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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第13章 友情の光
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力との向き合い方

今回は三人称視点の話です。

 ある日の授業後、ミラとユキノは二人で図書館へと赴いていた。

 目的は一つ、レオナルドに会うためだ。


 「ミラちゃんのお父さんってあのレオナルド様なんだよね……?」

 「うん、そうだよ」


 恐る恐る確認するユキノに対してミラは当然のように言葉を返した。


 「ほら着いた。ここがお父さんのいる三階!」


 ミラが先導し、二人は図書館の三階へと足を運んだ。


 「あぁ……本当にレオナルド様だ……」 

 

 机に山ほどの書物を積み上げ、レオナルドは研究に勤しんでいる。

 ミラにとっては見慣れた姿だがそれを初めて目にしたユキノは固まっていた。


 「お父さん!」

 「やあ、今日は学校帰りにここで勉強かな?」


 レオナルドはミラの声に反応して手を止め、声のする方へと振り向いた。

 それと同時にその一歩奥からこちらを見ている少女の存在にも気づく。


 「あの子はミラのお友達?」

 

 レオナルドはユキノの方を一瞥してミラに尋ねた。


 「そうだよ。ほら、おいで」


 ミラに呼び出され、ユキノはレオナルドの前まで足を進める。

 緊張からその足は小刻みに震えていた。


 「レ、レオナルド様!は、初めまして。ユキノ・ルーチェです!」

 「こちらこそ初めまして、私はマーリン家第十三代当主、レオナルド・マーリン」


 初対面の両者は挨拶を交わした。

 緊張しているユキオンに対し、レオナルドはいつもの穏やかな表情を崩さない。


 「そんなに緊張することはないよ。肩の力を抜くといい」

 「は、はい……」


 レオナルドに諭され、ユキノは脱力して上がりきった肩を落とした。


 「お父さん、ユキノの話を聞いてくれる?」

 「いいとも。魔法のことでも自分の悩みでもなんでも話してみるといい」


 レオナルドと向かい合うようにミラとユキノは椅子に腰かけ、話を始めた。

 今回ここまで足を運んだのは、とあることに関してレオナルドに助力を求めるためだ。


 「なるほど、ユキノちゃんは無意識に人の心を読み取る力を持っているんだね」

 「はい、今もレオナルド様の考えていることが読み取れます」

 「私の考えていること、理解できるかい?」

 「いえ、全然」

 「ははっ。そうだろうね」


 やり取りの中でレオナルドは冗談めかして笑った。

 彼は魔法使いでもあり、研究者でもある。

 研究者としての彼の思想は彼以外には理解の及ぶものではない。


 「それでねお父さん。ユキノのこの力を止めることはできないかな?」

 「力を止める?どうして?」

 「昔から力が制御できなくて……いろんな心が全部私の頭の中に入り込んできて、それが嫌になっちゃって……」

 「ふむ……それは大変そうだね」


 ユキノの悩みに対してレオナルドは真摯に聞き入っていた。

 

 「で、お父さん。この力を止める方法はないのかな?」

 「ちょっと待ってて。今からこの力を見る」


 レオナルドは左手をかざして小さな魔法陣を展開した。 

 陣を介し、ユキノの力を読み取る。


 「どうだった?」

 「これは……私の力で解くことはできない」

 

 レオナルドは静かに首を横に振った。

 

 「そんな……」

 「じゃあ私、ずっとこのままなの……?」

 「ごめんね。私も決して万能ではないんだ」


 ミラとユキノはがっくりと肩を落とした。

 それに対し、レオナルドは二人の肩にそっと手を置く。


 「まあそんなに悲観することはない。ユキノちゃんは若いんだ。自分の力と向き合う時間はまだ十分にある」

 「力と……向き合う?」

 「そう」

 

 レオナルドはユキノに視線を合わせ、考えを説いた。


 「心っていうのはどんな生き物にも備わっている。たとえそれが言葉を話すことができなくてもね」


 そういうとレオナルドは一呼吸置き、次の言葉を繰り出した。


 「実はね。私にもユキノちゃんに似た力があるんだ」

 「本当ですか?」

 「お父さんそんな力があったの!?」

 「あるよ。今まで内緒にしてたんだけどね」


 レオナルドからのカミングアウトに二人は目を丸くした。

 呆然とする二人を見てレオナルドはクスクスと笑う。


 「ちなみにどんな力なんですか?」

 「軽い予知能力だよ。一分程度なら先の未来を見ることができる」

 「じゃあミラたちが一分後に何をしてるかわかる?」

 「私と話を続けているよ。でもこれは決まったことじゃない。未来は簡単に変わってしまうからね」


 話をする中でユキノはレオナルドに対して親近感を覚えた。

 自分のように特殊な力を持ち、それと向き合いながら生きている。

 その事実がもしかしたら、自分にも活路を見出せるのではないかという希望を抱かせた。


 「生まれつき特別な力を持っているのは悪いことじゃない。その力をいい方向に役立てる方法がきっとあるはずだから、それを探してみるといい」

 「わかりました」

 「ミラも一緒に考えてあげるね」

 「えへへ、ありがとう」


 レオナルドは力との向き合い方を示した。

 それを受け、ユキノの中にこれまで後ろ向きに考えていた自分の力について少しだけ考え方を見直してみようという意識が芽吹いた。

 

 「話したいことはこれで終わりかな?せっかく会いに来てくれたんだし、私に他に聞いてみたいことがあれば遠慮なく聞いてほしい」

 「そ、それじゃあ……」

 

 そう前置きしてユキノは一瞬ミラの方に視線を移した。


 「ミラちゃんのこと、教えてください」

 「面白いことを聞くね。いいよ、ミラの昔のことを聞かせてあげる」

 「恥ずかしいことは教えちゃダメだからね?」


 相談を通じて打ち解けた三人は夜遅くまで食事も忘れて語らった。

 こうして、魔法使いの間にまた新たな交友関係が築き上げられたのであった。


 そして、ユキノの力との向き合い方の変化が彼女に大きな転機をもたらすことになるのはまだ先の話である。

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