別の視点
あの頃、太陽の光が大地を照らすことはなく、空はただ暗くよどんでいた。わずかに届く月光だけが、暗闇の中に細い光を落としていた。
父さんと大勢の仲間たちが、松明を掲げて森の中を突き進んでいた。
私:「父さん、どこへ行くの?」
父さん:「悪魔のいない場所だ。俺たちは今、悪魔に追われている。逃げ切るのが一番だが……もしダメなら……」
私:「ダメなら……どうするの?」
父さん:「……その時はやり返すしかない。それが最悪の結末だ」
私:「悪魔って、どんな姿をしてるの?」
父さん:「……恐ろしい姿をしているよ」
物心ついた時から、私はそんな生活を送ってきた。
毎日を森の中で過ごし、時折、おじさんたちが話してくれる悪魔の物語を聞いていた。
そうして、私が十四歳になった年のことだ。いつものように森で暮らしていた時――。
「来たぞ! 奴らが来た!」
誰かの叫び声が響き渡った。
私:「父さん、誰が来たの……?」
言いかけるより早く、父さんは私の手を掴み、反対方向へと猛烈に走り出した。
父さん:「走れ! 悪魔が来たんだ!」
私たちは森の中を駆け抜けた。どこへ向かっているのかも分からず、ただ父さんの背中を必死に追いかけた。
私:「父さん、いつまで走ればいいの?」
父さん:「心配するな、すぐ終わるから」
その時、周囲の茂みからガサガサと不気味な音が聞こえてきた。……突然、私の頭に何かが激しく当たり、私は意識を失った。
意識を取り戻し目を開けると、目の前には頭巾を被った大叔父さんがいた。顔には皺があり、五十歳くらいに見えた。慈悲深い声で話すその人は、どこか温かみを感じさせた。
私は手足を縛られ、見知らぬ空間に閉じ込められていた。
頭巾の男:「……お前は、神を信じるか?」
神? 何だそれは。聞いたこともない。
私:「……神って、何?」
男:「神は、悪魔の攻撃から我々を守ってくださるお方だ」
私:「そんなのが、本当にいるの?」
男:「もちろんだよ。銀貨を五枚、払うだけでいい」
私:「……銀貨って?」
男:「取引に使う道具だ」
私:「……そうなんだ」
男:「……それで、神を信じるか?」
私:「その前に、どうして私をこんな風に縛るの? それに、父さんはどこ?」
男:「父親か。……死んだよ」
死んだ? 何を言っているんだ、この男は。会って早々、神を信じるかだの、父さんが死んだだの……昨日まであんなに元気だったのに!
私:「誰が信じるもんか!」
男は何も答えず、ただ手を叩いた。すると、すぐに一人の遺体が運ばれてきた。……父さんだった。
男は頭巾を脱ぎ捨て、その下に隠されていた薄緑色の髪をさらけ出した。
私:「どうして……どうして父さんを殺したんだ!」
男:「悪魔だったからだ」
(この人は、何を言っているんだ?)
男:「……さて。お前は、神を信じるか?」
私:「私から見れば、あんたたちこそが悪魔だ!」
男:「……ふむ。お前も悪魔のようだな。者ども、このガキも悪魔だ。殺して――」
その時。男の胸をナイフが貫き、鮮血が飛び散った。背後から一人の影が姿を現した。私の知っている人だ。……ブルーだ。
ブルー:「安心しろ、俺たちが来た。ここを占拠した。もう安全だぞ」
私はすぐに駆け寄り、ブルーの広い胸に飛び込んで声を上げて泣いた。
ブルーは優しく私の頭を撫でてくれた。
「すまない、来るのが遅くなった……」
彼は低く呟いた。
ブルーと共に外へ出ると、そこには見慣れた仲間たちが立っていた。地面に転がっているのは、見たこともない知らない連中ばかりだった。
ブルー:「俺たちが悪魔に勝ったんだ。地面に転がっている奴らが悪魔だ」
(あいつらが悪魔? ……人間と同じ姿をしているじゃないか。確かに、恐ろしい連中だ……)
ブルー:「その緑髪の死体を探ってみろ。銀色で丸いものがないか? それは銀貨だ。兵を雇うために、それが必要なんだ」
私:「……わかった」
私は緑髪の男の死体を探った。
ブルー:「何かあったか?」
私:「布袋があった。中にたくさん銀貨が入ってる」
ブルー:「これほど持っているとはな。これなら相当な数の兵が雇えるぞ」
それから数日間、占拠した場所の周囲には常に兵士たちが立ち、警護にあたっていた。
……あの日が来るまでは。
それは、深夜のことだった。地面で眠っていた私は、ブルーに叩き起こされた。ひどく眠くて、引きずられるようにして走ったのを覚えている。遠くで、誰かが誰かを追い回し、緑色の髪をした男が追われているのが見えた気がした。……そして、私は再び意識を失った。
目が覚めた時、すでに日は昇っていた。私の体の上には死体が積み重なっていた。信じられない思いで周囲を見渡すと、あたり一面、死体だらけだった。……すべて、私の知っている仲間たちだった。
(ブルーだけは……ブルーだけはいないでくれ!)
祈るような気持ちで探し回ったが、残酷な現実は目の前にあった。
ブルーは、血の海の中で横たわっていた。
あいつら悪魔が、父さんを殺した。ブルーを殺した。私の家を壊したんだ。
「……絶対に、復讐してやる」
つづく。




