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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第14章 二人娘の成長
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勘違い騒動 その2

 「ひどいなぁタカノ君。いきなり私を投げ捨てるなんて……」

 「いやぁ、面目ないっス」


 状態が少し落ち着いたのを見計らい、俺はクロにエサを与えるついでに外へ放り捨てたレオナルドさんとコンタクトを取った。

 事態をごまかすためとはいえ、さっきはあまりにも手荒すぎた。

 

 「できれば俺の近くから離れないようにしてほしいっス。ただでさえ姿を消してるんでわかりづらくて……」

 「迂闊だった。今度は二人に幻術を施すよ」

 

 その言い方だとさっきは使ってなかったみたいだな。

 じゃあ足音は自力で消してたのか。


 「俺はそろそろ戻りますよ。あんまり長時間外にいると怪しまれるんで」


 なんだかんだでもう十分近く外にいる。

 これ以上は何かを疑われそうだ。

 俺は踵を返して家の中へと戻った。


 「ちょっと遅かったけど何かしてたの?」

 「んー、ちょっと夜風にあたってみようかと思ってな」

 「ふーん……」


 何気ない一言でオズの警戒を振り切ることができた。

 あとはレオナルドさんが幻術を施せばなんとかなるだろう。


 「そういえば、さっきアンタが誰かと話してる声が聞こえた気がするんだけど……気のせい?」

 

 俺の口から変な呼吸が漏れた。

 おかしい、家の外の会話なんてほとんど聞こえないはずなのに……

 もしかして地獄耳か。


 「気のせいでスウウウウウ……」


 動揺するあまり呼吸が漏れっぱなしになった。

 馬鹿か、これじゃあ何かあると言ってるようなものじゃないか。


 「そっか、やっぱ気のせいよね」


 勘が鋭いのにちょろい。

 俺のなりすましとかが出たらホイホイ引っかかっちゃいそうで心配になるな。


 

 「そろそろ風呂の準備するわ」

 「火の準備したげる」


 そろそろ風呂の用意をしなければ。

 火はオズに任せよう。


 レオナルドさんが脇で目を輝かせている。

 おい、娘の風呂を覗くことにそんな情熱を注ぐな。


 俺が薪を放り込み、オズがそこに火を灯す。

 あと十数分程度で風呂が沸くだろう。

 

 待ち時間も俺は気が抜けない。

 レオナルドさんの動向を観察していないといけないのだ。

 彼は再び二階へと足を運ぼうとしている。

 

 「どうしたの?」

 「いや、なんでも」

 「やっぱり今日のアンタ変じゃない?」


 あからさますぎると怪しまれるか。

 しかし目を離すわけには……


 おい、ちょっと待て。

 なんで俺がいい歳した大人から目を離せなくなってるんだ。

 無性にアホ臭くなってきたぞ。


 

 「うー?」

 「……」


 ちょっと目を向けるとなぜかベッドを抜け出していて廊下を壁伝いに歩いていたアリスとレオナルドさんがばったりと鉢合わせしていた。

 しまった!

 レオナルドさんの幻術はオズとミラにはかかっているけどアリスにはかけていないから彼女には姿が見えているんだ。

 なんかもういろいろと誤算が重なってる。


 「嘘!?ヤバっ!?」


 アリスの姿を見たオズが慌てて階段を駆け上がっていく。

 俺はそれを上回る勢いで階段を駆け上がり、立ち呆けているレオナルドさんを脇に退かす。


 「よしよーし、寂しくてここまで来ちゃった?」

 「あうー、あー」


 オズに抱きかかえられたアリスはレオナルドさんの方を見ながら手を伸ばそうとしている。

 そんな様子を見てオズは不思議そうに首を傾げる。


 「何が見えてるのかなー?」


 アリスが見えてるものは俺にも見えている。

 オズにだけ見えていないのだ。


 「何?もしかしてアンタにもなにか見えてるの?」

 

 さっきからオズとレオナルドさんを交互に見ていたのを気づかれた。

 ヤバい、いくらちょろいとはいえ勘は相変わらず冴えている。


 「やっぱり幽霊がいるの?」


 俺たちのやり取りを聞いていたミラが部屋のドアを開けてひょっこりと顔を出してきた。

 やめろ、話をややこしくするんじゃない。


 「えっ、じゃあこの子には霊術師の素質が……?」


 ないです。


 「は、ははっ。はははははは……」


 いろいろと付き合いきれなくなってきた俺の口から乾いた笑いが込み上げてくる。

 ちょっと考える時間が欲しい。


 「先に風呂行ってきてもいいか?」

 「いいわよ。なんか今日のアンタ疲れてるみたいだし」

 

 オズが俺のことを労わってくれた。

 心遣いは嬉しいんだけど俺の心労はまだ収まりそうにない。


 「ミラも一緒に行くぞ」

 「えー」

 

 出会った頃から比べればかなりマシになったが相変わらずミラは風呂に入るのを拒もうとする。

 寝起きの悪さと並ぶ彼女の欠点だ。


 「はい連行ー」


 俺はミラを担いで階段を降りた。

 というか口で説得してもまず折れないのでこうするほかない。


 そんなこんなでミラを風呂に入れさせることに成功した。

 脇ではレオナルドさんがすごい視線をミラに送っている。


 「どうしてそこが開いてるの?」


 ミラがいつもと違う浴室に気が付いた。

 そうだよな、あからさまに不自然だよな。


 「悪い。締め忘れた」


 俺は一度浴槽から上がり、浴室とリビングを繋ぐドアを閉じた。

 閉じる間際、レオナルドさんがすごく満足したように親指を立てて去って行ったがアレは親としてどうなんだろうか。

 

 「さっきのアレ、本当に幽霊じゃないの?」

 

 ミラはついさっきの出来事をぶり返してきた。

 やっぱり幽霊とかの類は苦手なのかな。


 「心配するな。偶然崩れただけだ」

 「そっか。ならよかった」


 ふと俺はミラの身体を改めて見直してみた。

 ……間違いない。

 ちょっとウエストラインが形成されている。

 彼女は少しずつお子様体型を脱しつつあるのだ。



 それにしても、今日はものすごく疲れたな。

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