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ソリタ  作者: Albert
ピエール
9/20

悪魔を捕まえる

翌朝。

ピエールはプリシュールと共に仕事場へと向かっていた。

(寝ている間にじっくり考えてみた。あの仮説なら多くの不合理な点は説明がつく。だが、同時に新しい矛盾も生まれてしまうんだ……。)

例えば:

火星のように、依然として逆行現象が説明しきれない惑星がある。

もし地球が太陽の周りを回っているなら、なぜ振動を感じないのか。

(それに、俺が描いた図はあくまで仮説だ。証明するには膨大な計算が必要になる。)

ピエール:「……まずは仕事だ。」

プリシュール:「ピエール、どうしたんですか? なんだか考え込んでいるようですが。」

ピエール:「そうか?」

プリシュール:「ええ……何と言いますか、悩み事があるような。見当違いならいいんですけど。」

ピエール:「悩みというか何というか……いや……」

プリシュール:「何ですか?」

ピエール:「……いいや、明日話すよ。」

プリシュール:「わかりました。」

仕事中も、ピエールの顔には終始、影が差していた。

やがて夜になり、いつものように観測へ向かったが、コーンは用事があるらしく、今夜は俺とプリシュールだけの観測となった。

山に着くと、プリシュールは少し離れた場所で星を眺め、俺はベイモの元へと向かった。

ベイモ:「ピエール、来たんですね! 私を信じてくれないかと思っていましたよ。」

彼の表情には喜びが滲んでいた。

ピエール:「信じたわけじゃない。あれはあくまで仮説だ。」

ベイモ:「では……あなたはどちらを信じているんですか?」

彼の表情が急に真剣なものに変わった。

ピエール:「あんたの仮説のほうが正しく思える。だが、計算という裏付けがない以上、俺はまだ地球が宇宙の中心だと思っている。」

ベイモ:「計算、なら理解できますか?」

ピエール:「当然だ、コーン先生に教わっているからな。」

ベイモ:「では、これを見てください。」

ベイモは数枚の紙を取り出した。そこには数式がびっしりと書き込まれていた。

ピエ爾:「……これは何だ?」

ベイモ:「地球が太陽の周りを回っていることを証明する数式です。」

ピエール:「なぜあんたがこんなものを? 学校には行っていないと言ったはずじゃ……。」

ベイモ:「あれは嘘です。……事情があるんです。」

ピエール:「事情?」

ベイモ:「私は元々、別の村の天文学者でした。惑星の運動規則がなぜこれほど複雑なのか、ずっと疑問だった。仲間の学者の説明はあまりに雑然としていて、不合理に感じたんです。もっと単純で、逆行現象を綺麗に説明できる仮説があるはずだと、ずっと考えていました。」

ベイモ:「当時、私と同じ考えを持つ仲間が何人もいました。我々は様々な仮説を立てましたが、地球を宇宙の中心に据える限り、どんな仮説も複雑怪奇なものにしかならなかった。……誰かが『宇宙の中心は地球ではないのでは?』と言い出すまでは。」

ベイモ:「我々の村の教主は、地球が宇宙の中心だと盲信していました。神は地球で生まれたのだから、神の住まう場所こそが宇宙の中心であり、それこそが神の気高さの象徴だと。……ピエール、あなたは神の存在を信じますか?」

ピエール:「ああ、もちろんだ。」

ベイモ:「私もです。神は存在します。ですが、神が宇宙の中心で生まれなかったからといって、その気高さが損なわれるとは思いません。」

ベイモ:「しかし教主は違いました。あの手の人間は、自分が信じたいものしか信じない。彼は私の仲間を異端者として投獄した。逃げ延びたのは私だけです。教主の影響が及ばない村……ここなら安全だと思ったのですが。」

ピエール:「なぜ、そんな話を俺に? 密告されるとは思わなかったのか?」

ベイモ:「この数ヶ月、一緒に星を見てきたあなたなら、そんなことはしないと信じています。もし裏切られたなら、それは私の運命だったというだけです。」

ピエール:「……あんたの言う通りだ。密告なんてしないさ。」

ベイモ:「夜も更けてきましたね。私は行きます。さようなら。」

ベイモはそう言い残して去っていった。

俺とプリシュールも家路についた。

コーン:「ピエール、近いうちにロアがここへ来るぞ。」

ピエール:「教主様が? どうしてですか?」

困惑しつつも、心のどこかで興奮を覚えた。

コーン:「……あまりいい知らせではない。この村に異端者が紛れ込んだらしい。別の村から逃げてきたそうだ。この村には教主がいないからな、ロアが異端狩りの手助けに来るのさ。」

ピエール:「なぜ教主が必要なんです?」

コーン:「異端者は悪魔の化身だからだ。神の末裔でなければ、悪魔を祓うことはできん。私も彼らを手伝うことになった。しばらくは観測に付き合ってやれんぞ。」

ピエール:「……そうですか。」

コーン:「それにしても、地球が宇宙の中心ではないと考えるなど、一体何を考えているんだろうな、その異端者は。」

ピエール:「……本当ですね。そんなこと考える奴がいるなんて。」

ピエールは、ベイモのために冷や汗を流した。

つづく。

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