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ボツ作  作者: Eクラス
第1章 新学期
12/13

1-9 とある魔法生のバイト

 同日。某所。18:00~

 とある東京のオフィスの一角。

 未来を創造する魔法と宇宙の調和を目指した研究ラボにて事件が起きた。


 研究者・男性の死因は“天罰”による魔法術式。


 仏さんの首から上が無くなっていた。

 遺体現場から察するに弾け飛んだと表現するべきか。

 血の海と、これまた派手にやってくれたものだ。


 魔法犯罪捜査一課の刑事である風間と小森はブルーシートを捲り遺体を確認した。

 うぇっと小森女史が嗚咽する。死体は見慣れたと思っていたが自分はまだまだらしい。惨いの一言だった。


「ここまで大雑把な呪詛返しは初めてだな。自業自得だが、とんでもない相手に目を付けられたもんだ。同情するぜ……」


「うぅ……風間さん、私ダメですゲロりそうです帰っていいですか~?」


「阿呆。駄目だ」


 風間は仏になったソレのある部分に注目した。

 左の掌だ。

 こいつはとんでもない中二病だな…というのが感想だった。

 王冠に絡みつく蛇……のタトゥーを入れていた。


「愚者のシンボル、か……ここでお目に掛かれるとは」


「風間さん、何ですかコレ??」


「そうだな……云うならば、愚か者共の証ってところだな。まぁ、要するに俺たちの敵だ」


「は、はぁ……」


 風間はブルーシートを遺体にかけ直した。

 見るものは見たと言ったところだ。


 そして、手ごろな鑑識員に声を掛けた。


「おい、そこのお前」


「あ、はい。何でしょう」


 現場検証をしていた鑑識員は作業を止めて振り返った。


「見ない顔だな。新入りか?」


「はい。本日が初出勤です」


「そうか。まぁいい。それよりもだ、奴さんの左掌にあったタトゥーと同じものが遺留品の中に紛れ込んでいなかったか今わかるか?」


「はて? これといった怪しいものはありませんでした」


「そうか。なら、もし見かけたら俺にいち早く情報をよこせ」


「了解しました」


「それじゃ持ち場に戻っていいぞ。時間とらせて悪かったな」


「ほーい」


「………」


 と、新米鑑識員は鼻歌なんか歌いながら持ち場に戻る。

 現場検証にて魔法の痕跡が他にないか、いろいろやることが多い鑑識員なのである。

 しかし、


「いや、待て。もう1つ聞きたいことができた」


「えーまだ何かあるんですかー? 勘弁してくださいよー」


 などとあからさまに嫌そうな顔をする新入り。小森は頬を引きつらせた。

 お願いだからそんな不遜な態度とって風間さんを怒らせるなよと小言の一言も吐きたくなる今日この頃。


「悪いな。だから手っ取り早く済ませれるよう協力してくれよ」


「はいはーい。それで何が聞きたいんですー?」


「それじゃあ単刀直入に聞くが、お前んとこの若頭もここに来ているのか?」


「は…………………??」


 新米鑑識員はあからさまに動揺した。

 ポーカーフェイスはどうやら苦手らしい。


「な、なんのことかアタイわからにゃ~い」


「そうか、お前女か。変装でもしているのか?」


「え~………なんだって??」


「誤魔化しても意味ないからな。俺にはわかるんだ。お前らが人間社会に紛れ込んでいてもな、そのニオイってのは独特で一度知ってしまうと嫌でもわかっちまうんだ」


「え、おじさんそれただの変態じゃん!? キモ~っ!! というか、そんなにアタイらのニオイってキツいはずが…………って、あ!!」


「はぁ。もういい、時間の無駄だ」


 そう言って、風間は鑑識員の顔面を剥ぎ取った。

 残酷な描写表現になってしまったが、正確には新米鑑識員の化けの皮を素手で剥がしたということだ。

 これには小森もびっくりだ。

 美少女がいた。灘という絶世の美女だ。そして、てへぺろしていた。


 風間は魔法銃を構えた。


「なんだ、灘か……」


「なんだってなんだ!! この超絶美少女の灘ちゃんをなんだってなんだ!!」


「相も変わらずウザイなお前。で。お前はここで何している?」


「うーんと……鑑識ごっこ?」


「学校はどうした? サボりか?」


「アタイらの本業は殺しだZE~☆」


「そっか。ならここで死んでも文句ないよな?」


「いやなんで!??」


 一発、魔弾が灘の眉間を直撃した。


「か、風間さん、いきなり何してるんですか!?」


「あん? いいんだよ、コイツらの対応なんてこんな感じで」


「いやいや、流石に遺体現場で殺人を我々刑事が起こしたら大問題ですよ!!? どう上に報告するんですか!!?」


「じゃあ、こう報告書に書いておけ。害獣を一匹駆除しましたってな」


「そ、そんな、熊じゃあるまいし……」


 目の前で女の子を上司が魔法銃で射殺したなんて書けない。

 突然の出来事にキャパオーバーしそうな小森刑事。

 それに輪をかけて現場をカオスにしたのは他でもない灘である。


「あー久しぶりに今のは効いたぜ、とっつぁん~」


 涙目の灘ちゃんが額を押さえてそこら中を転げ回っていた。


「え、風間さんのアレで死んでない……!?」


「まぁ、こんなオモチャで死んでくれるタマかよ。おら、それよりも現場を荒らすな小娘」


「そんな、あん、若よりも蹴りが強いぜ風間のとっつぁん……癖になったら責任取ってNE☆」


「な、なんなのこの子……?」


 現場を転がる灘を足で止めて踏んずける鬼な上司にも引くが、踏んずけられて何だか喜んでいるようにも見える少女にもドン引きする小森であった。


「あ、あのー、風間さん……その、この子と知り合いなんですか?」


「まぁ、ちょっとな…それにいい機会だ。お前も知っておけ。コイツらも俺たちの敵だ」


「いやん、いつまでも昔を女を引きずっていたらモテないZE☆」


「お前は一体何の話をしているんだ……!?」


 なんて現場が騒々しくなるから、遂に彼女・・も痺れを切らしてしまったらしい。

 灘が壁際まで吹っ飛んだ。


「え、今、風間さん……何かしました?」


「いや、俺じゃない。まぁバカが1人黙ってくれてせいせいするが……お前もあんまり現場を荒すようなマネはよせ。みやこ


 風間が振り返った方を見ると、今も何かしらを現場調査をしている鑑識員だ。

 彼女・・も変装して潜り込んでいた。

 調査に集中しているせいかこちらを一瞥さえしない。


「それを言うんやったら、オッサンもウチのもんイジメるんも大概にしてーな。特に灘は相手するとツケ上がるんや。構ってちゃんやからな、甘やかしてもアカン。無視するんが一番やねんけど、ウチの顔に免じて堪忍してやってな」


 しれっと彼女は、自分が灘を最後ぶっ飛ばしたのはなかったことにした。

 それで、また現場検証に勤しむ。

 虫眼鏡1つで何がわかるのかは不明だが。


「見過ごすわけにもいかないだろ。捜査の邪魔されてんだ、こちとら」


「邪魔なんかせーへんよ。うん、してへんな。寧ろ、捜査の協力してやってねんからお礼の1つでも浴びせてくれや。というか礼金がええなぁ」


「金はやらんぞ。そもそも頼んでないし」


「なんや、ケチなオッサンやな。ウチら貧乏学生に援助してくれてもええやん」


「お前も言い方には気を付けような。それから、お前らの都合なんか知らねーよ」


「いやいや、ウチらに喧嘩吹っ掛けるんなら知っときぃや。うん、知っとかなアカン」


「というか、お前らどうせバイトでここに忍び込んだんだろ? どうせ俺らの一か月分の給料よりも高いバイト代出てんだろ?? だったらそれでいいじゃねーか……いや、全然よくないけどなJK共」


 風間は魔法銃を懐にしまった。

 まぁ、ここでドンパチするわけにもいかない。それに彼女を相手するのはここでは避けたい。

 被害範囲は天罰のソレを上回りかねないからだ。


「なんや、喧嘩の相手してくれへんのかいな?」


「お前と喧嘩したらいくら命あっても足りなくないからな……それよりも、捜査に協力するってんなら知ってること全部吐いてもらうぞ?」


「まぁ、別にそこはええけどな。うん、それがええ。敵の敵は味方って言うしな、今は協力させてもらうさかい。と言ってみてもなぁ、ちょっと調べてみたんやけど目ぼしい情報がまるっきりないねんな、これが……」


「そんなはずないだろ」


「いやいや嘘はつかんよ。どうも、今回もハズレみたいやわ」


「ハズレかよ……」


「そやな。トカゲの尻尾切りみたいなもんやぁ。本命やない、コレは」


「まぁ、そんなこったろうとは思っていたが……」


 男の鑑識員に偽装している彼女はよいしょと重い腰を上げた。


「一つだけ言えることは、この奴さんからは連中特有のニオイが一切ないんよ」


「ニオイねぇ……」


「そや。オッサンがウチらのニオイを嗅ぎ分けるように、ウチらも連中のニオイを嗅ぎわけれるんや。オッサンも嗅いだら絶対忘れもせーへんで、あのドきついニオイは」


「お前らも大概なんだがな……」


「まぁ、今の発言は聞かんかったことにしといたるわ」


 そして、白目向いて倒れている灘を米俵を担ぐようにかかえてため息を吐く。


「ニオイが無いってことは、魔力の流れや情報が一切読めんくて、奴さんはホンマに連中の下っ端やったんかすら怪しいからなぁ。本命以外はニオイせーへんかもしれんけど、これやとこの奴さんはまったくの無関係者だって線も浮上するねんけどな」


「手のひらタトゥーはダミーだってか?」


「それや。アレがホンモンやったらニオイが絶対するはずや。じゃあ灘が呪詛返しして天罰食らわせた奴さんは無駄死に? ウチの喧嘩相手はどこにおんねん……ホンマ、ついてないよなーって話やで。下手したらバイト代もでーへんかも」


「え、それってつまり??」


 小森は耳を疑った。

 それではまるで彼女らがこの被害者を殺したということになる。

 風間が頭を掻いてため息を吐いた。


「ってか、お前らがアレをやらかしたのかよ。たくっ……」


「百華に喧嘩売った相手が悪いんやで。それともウチらを捕まえて自白させてみるか? まぁ、できたらの話やけどな」


「だな。それができたら誰も苦労しないっての。もう、いい。何となく話が読めたからな。まだ聞きたいことが山のようにあるが今日は帰っていいぞ」


「さっすがオッサンや。ウチとの付き合いもわかってるやん」


「え、いいんですか、風間さん。もう私には何が何だか……どうするんですか、本当に」


「お前も元百華のOBなら知ってるだろうに。俺たちは今日何も見なかった。聞かなかった。もうメンドクサイ。いいな?」


「え、はい……」


 上司が仕事を放棄した瞬間を垣間見る小森であった。

 まぁ、そんな素振りを見せるも、後々から始末書やら捜査方針の切り替えの申請書やらを書いたり、部下の見えない所で頑張りましたとさ。

 もとより、百華が【愚者のシンボル】と何かしら関わっているのは噂に聞いていた。

 であれば、この捜査も上からの圧力で早々に打ち切りになるだろうと予測できていたわけで、得られる情報もここまでだろうと思った。

 本当にろくでもない話ばかりだ。


 風間は現場から離れて行く彼女の背中を眺めて舌打ちをするぐらいしかできなかった。



 ◇



 彼女と灘は現在、例の事件が起きたオフィスの屋上に移動していた。

 白目向いた灘を無理やり起こした。彼女自身も鑑識員の変装を解いて、本来の自分の姿に戻っている。

 1年Eクラスの木船京きふねみやことして。


「若ー、これからどうしますー?」


「そやなー。何にしろ一旦、学園へ戻ってお嬢に報告やなー」


「バイト代は出そうですかい??」


「………いや、これだけの成果やったら無理やろうな。明日はあっちの世界行って、例の地下水道の調査してみようや。オッサンには言わんかったけど、本命はやっぱりあっちな気がするし。灘、案内よろしゅうな」


「えー、あんまり乗り気じゃないアタイですが若の頼みですから、おこずかいアップしてくれたらやる気出してあげてもいいんだZE☆」


「お前、ホンマうざいな……」


 灘はなんだかんだで京のことが好きなのだ。


「それよりもや、灘。お前、例の一般人と一緒にクエストしてんやろ?」


「あーお嬢のおきにとですねー。はい行ましたぜーい」


「で。どうやったん?」


「もうそれはそれは……若自身が明日にでも本人に会ってみてくださいよ。すっごい笑えますから」


「そうなんや。あのお嬢が誰かに心開くとかありえへんことやったからなー。どんな手品使ったんやろって思うわ」


「あれれ? 待ってください。その言い方だとアタイらには心開いてない??」


「まぁ、そやなー。ウチらは雇われの身やしなー」


「それは灘ちゃん超ショック!?」


 こうして2人は闇夜に姿を消した。

 百華魔法学園へ人知れず帰って行くのであった。

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