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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第12章 ドラゴンと共に
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プロローグ:なんでもない冬の日

 俺の異世界生活四度目の冬がやって来た。

 四度目でもこちらの冬は寒さが身に染みる。


 そんな冬のある朝のこと、俺は早朝からドタドタと鳴り響く騒がしい音で目が覚めた。

 時計を見ると時刻はまだ六時前。

 ミラはこんな時間に自力で起きられないし、アリスはこんなに大きな音を立てられない。

 ということは音を立てているのはオズか。


 早朝から何をしているのだろう。

 気になった俺は寝ぼけて若干ふらつく身体を起こし、ベッドから出て行動を開始した。


 階段を上り、オズの部屋へと聞き耳を立てた。

 やはりここから物音が聞こえる。


 「入るぞー」


 戸を数回ノックし、確認の一言をかけてから俺はオズの部屋へと入った。


 「ん?どうした?」

 「こんな朝っぱらから騒がしけりゃ目が覚めるってもんよ」


 オズは少しの間動きが止まり、その数秒後に時計を見て俺の言っていることを理解したようだった。


 「あー、まだ六時前だったの」

 「それにしても何してんだ?」

 「昨夜に部下から一報が入ったのよ。で、これからそっちへ向かう準備をしてたってわけ」

 

 すっかり忘れていたがオズには大量の部下たちがいる。

 彼女自身が直々に出向くということはよほど重大な出来事が起きたに違いない。


 「その一報っていうのはどんな内容なんだ?」

 「空から人間が落ちてきたんだって」


 マジか。


 ……


 …………


 ………………


 「マジか!?」


 こっちの世界では人間が空を飛ぶ術はまだ開発されていないはずだ。

 にも関わらず空から人間が落ちてくるというのはどういうことだろう。


 俺も興味が湧いてきた。


 「……俺もついて行っていいか」

 「アンタがいなかったら誰がミラを起こすの?あの子は今日も学校でしょ?」


 そうだった。

 ミラは自力で朝起きられないから誰かが起こさなければいけない。

 それをこなせるのは俺かオズだけ、ましてや今の状態では俺しかいないと言ってもいい。


 「細かいことは帰ってきたらまた伝えるから。少しの間ミラとアリスのことは頼むわね」


 少しの間、せいぜい数時間程度だろう。

 それぐらいならお安い御用だ。


 「朝食作って待ってるからな」

 「ありがと、こっちもできるだけ早く戻るようにするから」


 できるだけ切り上げてくるように約束を取り付けた後、俺はオズの後姿を見送った。

 普段は比較的薄着な彼女もさすがに厚着をしている。

 季節が季節だからか、あるいは彼女自身が年齢のことを意識しだしたのか……


 「さて、ちょっと早いけど飯の準備でもするか」


 誰にも聞こえていないであろう独り言を零して俺は台所へと足を運んだ。

 まだミラを起こすまでには時間がある。

 少しだけ献立でも考えよう。


 まあ、少し考えたところで朝食が豪華になるわけではない。

 いつもよりほんの少しだけ手間を加えてみただけだ。


 さて、そんなこんなしていたらもうすぐ八時になりそうだ。

 そろそろミラを起こしに行かなければ。

 

 ミラを起こしに部屋に入ると、彼女はいつものように掛布団にくるまって丸くなっていた。

 さぁ、起こすぞ。

 

 「起きろミラ。もう八時だぞ」

 「んんー……えぇー?」


 寝ぼけたミラが言葉になっていない声でこちらに返事してきた。

 

 「今日も学校だろ?早く起きて支度しないと遅刻するぞ」

 「うー……あともう少しだけ……」


 ミラは何かと手のかからない子なんだが朝起こす時だけは本当に手がかかる。

 恐らく布団の中にいる限りずっとこの応酬が続くことになる。

 少々手荒な手段だが俺はミラが被っている布団を力ずくで引っぺがした。


 「寒いよぉ……」

 「もう朝ごはんもできてるぞ。ほら起きた起きた」

 「はーい……ふわぁ……」


 抵抗をあきらめたミラは大きな欠伸をすると寝ぼけ眼を擦りながらベッドから這い出てきた。

 綺麗な銀髪が寝ぐせでところどころ跳ねている。

 後で直してやらないと。


 「お姉ちゃんは?」

 

 食卓で朝食を食べながらミラが尋ねてきた。

 いつもなら必ず同じ時間に朝食を摂っているオズがいないと違和感を感じるようだ。


 「お前が起きる前から出かけてったぞ。ミラが学校終わるころには帰ってくるってさ」

 「そっか。ならいいや」


 かつては過剰なほどに心配していたのに、今では軽く流せるようになっている。

 こういう面でも彼女は確実に成長しているな。


 「ふぅ、ごちそうさまー」

 「寝ぐせ直してやるから洗面所に行け」

 「はーい」


 数分かけてミラの寝ぐせを直し、顔を洗わせた。

 一緒に暮らし始めた頃は彼女の髪を傷めないようにひどく気苦労したのだが今ではなかり慣れた。


 「ありがとー!じゃあ準備してくるね!」


 寝ぼけていた数十分前とは違ういつもの元気な顔になったミラは登校のために身支度を始めた。

 ここまで来れば俺がすることはもう何もない。

 

 「行ってきまーす!」


 制服に着替え、少しの荷物を持ったミラは元気に家を飛び出していった。


 「おう、いってらっしゃい」


 閉じゆく玄関の隙間から見えるミラの後姿を見送った俺は大きくため息をついた。

 この頃は一日の労力の大半をこの一、二時間程度に費やしているような気がする。

 何はともあれ、今日の一大行事はこれで終わり。


 ……だと思っていたんだが。


 「ただいまー」


 ちょうど家を出て行ったミラと入れ替わるようにオズが帰ってきた。

 脇に大きな何かを抱えて。



 そして、それがこの世界に大きな転機をもたらすことになるとは当時の俺はまだ理解する由もなかった。

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