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ソリタ  作者: Albert
ピエール
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生き残るために

西暦350年頃。

俺の名前はピエール。32歳の農夫だ。毎日畑を耕し、育った作物を街へ売りに行く生活を送っている。

その時、ピエールは畑仕事の真っ最中だった。

ピエール:「よし!今日はここまでだ。こいつを市場へ売りに行こうぜ!」

ピエールは一人の青年に声をかけた。

彼は俺の弟分だ。彼と初めて会ったのは……。

三ヶ月前のこと。

それは寒い冬の夜だった。外は雪が降り積もっている。俺は家族と一緒に家で夕食を囲んでいた。

「トントン、トントン」

誰かがドアを叩く音がした。

母さん:「誰だい?」

母さんは立ち上がり、大門を開けた。

「一晩、泊めていただけませんか?この村に越してきたばかりで、まだ住む場所がないんです。少しですがお金はあります。宿泊代として受け取ってください」

門の外に立っていたのは、身長155センチほどの男だった。マントを羽織り、見た目は25歳くらいの若者に見える。その深みのある瞳は、一目でこの村の人間ではないとわかった。

母さん:「いいよ、お金を払うってんならね」

そう、俺の母さんはひどく現実的な人だ。家が貧しいせいで、何よりも金を重んじている。

結局、彼はそのまま俺たちの家に定住することになった。だが、彼は金を払わなかった。その代わりに、家の仕事を何でも手伝ってくれた。家事はすべて彼一人がこなし、時折、畑仕事(主に収穫作業)も手伝ってくれた。市場へ行く時はいつも一番重い荷物を持ってくれる。俺たちはもう、彼を家族の一員だと思っている。

「あの子は、別の形でお金を払ってくれてるんだよ」

母さんはそう言っていた。

俺とプリシュールの出会いは、そんな感じだった。

時を戻して、現在。

俺と彼は一緒に市場へ野菜を売りに行き、道中、世間話をしていた。

ピエール:「なあ、もう三ヶ月も一緒にいるのに、俺はあんたのフルネームも知らないままだ。なんて名前なんだ?」

「私ですか? プリシュールでいいですよ。ソリタ・プリシュールです」

ピエール:「そうか、プリシュールか。いい名前だな!俺はピエールだ」

プリシュール:「ピエール……」

その名前を聞いた瞬間、彼は物思いにふけった。

ピエール:「ど、どうした?そんなに変な名前か?」

プリシュール:「いえ……この名前で、ある親友を思い出したんです。あなたの名前に、よく似ていたから」

ピエール:「へぇ!きっと大切な人なんだな。いつか俺も会わせてくれよ」

プリシュール:「……ええ、いつか必ず会えますよ」

彼の顔に、一瞬だけ悲しげな色が浮かんだ。

市場で作物を売ると、すぐに完売した。空はオレンジ色に染まっている。俺とソリタは帰り道を歩いていた。いつもなら真っ直ぐ帰るのだが、今日は別の場所へ寄る予定だった。

プリシュール:「ピエール、こっちは家の方向じゃないですよね?どこへ行くんですか?」

ピエール:「まあ見てろ、すぐにわかるさ」

しばらく歩くと、教会に到着した。

プリシュール:「ここは……?」

ピエール:「教会だよ。さあ、入ろう」

「神の加護を授かりに来たのかね?」

現れたのは教主だった。かなりの高齢で、杖をついている。髪は薄い緑色。代々の教主は皆この髪色で、それが身分を証明する象徴となっていた。

ピエール:「はい、お願いします」

教主が麻袋を差し出し、俺はその中に銀貨を一枚投げ入れた。

教主:「神は必ずや、お前を守ってくださるだろう」

プリシュール:「これは、何をしているんですか?」

ピエール:「知らないのか?こうして神の加護を受ければ、悪魔に傷つけられずに済むんだよ」

プリシュール:「悪魔?それは何のことです?」

教主:「遠い遠い昔、悪魔が空を飛び交っていた時代があった。人々は恐怖に震えていた。だが、一人の男が立ち上がった。彼はほとんどすべての悪魔を皆殺しにした。その御方こそ、ニルク様だ。だが、一匹の悪魔だけが逃げ延びた。ニルク様が亡くなるまで、その悪魔が姿を現すことはなかった。悪魔が再び災いをもたらさぬよう、ニルク様は方法を考え出された。毎月、その末裔が持つ袋に銀貨を投じれば、ニルク様がその人々を守ってくださるのだ。ニルク様の末裔は、後世の人々が判別できるよう髪を緑に染めている。そして、私こそがその末裔なのだ」

プリシュール:「では、『神』とは?」

教主:「後に、人々はニルク様を神として祀るようになったのだ」

プリシュール:「なるほど……つまり、あなたは神の末裔というわけですね」

教主:「その通りだ! お前も神の加護を授かりたいか?」

プリシュール:「いいえ、結構です」

教主:「左様か。気が向いたらいつでも来なさい。ニルク様はいつでもお守りくださる」

ピエール:「時間も遅いし、俺たちは行くよ。バイバイ」

教主:「さらばだ」

帰り道、俺たちは話を続けた。

プリシュール:「ピエール、あなたは神を信じているんですか?」

ピエール:「もちろんだ。村の人間はみんな信じてるぜ」

プリシュール:「では、悪魔も?」

ピエール:「ああ、信じてる」

プリシュール:「悪魔を見たことは?」

ピエール:「あるわけないだろ。神様が守ってくれてるんだ。悪魔だって、俺たちを見たらビビって逃げ出すに決まってるさ!」

プリシュール:「では、神を見たことは?」

ピエール:「それもない。神様は目に見えないんだ。何らかの方法で俺たちを守ってくれてるのさ」

プリシュール:「具体的に、どんな方法で?」

ピエール:「それは……わかんねえよ。教主も教えてくれなかったし」

プリシュール:「神が存在したという証拠はあるんですか?」

ピエール:「ないな」

プリシュール:「真実かどうかもわからないことに、進んで金を払うなんて! お母さんは知っているんですか? 彼女はあんなにお金に執着しているのに、こんな無駄遣いを知ったら……」

ピエール:「……母さんが行けって言ったんだよ。この村の全員がやってることなんだ!」

プリシュール:「彼女が? 信じられない。そのお金を貯めていれば、もっといい暮らしができたはずです。積もり積もれば相当な額になりますよ」

ピエール:「もっといい暮らし……? そんなの無理だよ。親が農夫なら、子供も一生農夫なんだ。そういう社会なんだよ、ここは」

プリシュール:「そんな、夢も持たずに生きることに意味はあるんですか?」

俺は言い返せなかった。

プリシュール:「黙り込みましたね。自分が生きる意味なんて、考えたこともなかったからだ。それに、やってみなければわからないじゃないですか」

ピエール:「怖いんだよ。失敗するのが。こんな風に生きるのが辛いことはわかってる。でも、こうして生きるしかないんだ」

プリシュール:「試してもいないのに失敗することばかり考えて。もし成功したら? それに、たとえ失敗したとしても、自分の夢のために一度は全力を尽くしたことになる。少なくとも、挑戦はしたんだ。……どうです? やってみる気はありますか?」

ピエール:「……ああ、やってみたい!」

つづく。

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