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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第12章 ドラゴンと共に
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アリスのお気に入り

 「ただいまー」

 

 クロに乗り、俺は我が家へと到着した。

 やっぱり普通に歩くよりこっちの方が断然早いな。

 通勤に関しては大きな利点だ。


 「戻ったか、タカノ」

 

 暖炉の側にいたメリルが声をかけてくれた。

 ミラとオズはどうしたのだろう。


 「オズたちはどうした?」

 「クラリスはアリスの面倒を見ているうちに疲れてしまったらしくてな。今は自分の部屋で休眠している」

 

 俺の懸念はどうやら現実のものになっていたようだ。

 オズは一人での育児で体力を消耗したらしい。


 「なるほどな。ミラはどうしてる?」

 「自分の部屋で勉学に勤しんでいるのではないか?近々中等部とやらの試験があるらしくてな」


 そういえばミラは中等部に進学したいって言ってたな。

 高等部並みの学力をすでに持っているのに勉強するなんて物好きな奴だなあ。


 待てよ、ミラもオズも自分の部屋にいて誰がアリスを見てるんだ?

 

 「アリスはどうしたんだ?」

 「それがアリスは私の腕の中を妙に気に入ったらしくてな。今はこうしてやってるんだ」


 メリルの腕を見るとアリスが心地よさそうな寝息を立てていた。

 ドラゴンのゴツゴツした鱗に直に触れているが痛くはないのだろうか。


 「そろそろご飯作るか」

 

 オズが疲れてるなら俺が家事やらないとな。

 元々俺がやってたことだし、これぐらいなら全然苦にはならない。


 「タカノ、この子をどうすればいいんだ?日が暮れるころからずっとこうしているのだが」


 マジか。

 よほどメリルの腕の中が気に入ったのか。


 「そうだなぁ、じゃあこっちで預かろうか」


 俺がメリルの腕からアリスを引き取ろうとしたその時だった。


 「グスッ……」

 「は?」


 まさかのまさかだ。

 こんなことでぐずられるとは思わなかった。

 

 どうしたものか。

 下手に取り上げれば間違いなく泣かれる。

 かといってメリルをずっとこのままにするわけにもいかない。

 ドラゴンの獣人である彼女は赤ちゃん一人抱くのに細心の注意を払っていることだろう。


 「そ、そろそろ腕が限界だ……」


 メリルの腕が小刻みに震えている。

 やはり限界が近いようだ。


 「俺の腕がダメならソファの上に……」

 「グスッ……」


 試してみようかと思った矢先にグズられてしまった。

 参ったなぁ、まさかアリスがこんなにメリルのことを気に入ってしまうとは。


 「ならば私のどこか一部に触れてさえいればいいのではないか?」


 メリルはふと思い立ったようにそう呟くとアリスを自らの膝の上に乗せた。

 アリスは特別嫌がるような様子はない、むしろ上機嫌なようにすら見える。


 「助かった。これで腕が自由になった」


 メリルは肩の力を抜くようにため息をついた。

 数時間もアリスを抱き続けてたんだし、よっぽど緊張してたんだな。


 さぁ、ある程度の自由を取り戻してもらったことだしようやく家事に……


 「ふあっ!?」


 メリルの素っ頓狂な声が聞こえてきた。

 普段は生真面目な彼女もどうも不意を突かれるとああいう声が出るようだ。

 何が起こっているのか気になって見てみるとアリスがメリルの尻尾にしゃぶりついていた。


 「や、やめろっ!それは食べ物では……んんっ!」


 落ち着け俺。

 これはなにもやましいイベントではない。

 平常心平常心……


 さて、ちょっと遅くなったけど晩御飯ができたぞ。

 そろそろ二人を呼ぶか。

 ミラはここから呼んでも反応しないだろうし、オズはもしかしたらまだ寝てるかもしれないから直接読んだ方がいいかな。


 まずはオズから呼ぶか。


 「オズー。ご飯できたぞー」

 「ん、ふあぁ……」


 俺の声で目を覚ましたらしいオズは上体を起こして欠伸をした。


 「あれ、寝ちゃってたのアタシ……」

 「みたいだな。今はアリスのことはメリルが見てくれてる」


 寝ぼけ眼を擦るオズに状況を説明した。

 自分でも気づかぬうちに寝落ちしてしまっていたらしい


 「そっか。ならよかった」

 「ご飯できてるぞ。俺はミラを呼んでくるから支度を頼む」

 「ありがと。悪いわね」

 「いいんだよ。俺がいない間に家のことやってもらったんだから当然ってやつよ」


 疲れて寝ちまうぐらい大変だったんだからむしろこれぐらいじゃ足りないぐらいだ。

 あとはできる限り楽をしてもらおう。


 「ミラ。ご飯できたぞ」

 「はーい、この問題を解いたらすぐに行くね」

 「しょうがねえなぁ。それ解いたらすぐに来るんだぞ」


 どうせ中断ができない質だ。

 一問だけならすぐに終わるだろうしもうちょっとだけ頑張らせてもいいか。


 「で、あれはどういう状況なの?」

 「あー……」


 アリスがメリルの尻尾を咥えたまま離す素振りを見せない。

 まだやってたのか、あのいたちごっこ。


 「何度も言っているだろう。だからそこは食べ物では……おわっ!」


 くすぐったいのかな。

 あるいは尻尾が性感帯的なアレなのか?


 「はいはいアリスー、お母さんのところに戻りましょうねー」


 オズはあっさりとアリスをメリルから引きはがしてしまった。

 俺たちはあんなに苦戦したのになぁ。

 母は強しってか。


 「今日はありがとなー、クロ」

 「グ……」


 夕食後、俺はクロの身体をブラシで磨きながら語りかけた。

 クロは心地よさそうに静かに唸る。


 そういえばクロの身体を洗ったのっていつ以来だったか。

 はっきり覚えてないぐらいやってなかったんだな。


 「それにしても、どうしてアリスはメリルのことを気に入ったんだろうなー」


 よくわからん。

 赤ちゃんゆえの気まぐれって奴だろうか。

 しばらくメリルは家にいるわけだし、嫌がられるよりはいいか。

 

 明日も仕事だ。

 今まで以上にクロとも関わっていくことになりそうだな。

 

 「明日も頼むぞ。クロ」

 「ガウッ!」


 クロからは頼もしい返事が返ってきた。

 これならなんとかなるかな。

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