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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第13章 友情の光
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炎を吐くドラゴン

 信じられん……

 まさか人間とドラゴンが一体化してしまうなんて……


 「どうして、どうして校長先生を消してしまおうなんて考えたんですか!?」

 「答える義理などない!障害になるものはすべて消す!」


 犯行動機を聞き出そうとしたユキノちゃんからの問いを一方的に拒否し、ドラゴンは前足を振り上げた。

 どうやら対話に応じるつもりはないらしい。

 俺たちは戦うしかないようだ。


 「俺が前で戦う、お前たちは下がっていろ」


 エリックさんは大剣を担ぎ、再びドラゴンと正面から睨みあった。

 確かに俺たちが下手に前に出るよりは彼に前で戦ってもらう方が安全かつ確実だろう。

 

 「俺たちは後方へ引きましょう。ユキノちゃんは俺が護衛します」

 「ミラ、後ろからエリック君を支援するんだ」

 「うん!」


 俺たちは安全圏に退避し、ミラとレオナルドさんは前で戦うエリックさんを支援する態勢に入った。

 きっとあのドラゴンはユキノちゃんを狙うはずだ。

 咄嗟に盾になれるよう、俺はユキノちゃんを覆い隠すように前に出た。


 

 「貴様!そこをどけ!」

 「断る。貴様が人間に仇なすドラゴンである限り」

 

 進撃しようとするドラゴンの巨大な腕をエリックさんは軽々と払いのけ、逆に剣の一撃で押し返す。

 相手がドラゴンである限り、彼は圧倒的な力を発揮できる。


 「スウウウウウウウウウウウ……」


 エリックさんに押されていたドラゴンが突如として息を吸い込み始めた。

 すさまじい肺活量で周囲の空気を取り込み、その胸を一回りも二回りも大きく膨らませる。


 その瞬間、俺の脳裏に昨夜のオズの姿が鮮明に過った。

 彼女が全身に大火傷を負った原因、それが次に繰り出される行動であるとするならば……


 ドラゴンの口元が真っ赤な光に覆われる。

 間違いない、あれは『火炎ブレス』の構えだ!


 「エリックさん!すぐに懐に飛び込んで!」

 「ッ!?」


 俺はすぐにエリックさんに声を送った。

 剣幕から危機感を感じ取ったか、エリックさんは素早いスライディングでドラゴンの腹の下へと入り込む。


 本来の標的を見失ったドラゴンは息を溜めこんだままこちらへと首を向けた。

 もしかして本来の標的はこっちだったか!?


 「させん!」


 懐に潜り込んでいたエリックさんがすかさず跳躍し、大剣を振り回してドラゴンの喉元を斬りつけた。


 「ッ!?グオオオオオオオン!!」


 呼吸を乱され、ドラゴンはブレスを暴発させて周囲に火炎を撒き散らす。

 文字通りの集中砲火を受けることは免れたが周囲一帯が一瞬で焦土へと変わり果ててしまった。

 火炎の熱で周囲一帯に陽炎が立ち上り、視界のドラゴンの姿が揺らぐ。

 

 「熱い……」


 直接焼かれずには済んだものの炎の熱は間接的に俺たちの体力を削いでくる。

 まだ春だというのに汗が止まらない。


 「……!」


 さっきからエリックさんの様子がおかしい。

 急に足取りがおぼつかなくなってしまった。

 ついには片膝をつき、その場から動かなくなってしまった。


 「あの鎧の人の意識がなくなりかけてます!」


 ユキノちゃんからのメッセージで俺はエリックさんに起こった異変の正体に気づいた。

 この熱気にやられて熱中症を起こしたんだ。


 俺たち人間は急激な気温の上昇に弱い。

 ましてや全身を鎧で覆っているエリックさんはなおさらこの脅威に晒されて当然だ。

 ドラゴンからの直接的な攻撃を防ぐことができても間接的な攻撃までは防ぐことができなかったらしい。


 「面白い!その身が灰になるまで焦がし続けてやろうぞ!」


 ドラゴンはエリックさんの身体を腕で押さえつけ、火炎を浴びせ続けた。

 鎧の加護のおかげで直接的なダメージはほぼないにしろ、炎に熱され続ければ流石に人間の体力が持たない。


 「私が注意を引く。タカノ君はすぐにエリック君を回収してくれ!」

 「ユキノのことはミラが見るからトモユキはエリック様をお願い!」


 レオナルドさんは選定の剣を抜き放ち、俺に提案を持ち掛けた。

 誰かが時間を稼いでくれるなら言われずともそうするつもりだ。

 俺はすかさずドラゴンの懐で膝をつくエリックさんの元へと全力で足を飛ばした。


 「グオッ!?」


 俺の背中を凍てつくような冷気が走り、砕けた氷の礫がドラゴンの周囲に飛散した。

 この冷気はレオナルドさんが放ったものだろう。


 冷気によって熱気が中和され、上昇した気温が元通りになるがそれと同時に発生した水蒸気によって周囲一帯は霧に包まれた。

 ちょうどいい、霧に隠れて一気にエリックさんを回収してしまおう。


 「エリックさん、気をしっかり!」

 「ぅ……ぁぁ……」


 俺はエリックさんの状態を抱き起しながら声をかけた。

 ヤバイ、呼吸はしてるけど返事がない。

 早急に水分を補給させて休ませないと……


 俺はエリックさんを背負い、霧に紛れて元来た道を一気に駆け抜けた。

 鎧込みの重さは相当なものだったが火事場の馬鹿力というものだろうか、あっさりと運搬することができた。


 「戻りました!」

 「ありがとう。ずいぶんと早かったね」

 

 俺はレオナルドさんたちと再び合流し、エリックさんの兜を脱がせた。

 兜の奥に隠れていたその素顔はものすごい量の汗にまみれている、それに目が虚ろで焦点が合っていない。

 予想通り、これは熱中症だ。

 早急に手を打たなければ。


 「うわっ!すごい汗!」

 「ミラ、氷を食わせてやってくれ。身体を冷やして水分を摂らせるんだ」

 

 エリックさんの容体を見て驚くミラに俺は指示を出した。

 ミラはすぐに掌の上に彼女の手に収まる程度の大きさの氷を生成し、それをエリックさんの口に含ませた。


 「食べたよ!」

 「よし!しばらく日の当たらない場所で安静にして休ませてやってくれ!」


 ミラの報告を受けて安心した。

 どうやらまだエリックさんの意識は残っているようだ。

 これなら回復の見込みはある。


 「形勢が不利だ。ここは撤退しよう」


 レオナルドさんは選定の剣を振り抜き、ドラゴンに対して幻術をかけた。

 彼の使う幻術は視覚、聴覚だけじゃなく触覚や嗅覚にも作用する強力な魔法だ。


 「どこへ消えた!おのれ小癪な真似をォ!」


 ドラゴンは目の前の幻に対して攻撃を繰り返している。

 奴の目に俺たちの姿は映っていない。

 今のうちに速やかに撤退しなければ。


 「行こう、今のうちだ」

 

 レオナルドさんは俺たちを先導してその場を離脱するように指示をした。

 ミラはユキノちゃんにくっつき、俺はエリックさんを背負って足早にその場を立ち去った。


 炎を吐く影のドラゴン、恐るべき強敵だ。

 対ドラゴンに特化した装備を身に着けたエリックさんが真っ向から立ち向かっても敵わなかった相手だ。

 オズ、グレイさん、アレンが勝てなかったのも納得ができてしまう。


 あんな奴を相手にして勝機はあるのか……?

 

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