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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第12章 ドラゴンと共に
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暴走する竜と騎士

今回はタカノ視点の話です。

 「で、休暇が終わったらいきなりドラゴンと一緒に仕事することになったってか」

 「そういうことよ。最初はマスターが仕事用のドラゴンを用意してくれてたんだけど、うちのクロに拒否られちまってよ」

 

 仕事の休憩時間、俺はアレンたちと久々に談笑していた。

 俺の役職が変わってからすっかり顔を合わせなくなっていたものだから新鮮さを思い出す。


 「オッサンもモテモテだよなぁ。ペットからもべったりされて家に帰れば嫁さんと子供がいるんだろ?」

 「いやあ、ホント恵まれてるわ」


 アルの一言で俺はオズからもクロからも愛されていることを再確認した。

 出会ってからのことを思い返すとホロリとしそうになる。


 「残念だがいつまでも余韻に浸ってる場合じゃなさそうだぞ」

 

 アレンは俺……じゃなくてクロの方を見ながら神妙な顔つきでそう言った。

 つられてクロを見ると牙を覗かせ、明後日の方向を見つめていた。


 「行くぞクロ!」

 「ガオンッ!!」


 クロに飛び乗り、俺は何かがあると思わしき場所に急行した。

 翼を広げたクロの身体は一瞬で宙に浮きあがり、俺の足よりもはるかに速く翔けていく。


 「おいオッサン、急にどこ行くんだよ!」


 クロに乗って移動する俺に建物の屋根の上を飛び移りながら並走してきたアルが声をかけてきた。

 以前敵対した兄貴といい弟たちといい、この猫の獣人一家足速すぎだろ。


 「着くまでわからん!一緒についてきてくれ!」

 「おうよ!」


 クロに導かれるままに進み続けること数分。

 俺はなんだか見覚えのある場所へとやって来た。


 「ハァ……ハァ……どこだよここ……」


 アルは息を切らしながら確認を取ってきた。

 マジであのまま並走してきたのか。


 「地下闘技場だ。ちょっと前に壊滅させたはずなんだが……」

 「あー、ちょっと前に牛が話してたやつだな」


 どうやらアルも話自体は聞いていたようだ。

 しかしどうしてクロはここに俺たちを連れてきたのだろう。

 まさかこっそり残党が復活してるとか……?


 「中の様子を見てくる。アルはクロと一緒に外を見張っててくれ」

 

 そう言い残してアルとクロを待機させ、俺は闘技場の内部へと足を踏み入れた。

 階段を降りていくにつれ、奥の方から何か音が聞こえてくる。

 何かと何かがぶつかり合うような激しい音だ。

 ここでまた闘技が行われているのだろうか。


 落ち着け、まずは静かに様子を窺うんだ。

 そう自分に言い聞かせて俺は物陰から闘技場の様子を覗き見た。


 「……ッ!?」


 目を疑わずにはいられなかった。

 俺の目に映ったのはメリルとエリックさんが全力でぶつかり合っている光景だった。

 

 俺が衝撃を受けたのはただ二人が戦っているからというだけではない。

 両者が見たこともない姿へと変貌していたのだ。

 メリルは頬の下に赤い紋様が浮かび上がっているし、闘争本能に飲み込まれて完全に理性を失ってしまっていた。

 エリックさんは剣を抜き放ち、その刀身には青白い光を走らせている。


 「ウオアアアアアアッ!!」

 「……ッ!!」


 本能のままに少女とは思えないほどのすさまじい雄叫びを上げて猛撃するメリルに対し、エリックさんは冷静に攻撃を受け流しながら剣で反撃を加えていく。

 兜に覆われていて表情はまったく見えないがきっと涼しい顔をしていることだろう。


 「ウウウウウウ……!」


 左腕を切りつけられたメリルは唸り声をあげてエリックさんを睨みつけた。

 傷は一瞬のうちに塞がり、元通りの状態へと再生を果たす。

 なんて回復力だ、あれもドラゴンの獣人の力なのか。

 

 鉄壁の守りと一撃必殺の剣を武器にするエリックさんと常人離れした体術と驚異的な再生力で傷を修復していくメリルの戦い、その凄絶な光景を前に俺は言葉が出なかった。

 俺にはあの二人を止められないのを確信した。

 だとすれば俺ができることは一つ『止められる人物に助力を求めること』だ。


 俺は気配を悟られないように足音を殺し、その場を離脱した。


 「アル!増援だ!機動隊をありったけここに呼び寄せろ!」

 「ニャッ!?何があったんだ!?」

 「説明は後だ!今は応援を呼べ!この付近を封鎖させるんだ!」

 「お、おう!」


 アルは元来た道を飛ぶように引き返していった。

 それを見た俺はクロを飛ばし、反対側の方向へと飛んだ。


 方や一国を護る騎士の実力者、方や並みの人々を遥かに凌駕する力を持ったドラゴンの獣人だ。

 俺たちが束になっても止められないだろう。

 そうなれば俺が誰に助力を求めるべきかははっきりしている、魔法使いだ。


 俺はまず家へと戻った。

 今ならまだオズが家にいるはずだ。


 「オズ、大変だ!」

 「ちょっとアンタ!仕事はどうしたの!?」


 運よく家にいてくれたオズは俺の顔を見て驚き、その直後に事態を察したのか表情を切り替えた。


 「大変なことになった。力を貸してくれ」

 「わざわざアンタがアタシに助けを求めに来るってことは相当なことよね……いいわ、協力したげる」


 オズはすんなりと協力を承諾してくれた。

 流石は俺の最大の理解者だ。


 「助かる。図書館に行ってレオナルドさんにも協力を頼んでくれ。後で俺も合流する」

 「図書館に行けばいいのね。すぐに行くから!」


 オズは階段を駆け上がって二階へと昇って行った。

 恐らく礼装に衣装替えするのだろう。


 「こうしちゃいられない。俺たちもすぐに戻るぞ」


 クロに水を飲ませ、一息つかせてから俺はすぐにギルドへと戻るようにクロを飛ばした。

 今ならミラも授業を終えているはずだ、あの子を探そう。


 ミラはまだ家には帰ってきていなかった。

 いるとしたらどこだ。

 書店か、それともまだ学校にいるか、はたまた図書館か。

 見つからなければオズに連れてきてもらおう。


 大変なことになった。

 メリルとエリックさんが本気でぶつかり合っている。

 どちらも常人場慣れした能力をもった存在だ、今は地下闘技場に収まってはいるもののあのままヒートアップすれば外へと飛び出して街を壊しかねない。

 そうなる前に二人を止めなければ……

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