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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第13章 友情の光
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とある雨の日に

 その日は雨が降っていた。

 雨が降るといろいろと大変だがその中でも特に大変なことがある。

 それが……


 「おい起きろミラ、もう七時半だぞ!」


 ミラを起こすことだ。

 七時に一度起こしに行って目を開けさせたのだがいつまでたっても朝ごはんを食べに来ないと思ったら二度寝をかまされていた。


 「うぇぇ……まだ外は薄暗いよ……?」

 「今日は雨降ってるから日が出ないんだよ。時計を見ろ時計を」


 ミラは寝ぼけ眼を擦ると時計をぼんやりと眺めた。

 ダメだ、マジで寝ぼけてるせいかまったく身体を動かす気配がない。


 「ほらベッドから出ろ。支度しねえと学校遅れるぞ」

 「うぅん……」

 「あー!しょうがねえなぁ!」


 ミラの寝起きの悪さは雨が降るとさらに悪化する。

 俺はベッドの上で上半身だけ起こして微動だにしないミラを抱え上げ、顔を洗って歯を磨かせ、寝ぐせを治して制服に着替えさせた。

 こうでもしないと間違いなく遅刻する。

 

 「忘れ物はないな?雨降ってるから傘を忘れるな。ぬかるみに足を取られて転んだりするなよ。よし行ってらっしゃい!」

 「行ってきまーす!」


 ようやく頭が回り始めたミラをなんとか八時前に送り出し、朝の一大行事は終わった。


 「ハァ……ハァ……」

 「アンタも朝から大変ねぇ……」


 いつも以上のハードワークに息を切らしていた俺に対してオズが労いの言葉をかけてくれた。

 こんなことはいつも彼女がアリスに対してかける労力の足元にも及ばない。

 

 「どうってことねえよこれぐらい。じゃあ俺も行ってくる」

 「行ってらっしゃい。クロに落とされてケガしないようにね」

 「心配すんな」


 オズに送り出され、俺は家を出た。

 雨が降るたびに『こんな日ぐらい仕事が休みになればいいのになぁ』と思わされて憂鬱になるが我慢だ。


 ドラゴンに乗って仕事をする関係で傘をさすことができない俺は代わりにフード付きの上着を羽織る。

 ビニールに比べれば撥水性は低いが雨具としては及第点だ。


 「行くぞクロ!」

 「ガウッ!」


 クロの背に乗り、号令をかけるとクロは大きく翼を広げて羽ばたかせた。

 身体にこびりついた雨水を勢いよく弾き飛ばし、クロの身体は宙へと浮き上がる。

 そして動き出し、ギルドまでひとっ飛びだ。


 「おはようございまーす!」

 「ようタカノ、早速だが出動だ」


 朝の挨拶をした矢先にグレイさんから出動の報せが入った。

 今回はどんな案件だ。


 「メルクーア魔法学院の様子がおかしいらしい。俺たちで調査に行くぞ」

 

 すでにアレンとアルが出動の用意を整えている。

 アレンは背中にハンマーをマウントして迎撃の準備まで万全だ。

 よく見るとグレイさんも大剣を装備している。


 「通報者は?」

 「この嬢ちゃんだ、『人の心が読み取れない』とかわけわかんねえこと言ってんだ」

 「あっ、ミラちゃんのところのおじさん!」

 

 なるほど、通報者はユキノちゃんか。

 そりゃあグレイさんはユキノちゃんの能力を知らないからわけわかんないよなぁ。


 「なんだお前等、顔見知りだったのか」

 「まあ、ミラの友達なんで」

 「それなら話は早い。俺たちは先に行くからその子のことを頼むぞ」


 俺にそう伝えるとグレイさんはアレンとアルを引き連れて先に出動していった。

 まずは話を聞いてみるか。


 「人の心が読み取れないって?」

 「正確には『まったく読み取れない』わけじゃなくて、『同じ感情しか読み取れない』んです」


 どんな感情を読み取ったのかは知らないが、大勢の人間が寸分の違いもなく同じことを考えているのは気持ちが悪いな。

 これは何かあったな。


 「ミラは?」

 「図書館に向かいました。レオナルド様を呼んでくるって」


 賢明な判断だ。

 ここにオズが加われば敵なしなんだがさすがに手を煩わせたくはない。


 「悪いが俺たちを案内してくれないか。学校のことは疎くてな」

 「はい」

 「よし行くぞ。ちょっと濡れるけど我慢してくれよ」


 ユキノちゃんをクロに乗せ、俺は再びクロを飛ばした。

 行先はメルクーア魔法学院だ。


 「おーーーい!」


 学校の校門前から俺たちに声をかける人物がいた。

 ミラだ、その隣にはレオナルドさんもいる。


 俺は二人の側にクロを降ろした。

 羽ばたきの衝撃で周囲の水たまりが一斉に吹き飛ぶがレオナルドさんが張った防御陣によって二人が濡れるのは免れた。


 「グレイさんたちは?」

 「先に向かったよ。合流する前にやっておきたいことがある」


 そういうとレオナルドさんは杖で地面を軽く叩いた。

 青色の魔法陣が展開され、俺たちを囲んで照らし出す。


 「退魔の護りを我らに『クリスタル・アーク』」


 レオナルドさんの詠唱により、魔法が発動した。

 魔法陣はよりいっそう強く輝き、そしてそのまま消滅していく。

 レオナルドさんが詠唱をして発動をするとは、どんな魔法なんだろう。


 「何をしたんですか?」

 「対魔法防御の結界を発動させた。ここは魔法学院、どんな魔法が飛んでくるかわからないからね」


 なるほど、やっぱりこの人がいてよかった。

 これなら俺みたいな普通の人間でも防衛ぐらいはできる。


 「さあ行こうか。先に行った君の仲間たちのことも心配だからね」

 「ほら、早く早く」


 マーリン親子に先導され、俺たちは学校へと足を踏み入れた。

 まさかここに事件の捜査で訪れることになるとは……

 

 「クロは入れないからここで待っててくれ」

 「ガオン!」


 クロを玄関前に待機させ、俺たちは捜査を開始した。

 果たして何が待ち受けているというのだろうか。

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