邪悪な異端者
翌朝。
「やあ。少しは気分が良くなったかい?」
声をかけたのは教主様だった。その声で目が覚めたが、自分がいつ眠りについたのか全く覚えていなかった。
私:「教主様、私はこれからどこに住めばいいんですか? どうすればいい……?」
私の哀れな様子を見て、教主様の顔に憐れみの色が浮かんだ。
教主:「大丈夫だ、私に任せなさい。これからは私の家で暮らすといい」
私:「……教主様、これからも異教徒を捕まえに行きますか?」
教主:「もちろんだよ」
私:「なら、次は私を連れて行ってください」
彼は少し躊躇った。
教主:「……いいだろう。だが、非常に危険な仕事だ。行く時は必ず私のそばを離れないように」
私:「はい、離れません」
教主:「……それから、あの二人の男のことだが……」
教主様は私の悲しげな瞳を見て、言葉を飲み込んだ。
教主:「……いや、いい。その話はまた今度にしよう」
(父さんと母さんは、あの二人の強盗と刺し違えたんだ。そう思うだけで、涙が勝手に溢れそうになる。)
私:「話してください。両親の死は悲しいですが、それ以上に、なぜ彼らが殺されなければならなかったのか知りたいんです」
(逃げ続けていたら、永遠に真実を知ることはできない。)
教主:「……君がそう言うなら話そう。あの二人は隣村の強盗で、あちらの教主に指名手配され、この村へ逃げ込んできたのだ。そして……君の両親と出くわしてしまった」
私:「……仲間に生き残りはいますか? 全員焼き尽くしてやりたい」
教主:「私の知る限り、仲間はいないはずだ。……今度、異教徒狩りがある時は君に知らせよう」
私:「……わかりました」
それから、私は教主様の家で暮らし、毎日手伝いをした。銀貨の回収、村人の手助け、時には他村への布教。そんな日々が五ヶ月ほど続いたある日のことだ。
教主:「バンハ、今日、異教徒狩りに行くぞ」
(ついにこの日が来た。憎き異教徒ども! 必ず報いを受けさせてやる!)
私:「はい。いつ出発しますか?」
教主:「今すぐだ。奴らはこの村の中に潜んでいる」
私:「これほど人が多い村で、どうやって異教徒を見つけるんですか?」
教主:「これが奴らの人相だ」
教主様は鞄から二枚の皮紙を取り出した。そこには男女の顔が描かれていた。夫婦のようだ。
教主:「さあ、捕まえに行くぞ。ついてきなさい」
私:「はい!」
異教徒狩りには、志願した村人も含め大勢が参加した。
総勢二十人以上で、村を包囲して逃げ道を塞ぐ者と、村の中を捜索する者に分かれた。私は捜索に加わった。
だが、これほどの雑踏の中から二人を探し出すのは、雲を掴むような話(天文学的な確率)に思えた。朝から探し続けたが、夕方になっても何も見つからなかった。
私は一人で村の中を歩き回り、内心あきらめかけていた。木の棒を適当に振り回しながら歩いていると……。
突然、二人の人物が目の前に立ちはだかった。
(……間違いない。あの皮紙に描かれていた顔とそっくりだ。こいつらが、あの異教徒だ!)
「両親の仇だ!」
私は彼らが反応する前に頭を下げ、ナイフを握りしめて猛然と突き進んだ。
誰を刺したのかは分からなかった。顔を上げると、一人の男が苦悶の表情で私を見下ろしていた。
男:「……俺のことはいい! 早く逃げろ! でないと二人とも捕まる!」
男は痛みに顔を歪めながらも、全力で連れの女を逃がそうと叫んだ。
隣にいた女が走り出したが、すぐに村の協力者たちに取り押さえられた。男はその場に倒れ込み、ぴくりとも動かなくなった。一目で分かった、死んだのだ。
彼らは女を縛り上げ、異教徒狩りは終わった。
その夜、私は教主様の家で横になり、体を休めていた。
(……俺は、人を殺したのか?)
(いや、違う。あいつらは異教徒だ。悪魔の化身なんだ。)
(……でも、あの男の苦しそうな表情は、悪魔には見えなかった。まるで、生身の人間のような……。)
(……いいや、あれは悪魔が見せた幻影だ。奴らは邪悪なんだ!)
(そうだ。異教徒は皆、邪悪だ。だから火で焼き尽くさなきゃいけないんだ!)
翌日、私は教主様と共に広場へ向かい、捕らえた二人を十字架に縛り付けた。教主様が火を放つと、二人は跡形もなく焼き尽くされた。
(これでまた、この世界から二匹の悪魔が消えたんだ。)
つづく。
現在、中間試験の準備中なので、更新頻度が少なくなります。




