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美青が叶実に代わってお茶とお菓子を
用意し、杏華に差し出した。
美青「よかったら、どうぞ」
杏華「ありがとう、いただきます」
その後、数分間
耳鳴りがするほどの沈黙が続く。
そして、杏華が重い口を開いた。
杏華「今日は彩華から預かった物と渡すために、
それから、遺言を伝えに来ました。蝶花楼家に
生まれた女性は先祖代々、白い蝶の声を聞き、
操る能力があると妹から聞いています。
妹はその能力を使って自分の思いを遺したいと、
私の記憶に遺言を記録していきました。
どうか…妹の言葉を聞いてやってください」
叶実は少し間を置いてから無言で蝶を
一匹呼び寄せ、杏華の左耳へと向かわせた。
蝶は杏華の左耳に止まり、
花の蜜を吸うように、口吻を耳の穴へ向ける。
すると、蝶の翅は、みるみると変色していった。
黒く染まった翅には、
シャボン玉に似た模様が浮かび上がる。
宝石のように輝くその姿に、
三人は思わず息を飲んだ。
真っ暗闇に虹がかかったような美しい姿は
ミイロタイマイ、そのものだった。
美青「こんなに綺麗な蝶、初めて見た…」
蝶に見とれていた叶実は、美青の声で
我に返り、茶室に飾られた月の形の鏡へ
蝶を向かわせた。
蝶が鏡を一周すると、
叶実の母・彩華の遺言が再生された。
彩華は叶実にそっくりな顔をしている。
場所は…今叶実達がいるこの茶室だ。
外は雪が降り積もり、真っ白。
雪が光って見えるせいか、
彩華の姿が陰で暗く見える。
そして、彩華は語り始めた。




