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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第12章 ドラゴンと共に
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レオネルに会いに

 試合観戦後、興奮冷めやらぬままメリルはレオネルに会いに行くと言って外へ飛び出して行ってしまった。

 そういえばレオネルって戦ってるとき以外は何やってるんだろう。

 牢獄の中にいるのだろうか。


 「ようタカノ。休日に試合観戦か」

 

 観客席の出入り口で警備をしていたアレンに声をかけられた。

 俺たちが入ってきたときはいなかったよな。

 後から警備に来たんだろうか。


 「アレンか、どうしてレオネルがここにいるんだ?」

 「犯罪者とはいえ、格闘家としてはこの上ない逸材だとかいってよ。いろいろと制約付けた上で試合するときだけ解放するってマスターが決めたんだとよ」


 要するに飼い殺しにするってことだよな。

 マスターもかなりえげつないことするな。

 レオネルは試合さえできればいいというように考えていたのだろう。


 「じゃあ、試合が終わった今は……」

 「牢獄の中だろうな。犯罪者とはいえ同情するわ」


 気が狂いそうだ。

 いや、レオネルはすでに狂ってるか。


 「でも、今後のここの盛り上がり方次第では牢獄以外でも過ごせるようになるのかもしれんな。レオネルは戦いに飢えなければ案外まともな奴かもしれんし」


 戦闘狂としてのレオネルは頭のネジがぶっ飛んでいるが格闘家としてのレオネルはストイックでカッコよかった。

 どっちが本来の性格なのかはわからないが、もし後者がそれだとするなら牢獄以外で過ごせる日が来てもおかしくはないだろう。


 「なあアレン、レオネルと面会することはできるか?どうしても会わせたい奴がいる」

 「奴が収監されている牢獄の場所は教えてやる。後はお前が交渉しろ」


 外に飛び出していったメリルをオズに連れ戻してもらい、俺はメリルと共にレオネルが収監されている牢獄へと足を運んだ。

 意外と闘技場から近いんだな。


 「ここは牢獄だろう?あの格闘家がここにいるとは思えんのだが」

 「レオネルは過去に凶悪犯罪を犯したからな。普段はここに収監されてるんだよ」


 牢獄前の看守二人組に声をかけ、事情を説明した。


 「というわけなんです。レオネルと面会することはできませんか?」

 「それは認められない。奴は過去に面会から脱獄したことがあるからな」


 看守からはきっぱりと断られてしまった。

 スノウ・ベル事件だな。

 あれ以来レオネルの管理にはより細心の注意を払っているわけがよく分かった。


 「じゃあ『対戦の交渉』なら認められるか?」

 

 俺からの持ちかけに看守たちは顔を見合わせた。

 普段は牢獄の中とはいえレオネルは格闘家、対戦を持ち掛けられれば一度は話を通してくれるはずだ。


 「対戦交渉なら特別に一度許可しよう。ただし、要件は手短に済ませるように」

 

 こうして別の看守に案内され、俺とメリルはレオネルのところへと足を運んだ。


 「コイツがさっき闘技場で戦っていた獣人なのか……」


 メリルは呆然とした様子で足を止めた。

 やたらと広く冷たい檻の中で両腕を鎖でつながれ、宙吊りにされたレオネルの姿が俺たちの目の前にあった。

 

 「なんだお前らは?」

 

 レオネルは宙吊りにされたまま俺たちを双眸に捉えた。

 邪魔者を排除せんと言わんばかりの眼光に睨まれて思わず足がすくみそうになる。

 

 「挑戦を申し込みたい」


 折れそうになる膝を無理やり伸ばし、俺はレオネルに話を持ち掛けた。

 それを受けてほんのわずかだがレオネルの目の色が変わる。


 「挑戦だと?」

 「ああ。だが戦うのは俺じゃない、その隣にいるこの子だ」


 俺はそう言ってメリルの背中を軽く押した。

 それと同時に彼女が一歩前へ出てレオネルと目を合わせる。


 「先ほどの闘技、見事だった。地上にあれほどの戦士がいるとは思わなかった」

 「面と向かって褒められるのは久々だな。悪くない」


 レオネルはまんざらでもないようだ。

 そりゃあここ数年ずっと牢獄の中にいれば褒められることなんてないだろうな。


 「そこでだ。私は其方と手合わせ願いたい」

 「レオネル、ここにいるメリルの姿を見て何か思うことはないか?」

 「あ?どこかで見たことあるようなナリしてやがるな……」


 俺に問われてレオネルは首を傾げた。

 

 「何を隠そう、この子はドラゴンの獣人だ。今まで見たことがあるか?」


 メリルの手首足首を覆う青い鱗、側頭部から伸びる二本の角、背中から生えた翼、腰から伸びる尻尾を見てそれを理解したレオネルは大きく目を見開いた。

 

 「なるほど。そう考えれば俄然興味が湧くというものだ」

 「どうだ。初めて見る未知の相手に挑戦してみたくはないか」


 俺が売り込むより先にメリルが口を開いてレオネルを煽った。

 それを受けたレオネルの目が戦士としての輝きに満ちはじめる。


 「いいだろう。お前の挑戦、このレオネル・キングハートが受けてやろう!」


 レオネルはあっさりと挑戦を受け入れた。

 あれ、意外と話が分かる奴じゃないか。


 「明日の午前十時、闘技場に来るがいい。リングの上でお前を待つ。おい!すぐに対戦の手配をしろォ!」


 レオネルは吠えるように叫び、看守たちを突き動かした。

 どうやら看守たちはマネージャーのような役割も兼ねているらしい。


 「感謝する」


 メリルはまっすぐレオネルを見据えて感謝の言葉を述べた。


 「楽しみにしているぞドラゴンの娘!戦いの時をォ!」


 レオネルは早くもやる気満々だ。

 きっと両者ともに納得のいく試合をしてくれるはずだ。


 そして、それがメリルにとってこの冬最後の思い出になるだろう。

 


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