71
静まり返ったエントランスホールにニスカの声が響く。歯を剥き、絶望と怨恨の混ざった眼差しで階下にいるリベリオを睨みつけた。
「リベリオ・デガート…お前のせいで…!お前のせいでぇぇぇ!!おのれぇ!!」
「きゃあぁ!!」
ナリアをグイと引っ張り、盾代わりに前へ押し出す。リベリオは睨み返しながら、ニスカの言葉にハタと我に返った。
----ちょっと待て。よく考えたら何で俺のせいなんだよ!全部あのオッサンが仕組んだ事じゃねぇか!!
自分は例の『調査報告書』で脅され、ほぼ無理矢理同行させられただけではなかったか。確かにオロヒリアへ向かったのは、団員たちを守ろうという己の意志でもあった。それでも。
ナリアが危険な目に遭っているのも、たった今死にかけたのも、今もなお自分が憎悪の目を向けられているのも、全てに納得がいかない。
リベリオの脳裏に別の怒りが込み上げる。わざわざ振り向いて確かめずとも、安全な場所でシレッと睨み据えている男の姿が容易に想像できるから尚更腹が立った。今うっかり後ろを振り向いてしまったら、ニスカをそっちのけで喧嘩を始めてしまうかもしれない。リベリオはグッと拳を握り締め、この理不尽な状況を飲み込んだ。
互いに睨み合ったまま時間だけが過ぎていく。リベリオがそっと足を踏み出そうとした瞬間、ラタの声が響いた。
「おーい、ナリア。聞こえるか?」
「え?えぇ、聞こえてるわよ…ですよ。」
「今更敬語なんて要らねぇよ。それより、あの時俺がお前に教えた踊り、覚えているか?」
「踊り?」
ナリアがキョトンとした顔でラタを見る。公園の人気の無い場所で教わった、腰をくねらせる独特の踊り。その時ラタが教えてくれた事を思い出し、ナリアはハッとした目をラタに向けた。
「もしかして…。」
「そうだ。あれだ。あれを今見せてくれ。」
ラタがニヤリとナリアを見返す。ナリアは口を結んで小さく頷き、瞳を閉じてスゥッと静かに息を吸った。
----何だ?何の話だ?
リベリオがチラとラタを見てナリアに視線を戻すと、ナリアの視線はニスカの剣を持つ手に集中していた。両足を肩幅に広げて、気付かれないよう縛られた両手を顎の下までゆっくりと上げる。ラタがすぐ側にいる馬の横腹を蹴り上げ嘶かせると、ニスカの剣先がナリアの喉から一瞬離れた。
「ぐあぁぁぁああ!!」
ニスカの絶叫が鳴り響く。ナリアはヒールの踵を思いきり振り上げてニスカの足に叩き込むと、剣を持つ手を掴んで腰をくねらせニスカの腕の下をくぐり抜けた。そのまま身体を回して腕を捻り上げ、ニスカの後ろに回り込む。腰を思いきり突き出し、ニスカの腰骨をグッと押し上げた。
「わ、うわ…うわあぁぁぁあ!!」
腰から落とされ、受け身もできないまま、ニスカは鈍い音を立てながら階段を転げ落ちた。何が起こったのかも分からないまま、呻きながら目を開ける。血にまみれたブーツが目に入りゆっくりと視線を上げれば、氷のような眼差しで睨み下ろす美丈夫と目が合った。
「ひっ…あぁ…。ぐっぎぃゃぁぁぁあっ!!」
間髪を入れず、リベリオの強烈な一撃がニスカの両手の甲に入る。甲の骨が折れる音など聞こえないかのように、リベリオはニスカの口にさっさと布を押し込めた。ここまでされてあっさり舌を噛み切られてはたまったものでは無い。
すぐにナリアの元へ向かおうと階段に足をかけると、立ち尽くしたまま両手で顔を覆っているナリアの姿があった。よく見れば、指の隙間からニスカの様子をしっかり覗き見ている。
----あれは…人を傷つけて申し訳ないと思う反面、『ちょっと可哀そうだけど仕方が無いわよね』とか思ってそうだな。
「ナリー!」
「リブ!」
リベリオは駆け足でナリアの元へ行き、両腕でしっかりとナリアを抱き締めた。薄い肌着姿にされていたせいか、細い身体が冷えきっている。リベリオは抱き締めながら、ナリアの身体を優しく擦った。
「ナリー、大丈夫か?怪我は…うん?何か頬が腫れていないか?…よく見たら両方…。」
リベリオの背中が殺気立つ。ナリアの手首に剣を当てて巻かれた縄を切り取り、剣を放り投げてそっと頬に触れた。ナリアがピクリと震わせ顔を離すのを見て、手をグッと握り締めた。
「誰にやられた?」
「あのニスカという人です。ぶたれた時は痛かったのですが、今は触らなければ大丈夫です。」
「…ナリー、少し待ってろ。」
ナリアの肩に外套をかけ、リベリオはゆらりと身体を離した。数人がかりで身体を押さえつけられ、縄で縛られているニスカをひたと見据える。
本当なら、ナリアの胸に触れた手など切り落とすつもりだった。それを手の甲を砕いただけで抑えたのは、もっと苦しい目に遭わせる為であり、ここで死なせるわけにはいかなかったからだ。しかしそれももう、どうでも良い。
床に落ちていたニスカの剣を拾って階段を下りようとしたところで、後ろから服を引っ張られて振り向いた。
「どうした?ナリー。」
「何をなさろうというのですか?」
「奴の腕を切り落とす。」
リベリオの温度の無い声に、ナリアはゴクリと喉を鳴らした。服を掴んだ手に力を込め、リベリオを真っ直ぐ見上げた。
「先ほどあの方の手を砕かれたではありませんか!」
「あれはお前の胸に触った代償だ。そして今からするのはお前の頬を殴った代償だ。」
「いけません!これ以上はお止め下さい!」
ナリアはリベリオの背中から腕を回して抱き締めた。腕に渾身の力を込めてリベリオを止める。その手首を軽く掴まれ、あっさりと引き離されてしまった。
リベリオはナリアの手を掴んだまま、腰を屈めて耳元で諭すように囁いた。
「いいから、お前はここにいろ。見るのが怖いのなら目を瞑っておけ。」
「そうではありません!リブにこれ以上あの方を痛めつけて欲しくはないのです!」
「なぜだ?奴はお前を凌辱しようとしたんだぞ?実際に身体を触られただろう、可哀そうに。…クソッ…やっぱり殺して…」
「でしたら!!」
ナリアはリベリオの手を取り、鎖骨の窪みにグッと押し当てた。リベリオは息を呑み、ナリアは涙を浮かべて声を上げた。
「でしたら、貴方の手で私の身体から哀しみを取り除いて下さい。張られた頬も、握り潰された胸も、抱き寄せられた腰も全て、貴方の手でたくさん触れて、私の哀しい記憶を消して下さい!」
「ナリー…。」
「あ、貴方しか…リブにしかできない事でしょう?リブにそうして頂かなくては、私は一生この哀しみから逃れる事はできないのです。あの方を傷付ける事が私への慰めだと仰るのなら、それは大きな間違いです!」
リベリオはナリアの瞳をじっと見つめた。自分の手を掴む小さな手がカタカタと震え、胸の鼓動が直接心臓に触れているかのようにドクドクと伝わってくる。滑らかな肌に触れている部分が熱を帯び始め、リベリオは剣を捨ててナリアを抱き締めた。
「…わかった。お前がそう言うのなら、そうしよう。」
「リブ…!うぅぅ…」
「泣くなよ。そうだよな、あんなジジイ殺ったところでお前の記憶が消えるわけじゃないものな。触られた事を忘れられるぐらい、俺がたくさん触れば良いんだよな。」
「うぅぅ…う?え?リブ?今、何て…」
顔を上げて身体を離そうとした途端、グイと引き寄せられ、ナリアの頬がリベリオの胸に触れた。腕にギュッと力を込められ、その息苦しさが心地良い。
ナリアが目をパチパチと瞬かせていると、リベリオは悪戯っぽく耳元で囁いた。
「お前が言ったんだろう?たくさん触れてくれって。そうじゃないと哀しい記憶は消えないって。」
「え?…え!?」
「ククッ、お前一体どこでそんな煽り文句を覚えてきたんだ?」
「煽っ…!?私、そんなつもりじゃ!」
「おいおい、今更何だよ。愛しい女にあんな事言われて大人しくする男なんかいるわけないだろ?」
顔を真っ赤にしてパクパクと口を開けるナリアの顔を、リベリオはクツクツと笑って見下ろした。
そっと頬に触れ、顎に手を添える。皆から見えないように後ろを向き、柔らかい唇に口付けを落とした。頬の痛みを気遣った触れるだけのキス。ゆっくりと舌で下唇をなぞり、中へと沈めた。
軽く舌を絡めてからそっと顔を離した瞬間、冷えた声が耳を貫いた。
「リベリオ、ご苦労だったな。」
「侯爵様!?い、いつの間に…というか、いつからそちらに!?」
「ひゃあぁぁ!!お義父さま!!」
ナリアが咄嗟に腰をくねらせリベリオの腕を捻り上げる。そのままリベリオの後ろに回って腰を突き出した。
「うわぁっ!!」
「あぁぁっ!も、申し訳ありません!リブ、大丈夫ですか?」
顔を顰め、口を固く結んで腰と肩を押さえて擦る。か弱い女にやられた手前口が裂けても痛いとは言えないが、これを喰らった上に足を踏まれて階段から落とされたニスカに、ほんの少しだけ同情した。
「何やってんだよ、お前ら。」
ラタが呆れた声で歩み寄る。ルミゴンとリベリオはサッと片膝をつき、頭を下げた。
「だからもういいって。今そういうの要らないからさっさと立て。ナリア、無事で良かった。早速あれが役に立ったな!」
「ラタ、来てくれて本当にありがとう。ラタが来てくれなかったら、私何も出来なかった。」
「あの…、ナリー?殿下とは一体…。それにあの踊りは何だったんだ?」」
リベリオが冷や汗を流してナリアに詰め寄る。リベリオの肩越しに同じように冷や汗を流すルミゴンを見て、ナリアは公園での出来事を話した。
ルミゴンの目が光り、護衛に付けた者たちへの処分に思考を巡らせ始める。それに気が付かないまま、ナリアは話を続けた。
「その時、ラタに教えてもらった踊りがいくつかあるのですが、先ほど踊りは護身用の踊りだったのです。まだ未完成でしたが、本番で成功してホッとしました。」
ナリアがニコニコと笑って胸に手を当てる。リベリオは奥歯を噛み締め、ナリアの両肩を掴んで声を荒げた。
「馬鹿!!何でついて行ったりしたんだ!たまたま殿下でいらしたから良かったものの、そうじゃ無かったらどんな酷い目に遭っていたかぐらいわかるだろう!!」
リベリオは眉間に皺を寄せてナリアを睨み付けた。しっかりしているようで肝心なところが抜けているナリアには、時折無性に腹が立つ時がある。互いの気持ちはきちんと伝え合うと決めた以上、優しく飲み込むつもりは無かった。
「あ…申し訳…ありませんでした。」
ナリアは震える声で呟き、深く頭を下げた。沈黙が落ち、ナリアの鼻を啜る音だけが聞こえてくる。リベリオは溜息を吐き、ナリアをそっと抱き締めた。
重い空気の中、ラタは二人を見ながら後ろで控える男に向かって口を開いた。
「リスター・デガート伯爵、いるか?」
「は、こちらに。」
リベリオは顔を上げ、ラタの後ろにいる父親に目を向けた。その後ろにはなぜかラントン親子までついて来ている。チラとルミオの方に視線を向けると、目を輝かせて何度も小さく頷いていた。
----何やってんだ、ルミオの奴…。
リベリオが一瞬半目になったのを認めると、ルミオはガックリと肩を落とした。
「さて、これで揃ったな。伯爵、今日交わした俺との会話を覚えているな?この場でちゃんと言っておけ。」
「はい。」
リスターはラタに一礼してから顔を上げ、リベリオとナリアに向き直り静かに口を開いた。
「私、デガート伯爵家当主リスター・デガートは、当家次男リベリオとグラナード侯爵家令嬢ナリア・グラナード嬢との婚姻を認めます。」
リスターがリベリオの目を真っ直ぐに見つめる。いつもの侮辱するような、抑圧するような瞳ではない。何度も欲しては諦める事を繰り返していた温かい眼差しを突然向けられ、リベリオは困惑し眉を潜めた。
「な…どうして急にそんな…。…今度は何を企んでいるのです?」
沸々と怒りが込み上げる。まだ五つにも満たない幼子の頃からどんなに願い乞うても叶わなかった、父親からの愛情に満ちた眼差し。まさか、こんな訳も分からない状況でこうも簡単に向けられようとは。
リベリオは冷えた瞳で睨み返し、困惑の根を断ち切った。
「ナリーはまだグラナードのままですよ…?アンタはグラナードの者との婚姻は、絶対に認めないのではなかったのか!妹の事があったから!!」
リベリオの声がエントランスホールに響き渡る。兵士たちが階上を見上げ、何事かと囁き合った。黙ったまま息子を見つめるリスターに、リベリオは追い打ちをかけるように捲くし立てた。
「何だ?今度は何が目的だ!俺もナリーも、何も変わってはいないだろう!なのになぜ急に認めるなどと言うんだ!」
「リブ…。」
ナリアがチラとルミゴンを見る。ルミゴンは黙ったまま、二人を静かに見つめていた。
「そうか…アンタは由緒正しきデガート家の当主だもんな。一族の名誉の為なら何でもする男だ。息子は出来損ないでも、妻になる女が王子殿下の友人だとわかった途端、手の平を返した!!そうだろう!?」
「副団長!それは違…!!」
「うるさいっ!!部外者は黙ってろ!!」
リベリオはルミオをギロリと睨みつけ、全身から殺気を放った。ブルブルと震える拳を握り締め、リスターに視線を戻す。視界にラタの姿を認め、浅い呼吸を繰り返して気を鎮めた。
「いくら父親でも、一族の名誉の為にナリーを利用すると言うのなら容赦はしない。もしそんな事を企んでいるのなら、俺はアンタと剣を交えてでも家門を潰す!わかったか!!」
エントランスホールがシンと静まり返り、気が付けばその場にいる者全員がリベリオに視線を向けていた。ニックスが目を開け、耳を澄ます。伝えたい事が声にできない今の自分の不甲斐なさに奥歯をグッと噛み締めた。
長い沈黙が流れ、「団長の様子を見てきます」とリベリオがリスターの横を通り過ぎようとしたところで、リスターは静かに口を開いた。
「待ちなさい。」
リベリオの足がピタリと止まる。ラタはチラと階下にいる兵士たちに視線を送り、片手を上げて全員屋敷から出るよう指示を出した。ニックスは到着したばかりの馬車に乗せられ、王宮へと連れて行かれた。
互いに視線を向けることも無く、リスターは前を向いたまま続けた。
「確かに、私はお前たちの婚姻を反対した。若くして亡くなった妹ルーラの末期が…やっとの思いで蓋をしたあの時の絶望が蘇るのかと思うと、どうしても認める事などできなかった。今度はお前が自ら命を絶つことになってしまうのではと恐怖すらしたのだ。」
「だが、そうでは無かった。ルーラが死を選んだのは、ルミゴンのせいでも、誰のせいでもない。それぞれに愛する者がいて、その者の為に己の忠を尽くした結果だ。ルーラにとってそれが死だったというだけの事だったのだ。」
「…それが分かったから、俺たちの婚姻を認めると?」
リベリオが低い声で返す。リスターは小さく頷いた。
「そうだ。お前の言った通りだ。私たちの過去と、お前たちの未来は何の関係もない。それに…お前が心から愛している女性が、お前を愛してくれているんだ。親としてこれ程嬉しい事があるだろうか。」
「ハッ、親だと?」
リベリオは鼻で笑い、声を震わせ吐き捨てた。今ほど親という言葉に嫌悪を抱いた事は無い。
「今の今まで親の愛情など見せたことも無いくせに…、子を子とも思わない侮辱を浴びせ続けたくせに…アンタのどこが親だ!今更父親面するなと言っただろうが!!」
背中を向けるリベリオの声が響く。リスターは小さく息を吐き、口を開いた。
「確かに私はお前たちには…特にお前には厳しく接してきた。だがそれは、何もせぬままお前を育ててしまったら、確実に私と同じ道を辿ってしまうと恐れたからだ。」
「…何の話だ。」
「私が父から家門と爵位を受け継いだのは、ちょうどマルフィーロ王国との戦が起きる直前だった。当時私は親衛隊長を務めており、戦の準備や国王陛下御一族の身辺警護の強化に注力し、領地の管理を父の代から仕えていた者たちに任せきりにしていた。」
「その話なら以前兄上から聞いている。家令たちに相当領地を荒らされたらしいな。」
リベリオは静かに言い放つ。忘れもしない、兄アレニスから聞いた当時の領地の惨状。欺瞞と汚職で無法地帯と化した領地を立て直す為に、血で血を洗う粛清を行わざるを得なかったリスターの孤独な闘いの日々。
荒みきり、最も家から遠ざかっていた時期と重なっていたとはいえ、何も知らずに粗相を繰り返していた当時の自分を頭の中で何度も殴り飛ばした。
「…そうか、ならば話は早い。お前の言う通りだ。私は父から後継者としての教育を受けていたが、父の死は突然で私はすぐにでも父の跡を継がねばならなかった。領地にいた家令たちは、そこに目を付けたのだ。」
「領地の方は我々に任せろとでも言われたのか?戦の準備に専念していろ、と。」
「…そうだ。父はいつも彼らに支えられている事を嬉しそうに話していた。だから私は彼らを信じ、決裁事以外は全て任せる事にした。それが過ちだったのだ。」
リスターは目を閉じ、一呼吸置いてから続けた。
「私は心から彼らを信じていた。城には私が幼い頃から父に仕えていた者も多くいたのだ。父に連れられて彼の地へ赴いた時など、彼らはいつも私に優しい笑顔を向けてくれていた。彼らに愛されていると信じ、私もまた彼らを愛した。…まさかそんな彼らが中心となって私を陥れる日がくるなど、思いも寄らなかった。」
「結局私は、この手で愛する者たちの首を落とすことになってしまった。確かに彼らが行った度重なる悪行には情状酌量の余地など無い。しかしこれは彼らだけの責任だろうか。自分の甘さが招いた結果ではないのか。私は彼らの首を落とす度に、己の首が落ちるような恐怖に襲われ続けた。」
「私は彼らを信じると同時に、領主として彼らを厳しく律しなければならなかったのだ。それなのに、幼い頃から見てきた彼らの笑顔に安心し、仕事を理由に背を向けた。気が付けば信じた者たちに裏切られ、領地は荒れ果て、家令たちからは愚か者と嘲笑われていた。私の心はどんどん闇に落ちていった。」
「私は、お前にだけはそんな思いをさせたくはなかった。」
リスターは振り向き、リベリオの背中に目を向けた。いつからか、リベリオを見る時はいつも背中ばかり見ていた気がする。かつて自分に愛を乞うていた息子から初めて憎しみの目を向けられて以来、まともに顔を見るのが怖くなっていた。




