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用意されていたご馳走の山を平らげ、
デザートにケーキを食べていると、
サンタの格好をした父が現れた。
美青「あ!クリスマス、OKなんですね!」
水六「うちはそういうことは気にしてないよ!
生まれた環境で世間のイベントに乗れないのは
誰も幸せになれないからね」
そう言いながら、叶実にプレゼントを手渡した。
叶実がプレゼントを開けると、
遊園地のチケットが2枚と、現金が入っていた。
水六「明日、美青ちゃんと行ってきなさい。
神社のことはお父さんに任せて!聞いたよ、
今日杏華さんが来たんだろ?事前に連絡を
貰っていたんだ。ついにあの遺言を叶実に
見せる時が来たかー…ってね。
叶実、遊園地とかデパートとか…家族連れが
多いからずっと避けて生きてきただろう?
お母さんの気持ちを知った今なら、もう
行けるんじゃないかって思ってね」
叶実は、言い訳をして人が多い場所へ行くことを
避けていたのがバレていたことに対して、
ばつが悪そうな顔をした。
美青「私もいいんですか?!しかも明日!
叶実ちゃん、絶対いい思い出になるから。
私と初クリスマス、楽しもうね!!」
叶実「行ったことないから緊張する…」
美青「大丈夫!そうと決まれば明日のために
ピアスを開けましょうか!!」
美青は叶実の両耳にピアスホールを開けた。
傍らでは、水六が彩華の遺言の映像を見ながら
大号泣していて、叶実は痛みを感じる余裕がなかった。
彩華からの贈り物である耳飾りを付けてみると、
蝶が揺れ動き、とても美しい。
水六は鏡越しに耳飾りを見る叶実の姿を見て
またも大号泣しだした。
叶実は呆れ、美青は大笑いした。
17回目の叶実の誕生日は、
とても賑やかなものになった。
母からの二つの贈り物と、父からのサプライズ
そして何より、
美青に祝われたことが、叶実は嬉しかった。
叶実にとって、特別な日になったことだろう。
翌日、二人は朝早くに電車を乗り継ぎ
遊園地へと向かった。
慣れない人の波に叶実は少し酔ってしまい、
こまめに休みながら楽しんだ。
初めて来た遊園地、どのアトラクションが
好みかもわからず、一通りチャレンジした。
一つ分かったのは、叶実は絶叫系が
苦手だということ。
反対に、美青は絶叫系が大好きだ。
叶実がジェットコースターで気持ち悪くなり
座っている間、美青は一人でおかわりに行く。
叶実「よくあんなの乗れるわね…うう…」
吐き気がして下を向くと、
小さいシャボン玉が沢山飛んできた。
驚いて顔をあげると、小さい男の子が
シャボン玉のおもちゃで遊んでいた。
「お姉ちゃん、大丈夫?見て、シャボン玉。
綺麗でしょ!これ見て元気出して!」
そう言ってまた、おもちゃのボタンを押して
シャボン玉を沢山放った。
両親は、人に向かってかけちゃダメよ、と叱り
叶実にすみません、と謝った。
叶実「ありがとう。とっても綺麗ね。おかげで
元気が出たわ。パパとママと楽しんでね」
男の子はニコッと笑って頷き、両親と共に
手を振って去っていった。
以前の叶実では考えられなかったが、今は
家族連れを見ても、寂しくも、苦しくもない。
叶実は揺れ動くミイロタイマイのピアスを
指で撫で、微笑んだ。
丁度その顔を戻ってきた美青が見ていたようだ。
美青「何かいいことあった?嬉しそう」
叶実「別に、何も。美青、次あれ乗りたい」
叶実が指差したのは、メリーゴーランドだった。
大嫌いだった人混みも、見るのを避けていた
家族連れの姿も、受け入れられている。
着飾った馬達は、煌びやかなステージを
ゆっくりと昇降しながら回っていく。
二人が乗ったのは、馬車だ。
叶実はシンデレラではないし、
馬車はかぼちゃの形をしていない。
ガラスの靴の代わりに、
ステンドグラスの耳飾りを手に入れた叶実。
その瞬間、暗かった世界に光が灯った。
叶実は、お母さんという魔法使いに
12時になっても、何時になっても
悲しくならない魔法をかけられたようだ。
この魔法は、叶実が耳飾りを付けている限り
解けないことだろう。
外が暗くなり、メリーゴーランドが
眩しいくらいに光を放っている。
叶実は暗くなった空を見つめながら、
叶実「もうそっちへは行かないよ」
と、呟いた。




