ほしよみのしょうねん
西暦1400年頃。
「この問題は……お前にとってはまだ難しすぎたかな。いや、解けなくて当然だよ。これは大学の問題だからね。お前が解けないのは至極まともなことだ」
そう言ったのは、私の先生だ。彼は立派な白い髭を蓄えた、齢八十を超える老人だった。本来ならとっくに隠居していてもおかしくない年齢だが、彼は学校で教鞭を執り続けることを選んでいた。
「なぜ今も教えているのか、かね? おそらくは興味、いや、趣味のようなものさ。才能ある者が埋もれずに済むなら、その者の未来をより良く変えられるかもしれないだろう?」
そして私こそが、彼の言う「才能ある生徒」だったらしい。今、彼は私の実力を試していた。
先生が私にいくつかのアドバイスをくれ、私は出された問題を一つずつ解き進めていった。その難易度は自分でもよく分かっていた。学校の試験とは天と地ほどの差があり、およそ同じ次元の代物ではない。学校で習うものより遥かに難しかった。
先生:「12歳の生徒でここまで解ければ、大したものだよ! やはり私の目に狂いはなかった」
先生が私の解答用紙を回収しようとした、その時――。
「待ってください!」
私は先生の手を止めた。
先生:「どうしたんだい?」
レイロ:「解き方が分かりました!」
5分後、私はすべての問題を書き終え、検閲のために先生に手渡した。
紙に書かれた私の答えを見た先生は、まず深く息を吸い込み、それからその顔を驚愕の表情で染めた。
先生:「これらは……すべて初めて解いたのか?」
レイロ:「はい、これらの問題は一度も見たことがありません」
先生:「天才だ! これは百年……いや、千年に一度の天才だ!」
レイロ:「先生、大袈裟すぎますよ」
先生:「お前は将来、きっと非常に優れた神学者になるだろう」
レイロ:「神学者? それって何ですか?」
先生:「神学者かい? 簡単に言えば、教主の側近として働く者たちのことさ。とても名誉ある職業であり、それだけに競争率も非常に高い世界だ」
レイロ:「そんな大層な仕事なら、きっとなるのも難しいんでしょうね。大学とかに行かないといけないんでしょう?」
先生:「その通り、少なくとも大学を卒業していなければならない。だが、お前の実力なら何の心配もないだろう」
レイロ:「高く評価しすぎですよ……」
先生に褒めちぎられ、私は少し気恥ずかしくなった。
先生:「私は本気で言っているんだよ」
先生の表情は、最初の何気ないものから一転して厳粛なものへと変わっていた。そこには冗談めかした雰囲気など微塵もなかった。
先生:「私がさっき出したのは、大学でも一、二を争う難問だ。それをたった5分で解いてみせた。お前の実力なら、あと一、二年もしすれば手が届くかもしれない」
私が外の景色に目をやると、夕暮れの空がもう遅い時間であることを告げていた。先生もそのことに気づいたようだ。
先生:「時間も遅くなった、まずは家に帰りなさい。バイバイ!」
レイロ:「先生、さようなら!」
家に着くと。
レイロ:「父さん、母さん、ただいま!」
母:「おかえりなさい!」
レイロ:「何の水気の匂いだろう? すごくいい匂いだ!」
母:「もちろん、お母さんが作った夕食の匂いよ! 出来立てだからね」
レイロ:「ちょうどいい時間に帰ってきたみたいだね」
母が美味しそうな料理の入った鍋を食卓へと運び、そこでは父がすでに待ちわびていた。
私たちは母の作った料理を器に盛り、さっそくいただくことにした。
母:「どう? 美味しい?」
父:「美味いよ」
レイロ:「すっごく美味しい!」
しばらくして、私たちは夕食を終えた。私はあらかじめ用意していた草稿の紙を手に取り、出かける準備をした。
父:「また出かけるのか! あまり遅くなるなよ」
母:「気をつけてね」
レイロ:「分かってるよ、行ってきます!」
私は家を出て、いつも行くお気に入りの場所へと向かった。道中には人影もなく、辺りは暗闇に包まれている。私はいつものように丘の斜面へと歩を進めた。
レイロ:「よし、ここだ!」
私は顔を上げた。夜の星空は相変わらず息を呑むほどに美しい。私は書きかけの草稿紙を取り出し、夜空の星たちの記録をつけ始めた。
この瞬間こそが、私が毎日最も楽しみにしている時間だった。
この時間だけは、誰にも邪魔されることなく、一人静かに自分の世界に没頭できる。昼間、私を悩ませていた煩わしい出来事をすべて忘れ去ることができた。私はこの感覚がたまらなく好きだった。
記録を終えた私は家へと戻り、眠りについて一日の幕を閉じた。
すぐに翌朝が訪れた。朝食を済ませた私は、学校へと向かった。
そこでの私は、誰もが注目する「天才」であり、誰もが羨望の眼差しを向けてくる存在だった。
けれど……私はみんなが思っているほど自分が凄い人間だとは考えていなかった。
学校で、自分にとっては極めて退屈で簡単な授業を聞き終えると、放課後の下校時間がやってくる。通常、その頃にはもう夕暮れ時だ。あの日に先生の家でテストを受けた時を除けば、私はいつも真っ直ぐ家に帰り、あの草稿の束を広げてどこに問題があるかを細かく観察していた。
そして母が夕食の支度を終え、それを食べた後、私は決まって近くの丘へと登り、星空を記録する。毎日がその繰り返しで、日々は同じように循環していた。
そんな平穏な日々がずっと続くのだと思っていた。しかしある日、私は一人の男と出会った。彼は深みのある瞳を持ち、身長は175センチメートルほどだった。この村では初めて見る顔のような気がした。
「ヘイ! 君、天文学に興味があるのかい? もしよければ、これから僕も一緒に観察させてもらってもいいかな?」
(つづく)




