王国からの来訪者
「行ってきまーす」
「おう、今日も頑張れよ!」
学校へ行くミラを送り出した。
さあ、俺も出勤だ。
「じゃあ、俺も行ってくる」
「行ってらっしゃい」
「達者でな」
ミラを送り出して間もなくして俺も家を出た。
「行くぞクロ」
「ガウッ!」
クロの背に乗り、俺はギルドへと向かった。
今日はどんな業務をこなすのだろう。
「さて。あれから君にやってもらえる仕事を考えたんだがね、郊外の巡回警備なんてどうだろう」
マスターから言い渡された新たな業務、それはギルドの外の巡回だった。
そういえばギルドの外を警備しに行ったことはなかった。
確かに人の足より格段に機動力に優れるドラゴンを使えばギルドの外を一日で一周してしまうこともできるだろうな。
「わかりました。やってみます」
「巡回経路はこちらで用意しておいた。この通りに回ればいいのだ」
そういうと俺はマスターに一枚の紙を手渡してきた。
内容を確認すると地図に赤い矢印で何かが記されていた。
恐らくこの赤い線が巡回経路だろう。
さて、マスターから手渡された地図を頼りに俺はクロと一緒に郊外の巡回をして回っている。
空から下の様子を見るのは歩いて回るよりもはるかに効率がいい。
昔やってたゲームで空を飛べるキャラが強かった理由が今ならはっきりと理解できる。
そういえばアレンたちと顔合わせてないなぁ。
俺だけ違う仕事しててどう思ってんのかな。
などと考えていた時だった。
黒光りする謎の人影を一つ発見した。
進行方向を鑑みるに恐らくギルドの方へ向かっているな。
「クロ、あそこに降りてくれ」
「ガウ」
クロを降下させ、俺は謎の人影を調査することにした。
「……」
クロの姿を目前にして黒い人影は歩みを止めた。
近くで見て分かったが厳つい甲冑姿だ。
腰には立派な長剣も携えている。
そんな重武装をしてギルドに赴くつもりなのだろうか。
「クルセイダーのタカノだ。お前に聞きたいことがある」
パッと見で全く目的が分からない以上は職務質問をするしかない。
俺はクロから降りて厳つい甲冑に声をかけた。
「……」
怖えよ!
こんな厳ついフルフェイスの甲冑が何も言わずにただ突っ立ってるだけっていうのが尋常じゃなく怖えんだよ!
「聞きたいことというのはなんだ」
十数秒の沈黙を破り、甲冑が俺に尋ね返してきた。
コイツ男だったのか。
「お前の名前と身分、および行先とその目的は」
なんで突っ立ってるだけでこんなに威圧感を与えてくるんだこの男は。
正直めっちゃビビってる、今すぐに立ち去りたい。
「エリック・ジークフリート、キャメロット王国第九位騎士、レオナルド・マーリンという男を探してギルドという街を目指している」
男は兜を取って顔を見せるとすさまじい片言で陳述してきた。
もしかして口下手か?
すさまじい威圧感を放つわりには顔は若いな。
確かキャメロット王国の騎士っていうと国王様直属の偉い人だったはずだ。
どうしてそんな人が一人でここまでやって来たんだ……?
「貴様、どこかの街に所属しているようだな。街まで案内してもらおうか」
エリックとかいう男は俺に道案内を要求してきた。
レオナルドさんを探しているようだし、ここは素直に道案内した方がいいのか?
しかしあった後に何をするのかわからない。
「いいだろう、ギルドまで案内しよう」
ちょっと迷ったけどやっぱり目の前で助けを求めている人を見捨てられないのが俺っていう男だ。
ここからならクロに乗ってもらえばすぐに到着するはずだ。
そう考えてエリックさんをクロに近づけたその時。
「グルルルルル……!!」
クロがすさまじい敵意をエリックさんへと向けた。
人間に対して敵意を向けることがほとんどないクロがどうしてこんなに嫌がるんだろう。
「おいおいどうしたんだよ」
「恐らくこの剣と鎧のせいだろうな」
……は?
「この装備にはドラゴン殺しの加護が込められている。先祖代々に渡ってジークフリート家に受け継がれてきたものだ」
なるほどな。
そんなものつけてるからクロが嫌がってるわけだ。
「仕方があるまい。俺は歩いて行くからお前はそのドラゴンと一緒に先導してくれないか」
クロがエリックさんを乗せたがらない以上はそうするしかなさそうだよな。
生身の人間がクロに追いつけるとは思えんし、少し速度を落としていくか。
「マジかよ……」
あのエリックとかいう人、甲冑と兜をフル装備なのに飛行するドラゴンに走ってついてきてるぞ。
クロは速度を落としているとはいえなんだあの身体能力は、本当に同じ人間か……?
キャメロット王国の騎士の一人が遠路はるばるギルドへとやってきた。
間違いない、何かが起こるぞ。




