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ソリタ  作者: Albert
バンハ
20/20

クオ

「クオ、また引っ越しだよ」

そう言ったのは母さんだった。

クオ:「どうしてまた引っ越すの?」

母さん:「仕方ないのよ、お父さんの仕事の都合なんだから」

クオ:「……わかった」

僕はクオ、12歳。物心ついた時から、僕たちは頻繁に引っ越しを繰り返してきた。一つの場所に半年以上住んだことなんて一度もない。母さんは父さんの仕事のせいだと言うけれど、どんな仕事なのかは一言も教えてくれなかった。

すぐに、僕たちは別の村に着いた。

「慌てないで、一人ずつゆっくり。銀貨を10枚納めれば、神様が守ってくださるからね」

そう言っていたのは、少し年配のおじさんだった。顔には少しシワがあり、痩せ型で、薄緑色の短い髪をしていた。

彼は見たこともない建物の壇上に立ち、布袋を手にしていた。その下には大勢の人が並んでいて、次々と銀貨を袋に入れていく。

クオ:「父さん、あの人たち何をして――」

言い終わらないうちに、体がぐいっと引っ張られた。父さんだ。彼は僕の服を掴んで、その場から引き離した。

父さん:「あの緑色の髪の奴は危険だ! 近づくんじゃない!」

クオ:「どうして近づいちゃいけないの?」

父さん:「いいからだ! とにかく近づくな!」

父さんは怒鳴るように言った。あんなに怒った父さんを見るのは初めてだった。見たこともないような表情をしていた。

(……怖いよ。)

クオ:「わ……わかった。もうしないよ」

父さん:「わかればいい」

父さんの表情は、いつもの優しい顔に戻った。

「緑色の髪の人には近づかない」……その言葉は、僕の心に深く刻まれた。

その村に数週間滞在した後、僕たちはまた別の村へ移った。

その村にも緑色の髪の人がいた。僕は父さんの教えを守り、見かけるとすぐに離れるようにした。

けれど、彼らを見かける頻度はどんどん上がっていった。

最初は数週間に一度だったのが、七日に一度、三日に一度……。今では一日に何度も見かける。父さんもそれに気づいているようだった。

ある夜、酒場で眠っていると、騒がしい物音で目が覚めた。目を開けると、窓の外を見て真っ青な顔をしている母さんがいた。

母さん:「どうしましょう……見つかったみたいだわ!」

僕が不思議に思って窓の外を覗くと、遠くから松明を掲げた集団がこちらへ向かってくるのが見えた。距離があったので顔までは見えなかったけれど、先頭に立つ男の髪が薄緑色をしているのだけは分かった。

父さん:「ついて来い」

父さんに連れられて、僕たちは酒場を、そして村を飛び出した。

その夜、僕たちは野宿をした。翌朝になって、ようやく別の村に辿り着いた。

この村は、今までのように誰かに監視されているような感覚がなく、ずっと安全に思えた。僕たちはしばらくそこに留まることにした。

二週間後。

その日、村の入り口付近に数人の男たちが立っていた。何かを警戒しているようで、両親もその異変に気づいた。

母さん:「……私たちを狙っているみたいね」

父さん:「大丈夫だ、きっと逃げ切れる。今までだってそうしてきたじゃないか。今回も大丈夫だ」

(逃げる? どういうこと?)

クオ:「父さん、どうして僕たちは逃げてるの?」

けれど、父さんの耳には届かなかったようだ。

父さん:「まずは人の多い場所へ行こう。そこなら捕まりにくい。そこで次の策を練るんだ」

僕たちは一番賑わっている市場へ向かった。

そこには大勢の人がいたけれど、中には何かを探してキョロキョロと辺りを見回している人たちもいた。僕たちは夕方までその市場に潜んだ。

父さん:「時間だ。今ならあそこに人はいないはずだ。急ぐぞ、市場がまだ賑わっているうちに!」

父さんは何か考えがあるようで、僕たちは彼の後を追った。しばらく歩くと、父さんは僕たちの前に手をかざして、立ち止まるよう合図した。

母さん:「どうしたの?」

父さん:「……前に誰か一人いる」

母さん:「別の道を行く?」

父さん:「ダメだ、後ろからも追手が来ている。足音が聞こえるんだ」

母さん:「……どうすればいいの?」

父さん:「……賭けるしかないな。クオ、お前はここで動かずに待っていろ。私と母さんで様子を見てくる。行けそうなら呼ぶ。……だが、もしダメな時は、私が大声で叫ぶ。そうしたらすぐにお前から逃げるんだ。いいな、後で必ず追いつくから」

そう言って、二人は前方へと歩いていった。

三分後。

「俺のことはいい! 早く逃げろ! でないと二人とも捕まる!」

その叫び声が聞こえた瞬間、僕は何も考えずに反対方向へ走り出した。

どれくらい走っただろう。日はすでに沈み、僕は疲れ果て、お腹もペコペコだった。両親が迎えに来てくれるのを待っていると、一人の男が現れた。身長は170センチほど、深く澄んだ瞳をしたその男は、プリシュールと名乗った。

彼は僕を家へ連れて行き、ご飯を食べさせてくれた。あまりにお腹が空いていたから、その時は何も疑わずに彼の家で食事をし、そのまま眠ってしまった。今思えば、とても怪しいことだったのに。

翌朝、目が覚めた僕が見たのは――十字架に縛られ、あの緑色の髪の男によって火を放たれる両親の姿だった。

もう、二度と両親に会うことはできない。

つづく。

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