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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第14章 二人娘の成長
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勘違い騒動 その1

 「では、私は身を隠すとするよ」

 

 我が家の玄関前にて、レオナルドさんは魔法で発生させた霧の中に身を隠すとそのまま完璧に姿を消してしまった。

 姿こそ見えないものの、確かにそこにいるという状態だ。


 「足音とか気を付けてくださいよ。ごまかせるのはあくまで視覚だけですから」

 「心得た」


 俺はレオナルドさんに釘を刺した。

 ここまでするのにはレオナルドさんのある目的が関係している。


 「ただいまー」

 「おかえりー!」

 「おかえり、遅かったわね」

 「うあ」


 いつものようにミラとオズ、そしてアリスの三人が迎えてくれた。

 どうやらまだレオナルドさんの存在には気が付いていないようだ。


 「遅かったから先にご飯食べちゃったわ、テーブルの上に置いてあるけど温めなおす?」

 「いや、それぐらいなら自分でやる」


 食卓の方を見るとオズの手料理がテーブルの上に置いてあった。

 先に食べていたのか、なんだか申し訳ないな。


 俺はなし崩し的に食卓の方へ足を運んだ。

 ここで俺はとある失態を犯してしまった。

 レオナルドさんがどこにいるのかを見失ってしまったのだ。


 魔法で姿を消しているレオナルドさんを識別する手段などない。

 どうにかして再合流しなければ……


 「どうした?」


 俺の視線が泳いでいることに気づいたオズが気にかけてくる。

 

 「ん?ああ、特に何も」

 「そう。ならいいや」


 飯は普通に美味いし、なにも気になることはない。

 ただレオナルドさんがどこにいるのかが気になって仕方がないのだ。


 「ごちそうさま」


 一人の夕食を済ませ、ひとまずやることがなくなった俺は再び我が家のどこかにいるレオナルドさんを捜索することにした。

 足音に注意しろと注意したのはいいんだがまさか足音まで完璧に消してしまうとは思いもしなかった。

 まさかこんなところで幻術を……?


 「トモユキ―ッ!大変大変!!」


 ミラがかなり慌てた様子でドタドタと音を立てて二階から降りてきた。

 こんな時になんだ!?


 「どうした、そんなに慌てて」

 「今!ミラの部屋の本が何もしてないのに動いて!急に崩れ落ちて!幽霊だったらどうしよう!?」

 「はぁ!?」


 ミラとオズが動揺する一方で俺は顔から血の気が引いて行くのを感じた。

 それって間違いなく今我が家に入り込んでる人の仕業じゃ……


 「アタシに任せなさい。そんな奴追い払ってやるわ」


 オズは若干腰が引き気味になりつつも臨戦態勢に入っていた。

 よしてくれ、こんなくだらないことで最強の魔法使い二人が激突するなんて末代まで語り継がれるぐらいの恥だぞ。


 「ほら、アンタも来なさい!」

 「お、おう……」


 オズに手を引かれて俺は一緒にミラの部屋へと向かうことになった。

 言えない、この現象の犯人が娘を覗きに来た父親だなんて口が裂けても言えない。


 「幽霊!隠れてないで出てきなさい!」


 ミラの部屋の扉を開くなりオズは声高に言い放った。

 しかし当然というかなんというか、何も反応は起こらない。


 「幽霊が俺たちの目に見えるわけねえじゃん」

 「それもそっか……」


 幽霊は夏になるとその力を強めて俺たちの目に見えるようになるが今はまだ春だ。

 仮に幽霊だとしてもその姿は見えないだろう。

 まあ犯人は生きてる魔法使いなんだけれども。


 「ほ、本当に誰もいない?」


 扉の向こうからミラが恐る恐るこちらを覗いてくる。

 たぶん、誰もいない。

 もしかして、オカルト的な現象は苦手なのだろうか。


 「大丈夫だ。ここには何もいない」

 「で、でも確かにさっき急に本が倒れてきて……」

 「アレだろ、ちょっと詰め方が緩かったとか」

 「そうかなぁ?」


 ミラはまだちょっと怯えている。

 珍しいこともあるもんだ。

 真実を話したら怒るだろうなぁ。


 ミラはまた自分の部屋に戻っていった。

 これでここはひとまず収まったかな。


 「幽霊だなんて早とちりだったんだよ」

 「そうみたいね」


 オズはちょっとつまらなそうにつぶやいた。

 よし、これで穏便にやり過ご……


 「!?」


 誰かが階段を転げ落ちていった。

 どうしてこんなときに限ってこういうことになるかなぁ!?


 「気のせいじゃないわよ!ここに何かいる!」

 

 いるよ。

 レオナルドさんが……


 「出てきなさい……アタシがぶちのめしてやるから……」


 オズが若干引き気味になりつつも啖呵を切って階段を降りていく。

 階段を転げ落ちたってことはもしかすると……


 「ッ!?イヤッ!?何か変なもの踏んだ!」


 見えない何かを踏んで躓いたオズが驚きのあまりに素っ頓狂な声を上げた。

 案の定だ、レオナルドさんがすぐそこで伸びている。


 「そこか!」

 

 俺はレオナルドさんと思わしき見えない何かを抱え上げた。

 そしてそのまま玄関まで猛ダッシュし、すべてを隠滅するためにそれを全力で玄関の外へと放り捨てた。

 すまない、レオナルドさん。

 釈明はあとでさせてください。


 「ハァ……!ハァ……!」

 

 冷たい汗が俺の首筋を伝う。

 危なかった。

 レオナルドさんのフィジカルを代償に覗きをはたらいたという不名誉を被るのを防ぐことができた。


 「な、なんだったの今の……?」


 オズは呆然と俺に尋ねてきた。


 「なんだったんだろうな……」


 俺はその場をうまくごまかせそうな当たり障りのない言葉を返した。

 

 こうして我が家の幽霊騒動はひとまず収束した。

 このあともう一悶着あるんだが、それはもうちょっと後の話。 


  

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