いわゆる異教徒
父:「新しい月が始まったな、エンレット。明日の朝、お前を異教徒狩りに連れて行く。また別の村から異教徒どもが紛れ込んできたようだ」
異教徒狩り。それは危険な仕事だ。捕まらぬよう、異教徒たちは護身用のナイフを忍ばせていることが多い。
エンレット:「異教徒狩り? それってすごく危ないんじゃないの?」
父:「危ないからといって避けていては、一生覚えることはできん。エンレット、私がいつかいなくなった時、これらはお前の任務になるのだ」
エンレット:「わかったよ……。でも、僕が足手まといにならないかな?」
父:「誰に向かって言っている。お前の親父は強いんだぞ!」
エンレット:「……ちょっと気になるんだけど、その異教徒たちはどんな罪を犯したの?」
父:「『神は存在しない』と考えている。それが奴らの罪だ」
翌日、父は一団を連れて村の中を二手に分かれて探し始めた。今回の異教徒は十五人ほどだという。かなりの人数だ。
父:「見ろ、あそこの男だ。あれが標的だ」
その男は、どこにでもいる普通の村人にしか見えなかった。私には、なぜ彼が異教徒なのか全く分からなかった。
エンレット:「どうやって見分けるの?」
父:「他村の教主から人相や歩き方、服装を聞いている。奴の振る舞いはすべて合致する。よく見てみろ、数歩歩くたびに周囲を観察しているだろう。警戒心が非常に強い。……我々のこの髪色は目立つからな。ほら、これを貸してやる」
父から手渡された頭巾を、私は頭に巻いた。
父:「ここで見ていろ。動くんじゃないぞ。私が捕まえてくる」
私:「わかった」
父は一般の村人を装って男に近づいた。三十歩、二十歩、十歩、そして三歩……。異教徒が気づいた時には、もう遅かった。
異教徒:「あんた、誰だ? 何の用だ」
父:「新しく来た村人かい? うちのパンは旨いぞ、食べていかないか」
父はパン屋のふりをして声をかけた。
異教徒:「……いや、いい」
男は即座に数歩下がり、父と距離を取った。
父:「そうか、残念だ」
父が目配せをした瞬間、背後から伸びた刃が異教徒の喉を切り裂いた。
男はそのまま崩れ落ちた。
「きゃあああ!」
周囲の村人が悲鳴を上げる。
「人殺しだ!」「怖い! あの人たち、異教徒なの? 誰か教主様に知らせて!」
父:「皆、落ち着きなさい」
父は頭巾を脱ぎ捨て、正体を明かした。
父:「こいつは異教徒だ。世を乱さぬよう、私が処分したのだよ」
「ああ、教主様でしたか! お疲れ様です!」
「異教徒なんて恐ろしい。教主様が守ってくださるおかげで、私たちは襲われずに済むんだわ」
この、髪色だけで判断する連中め。教主が殺せば正義で、異教徒は人間ではないというのか? そもそも、この人たちは何も悪いことなんてしていないじゃないか。異教徒は人間として扱われる価値もないのか?
「彼らが異教徒なのは、ただ、彼らが『少数派』だからですよ」
その声は、昨日私に話しかけてきたあの声だった。隣を向くと、やはりプリシュールが立っていた。
エンレット:「……どうしてここに?」
プリシュール:「ただの通りすがりですよ」
エンレット:「……あんた、捕まるのが怖くないのか?」
プリシュール:「私は異教徒ではありませんから」
エンレット:「リストには載っていないのか?」
プリシュール:「ええ、うまく隠れていますから」
エンレット:「……ならいいけど」
プリシュール:「お父上も片がついたようですし、見つかる前に私は行きます。さようなら」
エンレット:「バイバイ」
プリシュールは去っていった。
父:「一人片付いたな。あと十四人だ、気合を入れろ!」
こうして、私は夕方まで父の異教徒狩りに付き合わされた。
父:「これくらいでいいだろう。残りは逃げ出したはずだ。他村の連中に任せるとしよう」
エンレット:「あと何人残ってるの?」
父:「人相と人数からして、残るは二人だ。つまり、我々は十三人の異教徒を仕留めたということだ」
エンレット:「……でも、みんな死んじゃったよ」
父:「死んだのは肉体だけだ。奴らの悪魔の魂はまだ生きている。十字架に縛り、火で焼き尽くさねばならん」
エンレット:「……そうなんだ」
父:「この仕事は通常一、二週間に一度だ。手紙が届いたら準備を始めろ。悪魔どもは逃げ足が速いからな」
エンレット:「……わかった。頑張るよ」
(……何が仕事だ。人を殺せっていうのか? まっぴらごめんだ!)
翌日。
街の広場には十三人が整然と十字架に縛り付けられていた。私を含め、多くの村人がそれを取り囲んでいる。父が火を放つと、十字架の人々は炎に包まれ、何も残らずに焼き尽くされた。
「神よ、我らをお守りくださり感謝します!」
「神よ! 異教徒に審判を下したまえ!」
「ようやく報いを受けたわ、忌々しい異教徒どもめ!」
……神を信じないというだけで、彼らは殺された。
またあの村人たちだ。どうして人の死を「自分たちを守るため」だと思えるんだ。報いだって? 彼らは何も間違ったことなんてしていない!
……どうやら、本当の悪党は、俺たちのほうらしい。
つづく。




