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彩華「叶実、初めまして。母の彩華です。
姉さんが約束通りに届けてくれていたら、
今日はクリスマスイブ。叶実の誕生日ね。
神社の娘がクリスマスイブに生まれるなんて
何だか面白いわよね!こんなことを言ったら
お父さんに怒られてしまうかしら…あはは。
帝王切開をする日程の候補日がこの週でね、
私が選んだの。蝶花楼家に女性は皆、特別な
能力を持って生まれてくると聞いています。
加えてクリスマスイブが誕生日だなんて、
別の神ではあるけれど、更に特別な力が
叶実を支えてくれるんじゃないかなってね。
お父さんから聞いていると思うけど、女性が
生まれるのと同時に、母体は命を失うの。
これも先祖代々…変わらず起きていること。
私は叶実を産んですぐにこの世を去るから、
自分が見守れない分、更に見守る力を…と
願いを込めて、クリスマスイブに決めました。
大きくなったあなたは、自分を責めていると
思いますが、これは私が決めたことだから。
お付き合いしてすぐにその話を聞いたわ。
だから私とは結婚できないって。
それでも、どうしてもお父さんがよかったの。
例え生まれてくる子が女の子でも、この人と
私の子が生まれてきてくれるならって…。
結婚して妊娠、そして性別がわかった時。
お父さん大泣きしてた。嬉しいんだけど、私が
死んでいくから。ごめんな、ってずっと泣いて。
私は、本当に嬉しかった…大好きな人との子が
先祖代々伝わる能力を持って生まれるんだって。
私の死には大変な意味があるんだって思った。
だから、自分が生まれたせいで私が死んだと
思わないでね。全部私が望んだことだから。
今日近所の公園でね、小さい子供がお母さんと
シャボン玉を吹いていたの。綺麗だったー…。
私も叶実と…シャボン玉を吹いてみたかった。
青空の下で、時間も忘れて眺めたかった…
それが、唯一の心残り。
この箱には、そんなことを思っている時に
偶然見つけた物が入っています。
まるで私の思いを形にしたような物です。
お守りとして持っていてくれたら
嬉しいな。
最後に、叶実。17歳の誕生日、おめでとう。
どうして17歳の誕生日に姉に頼んだかというと、
お父さんと私が出会った歳だから。
私が好きで好きで、猛アタックしたの!
17歳になった叶実にも、男の子じゃなくても
一緒に笑いあってくれる友達がいるといいな。
そんな人に出会えているなら、大切にしてね。
私がその歳でお父さんと出会ったように、きっと
今、叶実の側にいる人は、生涯大切な人になる。
お母さんはそうであってほしいと願っているよ。
小さい時から寂しい思いをさせてごめんね。
寂しい時こそ、誰かの力になってほしい。
その力は、私が叶実に繋いだ大事な襷よ。
叶実が力を使えるのは、私が生きていた証。
そこに少しでも、母を感じられたらいいな…
じゃあね、叶実。
その力で、悩みを抱える人々を救ってください。
愛しているわ、叶実。
叶実という奇跡をこの世に誕生させたことを
自分でも誇りに思います。
ずっとあなたの幸せを、願っています」




