3.ステータス
遊星、瑠衣、アリスの三人は打ち合わせを終え、あらかじめ遊星が用意していたギルド申請書類を受付に提出した。
申請したギルド名は『緋と月』
遊星が適当に『緋=陽、太陽だろ。太陽と月、はいこれでいいだろはい』と説明すると、瑠衣は『運命だー、遊星くん天才だね』と感動していた。
実際はただのダジャレだ。
ひと月だけ組むから『緋と月』。
「やっとですか……」
受付嬢が遊星へ「やれやれ、やっと腹をくくったなこの男は……」という視線を向ける。
居住まいの悪さをネクタイをいじり誤魔化しながら、事務手続きを済まし、昼食をとることに。
〈――普段は高たんぱく、低カロリーな食事をしてください――〉
〈――探索直前に炭水化物を採りエネルギーを蓄えられる身体づくりを――〉
「あと、スーツの洗浄もこまめに行うぞ。魔力汚染で微妙な誤差が出るからな」
〈――食後に筋トレしてください。軽くで構いません――〉
〈――あと、実戦の前に戦闘パターンのデータがもっと欲しいですね――〉
「探索以外の時はトレーニングだ。とにかく走れ」
〈――最大加速と、トップスピードまでの時間も計測を――〉
「ギルド結成祝い、しないんだ」
瑠衣はしゅんと肩を落とし、もそもそとサラダチキンを食べる。
「あとは目標だな」
「目標かぁ~。ランク上げとか?」
遊星がうなずく。
「現状瑠衣はEランク。ランクを上げるにはステータスと実績が必要だ。実績をつくればステータスも向上する。とにもかくにも、戦闘実績をつくり、ランクを上げよう」
「よーし、ランク上げだー!」
瑠衣が立ち上がる。
そして座った。
「でもさ、このステータスって、合ってる?」
〈――ムム――〉
瑠衣がスマホを見せた。自分のステータスが表示されている。
■総合判定 E級
・敏 捷 性:D
・耐 久 力:E
・持 久 力:F
・パ ワ ー:E
・魔 力 量:E
・魔力 速度:C
・魔力 精度:C
「ウチ、もうちょっと上だと思うんだけど」
「良い質問だな、君」
「指ささないで」
遊星が教師然と指を向けると払われた。
「あくまで参考値だな。元々『鑑定』スキルを持つ探索者が数値化していたデータが全世界で共有され――」
ふと遊星が、真剣に聞いている瑠衣をじっと見つめた。
「え、今恋に落ちちゃった?」
「育成高にいたなら知ってるよな?」
瑠衣があざとくこてんと首を傾げる。
「知らな~い。教えてほしーなー」
「……まぁいい。要するに、『鑑定』スキルを大量のデータと人工知能で再現できるようになったわけだ」
〈――高度な演算処理、それが『ステータス開示』です――〉
「なぜ、アリスちゃんがドヤる?」
画面のアリスは得意気だ。
遊星は眼を細める。
「まぁ、再現であって、誤差はあるし『ステータス開示』で分かる範囲外に重要なデータがあることは否定できない」
〈――ム――〉
「ふむふむ……範囲外?」
「ここには瑠衣の槍術が無い。範囲外だろ?」
「ああー」
〈――個人のルーツは履歴書にでも書けばよろしい――〉
ラップトップ内で少女が「プンスカ」とステレオタイプの怒りを表明する。
「なんでアリスちゃんが怒るの?」
「それにこのステータスを見ると、適性職は【魔剣士】になる。あてにはならない」
「そうだね。ウチ頭良くないし」
何事も突き詰めると高度な知識が必要だ。
そこに付け加えると、魔法は特に高度な化学知識を必要とする。
〈――学力は義務教育9年からなるデータを蓄積しているのだから文科省と連携でもすればよろしいのでは?――〉
「なんでアリスちゃんが怒るの?」
「魔力を運用するスピードと正確性は、まぁ信じていいが」
〈――ムムムム――〉
〈敏捷性とパワー、反応速度も肉体の電位差、ニューロン伝達速度、筋線維情報などからほぼ正確に割り出しています――〉
〈――文句があるなら使わなければよろしい――〉
「だからなんでアリスちゃんが怒るの?」
瑠衣が首を傾げ、遊星は知らないふりをした。
「まぁとにかく、お前はスキルも魔法も使えない。なら、魔物を狩りまくり、実績でステータスの低さを補う他ない」
「そっか。脳筋体育会系のノリだね」
「ダンジョン協会側が参考にする値なんだから合理的に、だ。こっちもお前のデータをできるだけ取りたい。しばらくは八王子で小物を確実に狩っていくぞ」
「わかったー」




