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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第14章 二人娘の成長
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悩める二人の父

 とある日の仕事帰り、俺はレオナルドさんに近況報告をするために図書館を訪れていた。


 「ミラの成長期……もうそんなときが来たのか」

 「いやぁ、これからどう向き合っていけばいいのかわからなくて」


 正直な話、これからどんな風にミラと接していいのかがわからないのだ。

 いろいろと成長期の娘に振り回されて苦労している人の話を聞いたことがある。

 それに自分が対応していけるかが不安で仕方がない。


 「この頃、ミラになにか変化はあったのかな?」


 レオナルドさんは俺に疑問を投げた。

 最近の変わったところか。

 そうだなぁ……


 「ちょっと、ほんのちょっとなんですけどね。体つきが女の子のそれになってきてまして」


 この前一緒に風呂に入ったときのことだ。

 俺は見てしまったのだ。

 ミラの身体が寸胴ではなく、少しウエストが締まった女性的な体型に変わりつつあったのを。


 「なんだって……」


 狼狽している。

 あのレオナルドさんが狼狽しているぞ。

 

 「男の俺がいうとかなりアレなんですけれども……その内胸やお尻も大きくなってきますよ」

 「ほう……」


 正直かなり気持ち悪い話をしているという自覚はある。

 だが話さずにはいられないのだ。


 二次性徴はどんな人間にも訪れるものだが、女性は特に身体的な変化が多い。

 もっとも、男の変化が少ないのかと言えばそういうわけでもないのだが。


 「ミラの体つきはどんなふうに変化していくのだろう」

 「お母さん譲りなら手足がすらっと伸びた美人になりますよ」


 ミラの髪や目の色はレオナルドさん譲りだがこれからどういう体型になっていくのかはまだわからない。

 ヴィヴィアンさんに似れば手足がすらりと伸びた所謂『モデル体型』になるはずだ。

 

 「私に似たら……いや、やめよう」


 レオナルドさんは口を濁らせた。

 きっとその後ろには『痩せた身体になる』と続くはずだったのだろう。

 これはあくまで推測だが、レオナルドさんが痩せているのは体質とか以前に『栄養が足りてないから』だと思う。


 「人間の身体って不思議なものですよね」

 「うん。今でもわからないことに満ち溢れている」


 俺が元居た世界でも人体というのはまだまだ未知のことだらけだ。

 きっとこれから先もそのすべてが解き明かされることはないと言ってもいいだろう。


 それはそれとして、俺は今気になっていることがある。

 レオナルドさんに俗っぽいことを考えたりするのだろうか。


 「レオナルドさん、前々から気になってたことがあるんスけど」

 「なにかな?」

 「レオナルドさんって、女性の好みとかあるんですか?」


 俺からの質問にレオナルドさんは真顔で首を傾げた。

 発言の意図が理解できないとでも言いたいかのようだ。


 「いや、あの、深い意味はないんですけど。なんとなく気になったもんですから」

 「女性の好みかぁ……」

 

 俺たち妻帯者なのになんでこんな話をしてるんだろう。

 

 「私の好みの女性は、お淑やかで、思慮深い行動ができる人かな」

 

 なるほど、そう来たか。

 どうやらレオナルドさん的には外見よりも佇まいの方が評価点になるらしい。


 「俺は髪が長くて胸が大きくてちょっとワガママだけど、なんだかんだで頼りになる子が好きです」

 「ふふっ、クラリスちゃんそのものじゃないか」


 真正面から指摘されて顔がみるみるうちに熱くなる。

 まさに仰る通りでございます。

 というより彼女の影響で俺の好みが上書きされたといっても過言じゃない。

 

 「タカノ君は本当にクラリスちゃんのことが好きなんだね」

 「もちろんです。俺が世界で一番オズを愛してますから」


 俺が一番オズのことを愛している。

 これだけははっきりと自負できる。


 「そういうレオナルドさんこそ、ヴィヴィアンさんのこと愛してるって言えますか?」

 「当然。自分の妻を愛していないという男がいると思うかい?」


 なんか安心した。

 レオナルドさんってこちらから聞かなければ全然ヴィヴィアンさんの話をしないから殺伐とした関係なのかと思ってたけどそんなことはなかったみたいだ。


 「実はね、ヴィヴィアンは定期的にこの街を訪れているんだ」


 レオナルドさんの口からまさかのぶっちゃけ話を聞かされた。

 ヴィヴィアンさん、ギルドに何度も訪れてたのか。


 「普段キャメロット王国にいる彼女がどうしてここにやって来るかわかるかい?」

 「さぁ、わかんないっスね」

 「ミラのことが心配だから直接顔を見に来るんだ。自分の顔を見せるとあの子が嫌がるだろうからって物陰に隠れてこっそり観察してるみたいだけどね」


 めちゃくちゃ健気だな。

 こちらからは手紙で定期的に近況報告をしてるけどそれでも自分の目で確かめたいっていうのがあるんだろうな。

 オズの出産前に訪れてくれた時から思ってたけど実はめっちゃ温かい人だ。

 

 「もし彼女を見かけることがあってもそっとしてやってくれないかな」

 「まあ、そんな話聞いたらそうするしかないっスよ」


 ヴィヴィアンさんの意外な話を聞くことができた。

 このことはミラには内緒にしておこう。


 「じゃあ、そろそろ失礼しますね」

 

 レオナルドさんの珍しい話を聞いていたら結構な時間が経っていた。

 きっとオズたちが晩御飯を用意して帰りを待っているはずだ。

 そろそろ帰らねば。


 「タカノ君」


 帰り際、レオナルドさんが俺の肩に手を置いた。

 なにか言いたいことでもあるのだろうか。


 などと考えていた矢先、彼の口からまさかまさかの言葉が飛び出した。



 「私も同行させてくれ」

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