩みは自然と受付ロビーへと向かっていた。



 ◇



「え? 解散するんですか!?」


 ショックを受けた様子の受付嬢に、書類を提出。


「本当にきっかりひと月で解散になったな」

「え、『緋と月』ってそういう意味だったの! ダジャレじゃん。ダサ!」

「ダサくない。ダブルミーニングと言え」


 2人のやり取りを受付嬢は不思議そうに見つめる。



「仲違いでもないのに、どうして……」

「方向性の不一致かな~。それぞれの道を進む的な」

「主に、こいつの父親の圧力で」

「お父さん、家だと優しいよ?」

「おれには怖かった」

「お父さんに屈したんだね、遊星くん」

「おれはエンジニアだ。元特派に盾突けるわけがないだろ?」

「どこが? 遊星くんに盾突くって、今となってはお父さん意味不明だけどね」

「そうだな。そう言われると腹が立ってきた。なぜおれが遜っていたんだ?」

「その怒りをウチにむけぇなひへ……」


 遊星のアイアンクローをあえて受ける瑠衣。


 受付嬢は不服、不可解と言った様子で主に遊星をねめる。


「男女コンビの解散は主に、痴情のもつれ、軽犯罪法違反、都条例違反などですが、それ以外ですか?」

「あんたはおれの何を疑っているんだ」


 居心地の悪い遊星は瑠衣の腕を引っ張り退散した。


「あ、そうだ。槍返すね」

「ああ」


 瑠衣が差し出した皆朱の槍。

 遊星が掴んだ。

 びくともしない。

 PCをテーブルに置いて、両手で試みる。

 びくともしない。


「はぁ、はぁ……もういいよ、持っていけ!」

「えーほんとに? いいの~?」

「返す気なかっただろ!」


 いつもなら、ファミレスで話し込むだろう。


 しかし、二人共きりの良いタイミングを探っていた。



「じゃ、たまにはお弁当持ってくるからね」

「……ああ」


 振り返った瑠衣は遊星に抱き着いた。


「ありがと」

「ああ」


 すこし目元が赤い瑠衣は出口へ向かい歩き出し、それを見送った遊星は笠原に連絡を入れた。



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