通信する
あっという間に一週間が過ぎ、私はプリシュールと約束した場所へ向かった。
プリシュール:「本当に来ましたね! 今回は小刀を持っていないようだ」
彼にはお見通しだった。
私の目の前にはプリシュールしかおらず、クオの姿は見当たらなかった。
私:「クオはどこだ?」
プリシュール:「少し待ちなさい」
彼はまず周囲を見渡し、誰もいないことを確認してから、クオにこちらへ来るよう合図を送った。
すぐに、私と同い年くらいの少年が歩み寄ってきた。彼がクオだろう。
彼は私としばらく視線を交わした。彼の両手は小刻みに震えていて、その顔には激しい嫌悪の表情が浮かんでいた。
その表情を見た私は、一瞬、何と言えばいいのか分からなくなってしまった。
突如、彼は背後から小刀を取り出し、猛然と私に向かって走り込んできた。
プリシュール:「クオ! 落ち着きなさい!」
プリシュールはクオを止めようとしたが、もう間に合わなかった。
私は押し倒され、左手で襟元を強く掴まれた。彼は右手に小刀を掲げ、私を突き刺そうとしていた。
(私は彼の両親を殺したんだ。彼が私を殺したいと思うのは当然だ。もし、これで彼の心の傷が癒えるのなら、私のこの死は……彼への贖罪になるだろうか。)
私は両目を閉じ、訪れるはずの死を受け入れる覚悟をした。
――ガシャーン!
金属が地面に落ちる音が響いた。
目を開けると、彼の小刀は私のすぐ横に転がっていた。彼は右の拳を固く握りしめ、地面を思い切り叩きつけていた。
私は恐怖を抱きながら彼を見つめ、彼もまた憎悪に満ちた目で私を睨みつけていた。彼が左手を離すと、プリシュールが急いで彼を私から引き離した。
クオ:「……今すぐお前を殺してやりたい。だけど、そんなことをしても何一つ解決しないし、僕の気が晴れるわけでもないって分かってるんだ」
プリシュール:「クオ、よく最後にとどまってくれました。……驚かせてしまいましたね」
私:「……いや、いい。彼がそうするのは当然だ。先に手を下したのは私なのだから」
クオは依然として私を激しく睨みつけていた。
その視線が、私に彼への、そして彼の両親への強い罪悪感を抱かせた。
私:「すまない、クオ。本当にすまない……。私は、君の両親を殺してしまった」
クオ:「お前の事情は知ってる。どうしてそれほど異教徒を憎んでいたのか、理由は聞いて理解はできた。……だけど、それでもお前を許すことはできない。絶対に許さない。……ただ、お前が悪人だとも思わない」
私:「それは、どういう意味だ?」
クオ:「教主から離れろ。あの男はまともじゃない。僕がお前に言いたいのは、それだけだ」
(教主様は、両親を亡くした私を引き取ってくれた。当時の私にとって、あの人は救世主だった。だけど、布教に同行したあの村での教主様の表情は、私の知る姿とはまるで違っていた。村人たちの命を、何とも思っていないようだった。
教主様への印象が変わり始めたのは、あの時からだ。
私にとっては善人だった教主様も、クオのような人間にとっては、やはり悪魔だったのだ。)
私:「……分かった。気をつける」
プリシュール:「私たちがここへ来たのは、それを伝えるためです。教主はとても危険な男だ。彼の行動にはすべて目的がある。君に優しくするのを含めてね。……では、また会いましょう」
私:「ああ、また」
「――私の助手の友人がわざわざ来てくれたんだ。良ければ、夕食でも食べていかないかね?」
背後から、教主様がゆっくりと歩み寄ってきた。クオとプリシュールは驚愕の表情で教主様を見つめた。気づけば、周囲には私たちの村の者たちが現れ、長剣を構えて私たちを包囲していた。
教主:「さあ、行こう。夕食の準備はできているよ」
彼はいつもと変わらない笑みを浮かべていたが、今の私にはそれがただ不気味で吐き気がした。
帰り道、私たちは静まり返り、一言も発することができなかった。
(なぜ教主様は私がどこへ行くかを知っていたのだろう。プリシュールは周囲を確認していたはずなのに、なぜ見つかってしまったのか。)そんな疑問が頭の中を駆け巡っていた。
私:「教主様、なぜ……」
教主:「静かに。質問は夕食の時に聞きなさい」
疑問を抱えたまま私たちは家に着いたが、安堵感は微塵もなかった。家の周りは村の者たちに厳重に警備されており、もう逃げ出すことは不可能なようだった。
私たちは家の中に入り、食卓についた。
教主:「何か聞きたいことはあるかい?」
プリシュールとクオは黙々と食事を進めていた。
私:「なぜ、私たちの場所が分かったのですか」
教主:「村の者たちと君を尾行していたんだよ。気づかなかったかね? それとも、私の尾行が上手すぎたかな」
プリシュール:「しかし、私は確かに確認しました。あの時、周囲には誰もいなかったはずです」
教主:「ああ、私は遥か遠くの場所でずっと待っていて、それから近づいたのだよ。君たちに積もる話をさせるためにね」
私:「……では、私たちが何を話していたかは知らないのですね?」
教主:「当然だとも」
その瞬間、私とクオは密かに胸を撫で下ろした。会話の内容を知られていないのであれば、連行される理由はないはずだ。
教主:「ときに、君たちの名前は何というんだね?」
クオ:「……クオです」
プリシュール:「プリシュールと申します」
教主:「クオ、か。実によい名前だね」
なぜ彼がそんなことを言ったのか、私には分からなかった。
やがて、私たちは夕食を終えた。
クオ:「教主様、ありがとうございました。僕たちはこれで失礼します。さようなら、また」
教主:「待ちおきなさい。君は行ってはならない」
突如、教主様の表情が真剣なものへと変わった。
それは一体どういう意味なのか。
クオ:「……なぜですか?」
教主:「言うまでもないだろう。君が異教徒だからだ」
クオ:「一体何を言っているんだ?」
教主:「数ヶ月前、二人の異教徒がこの村に逃げ込み、私の助手に捕らえられた。あの時、隣の村の教主から渡された名簿には二人の名しかなかった。だが先月、私は新たな異教徒の名簿を受け取ってね。そこには人相書きはなく、ただ大きく二文字、歴史的に『クオ』とだけ書かれていた。横の注記には、あの異教徒夫婦の子供、年齢は12歳前後とあった。……君のことだろう?」
プリシュール:「それはただ同姓同名なだけです! この子が異教徒であるはずがありません!」
教主:「神が、この者が異教徒であると私に告げられたのだよ」
(またその言葉だ。いつも何の根拠もない言葉で自分の行為を正当化する。だが、その言葉に私たちは抗うことができない。)
クオ:「プリシュール、いいんだ。僕がここまで生き延びられたのはあなたのおかげだ。死ぬのが数ヶ月遅くなっただけさ。自分を責めないで。あなたがいなければ、僕はとっくに死んでいた。……ありがとう、プリシュール」
プリシュール:「クオ……」
私:「クオ、すまない……っ」
クオ:「いいんだ。これはお前のせいじゃない。あの教主のせいだ」
(そんな風に言われたら、私はますます自分を責めるしかなくなるじゃないか。)
クオは地下室へと連行され、プリシュールはその場から追放された。
翌朝、クオは十字架に縛り付けられ、教主様が放った火によって焼き尽くされた。
その時、教主様が不意に私の横へ歩み寄ってきた。
教主:「そうそう、実はそんな異教徒の名簿なんて最初から届いていなくてね。私がなぜ彼を殺したか分かるかい? こうでもしなければ、君は今後、異教徒を殺すのを躊躇うようになるだろう。……これは君の訓練なのだよ」
この男は、一体何を言っているんだ。
その夜、教主様は夕食を用意してくれた。いつもと同じ食事なのに、喉を通らなかった。教主様はいつもと同じなのに、吐き気がした。部屋はいつもと同じなのに、どうしても眠れなかった。
(あの一家は、すべて私によって破滅させられた。もし私が最初から彼の父親を殺していなければ、もし私が教主の助手になんてなっていなければ、彼らは今頃、幸せに生きていたはずだ。
私は人を殺した。本来なら幸せだったはずの家族を、私のせいで、その命を奪ってしまったんだ。)
「すまない……すまない、クオ! クオの両親よ! 本当に申し訳ない……っ」
だが、今更何を言っても手遅れだった。彼らが生き返ることはない。
私はベルトで輪を作り、それを天井へと掛けた。
バンハとクオ(完)
つづく。




