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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第11章 おじさん一家の娘
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エピローグ:二人の娘とこれからも

 秋の八十六日。

 あと一週間も絶たないうちに季節が冬になる。

 暖炉の燃料になる薪や衣替えの用意、煙突周りの清掃と冬支度で大忙しだ。


 薪の用意や煙突周りの清掃といった体力仕事は俺が、それ以外はミラとオズが二人で進めている。

 いつか前にグレイさんが差し入れてくれたアリス用の冬服も無理なく着せられたし、アリスの方も問題なさそうだ。


 それにしてもこの頃、ミラが今まで以上に勉強に打ち込んでいる気がする。

 試験の時期はとうに過ぎている。

 何か目標でもあるのだろうか。

 聞いてみよう。


 「えっとね、もうすぐ中等部の進学試験があるんだ。ミラは中等部に行きたいからそのために頑張ってるの」

 

 なるほど、進学受験か。

 待てよ、確か入学してからまだ三年だよな……


 「たった三年で進学できるもんなのか?」

 「大丈夫。必要な単位は全部取れたからあとは進学試験を受けるだけだよ」


 あー、単位制なのか。

 それなら飛び級ができるのも納得だ。


 「それなら、一つだけ質問をさせてくれ」

 「なに?」

 「もしミラが中等部に進学できたとしたら、そこで何を勉強したいんだ?」


 進学したいならそれ相応の目的があるはずだ。

 義務教育ではない以上、目的のない進学は認めない。


 「中等部ならもっといろんな分野を細かく勉強できるはずだから、そこで回復魔法と動物の心に干渉できる魔法を勉強したいの」

 

 ミラの志ははっきりとしているようだ。

 もう少し話を聞いてみよう。


 「回復魔法をもっとうまく扱えれば治せるケガも増えるし、心に干渉する魔法が使えるようになればもっといろんな人と分かり合えるようになるはずだから」

 

 確かに明確な目的がある、そのために進学してより専門的なことを勉強したいというわけか。

 それなら俺にそれを止める権利はない。


 「わかった。ミラが中等部へ進みたいのなら、俺たちは全力でそれを応援する。だから勉強したいことを目いっぱい勉強してくるんだぞ」

 「……うん!」


 ミラは目を輝かせながら元気な返事を寄越した。

 目的のためにまっすぐ努力ができる、いい子だ。

 俺は受験勉強なんて真面目にやらなかったからなおさらそのまっすぐさが伝わってくる。


 「でもあんまり頑張りすぎないようにな。たまには息抜きをするのも忘れるなよ」

 「大丈夫。疲れたらちゃんと休むから」


 口では大丈夫だって言ってるけれど、放っておくと朝起きてから寝るまでずっと勉強を続ける可能性もあるのがミラという子だ。

 定期的に様子を見に行くことにしよう。


 俺はミラのことをオズにそのまま伝えた。

 

 「やっぱりあの子、こうと決めたらどこまでもまっすぐに突き進む子よねぇ」

 「それは俺も重々知ってる」


 純真で素直だけれども、一度目標を決めるとそこに向かってどこまでも止まらずに進んでいくのがミラという子だ。

 よく言えば努力を惜しまない性格であり、悪く言えば融通が利かない。


 「回復魔法と心に干渉する魔法をもっと勉強したいんだとさ」

 「いかにもって感じね」


 ミラの将来の夢は『医者になること』だ。

 きっとそのために必要になるのだろう。


 「確かミラは『魔法を使わなくても怪我や病気を治せるようにする』のが目標だって言ってたよな」

 「きっとあの子は現状を知ってるのよ。今のアタシたちの世界の技術じゃ魔法なしで大きな怪我や病気を治すのは難しいってことを」


 ただ高い理想を抱いているだけじゃない。

 現状を知っていて、そのうえでまだ魔法が必要だと判断している。

 

 「それに、あの子はすでに気づいてるんじゃない?『心の病気』の存在に」


 『心の病気』、それはこの世界ではまったく触れられない存在だ。

 今の文明レベルでは概念すら信じてすらもらえないような代物だろう。


 「心の病の治療にも手を出そうとしてるんだろうか」

 「そうでしょうね」


 俺のもといた世界ですら完璧な治療法は存在しない。

 そんな未知の分野にも挑もうとしている辺り、ミラはとてつもなく大きな野望を持っている。


 「アタシたち、この世界の歴史に名を刻むほどの子を見てるのかもしれないわね」

 「確かに、そうかもしれないな」


 もしミラの野望が達成されるのならば、それは間違いなくこの世界の歴史に名を残せるほどの大偉業だ。

 

 「そんなすごいお姉ちゃんと一緒にいて、アリスはどんな子になるか楽しみね」

 「俺としては、ミラとは別の道で大きな存在になるといいな」

 「なんで?」

 「同じ道を進むと、どうしても近くにいる奴と比べられちまうんだ。そこで優劣を決められるとそれがコンプレックスになる」


 コンプレックスをこじらせるのは完全悪とは言い切れないが基本的にいいことではない。

 それこそ『心の病』の根源になり得るようなものだ。

 

 「まあ、子供が望んだ道を否定することはできんけどな」

 「アンタらしいっちゃらしい答えね」


 俺と血のつながりのない我が娘はすでに志固く、それに向けた努力を惜しまず続けている。

 血の繋がった我が娘はこれから何を見て、何を思い、何を志すのだろう。

 

 そんなことを考えるのもいいが……


 「あー。うー」


 アリスはまず言葉を覚えるところからか。

 赤ちゃんが最初に覚える単語と言えばまず名詞だ。

 俺が覚えさせたい言葉は……『お父さん』だ。


 「はいはい。お母さんが今行きますよー」

 「お父さんも行くからなー」


 まだアリスは『ア行』の発音しかできない。

 だが『お父さん』も『お母さん』も『ア行』から始まる言葉だから覚えさせられる可能性はある。

 それに賭けた俺たちは日々アリスに単語を覚えさせようと躍起になっているがまだ進歩の兆しはない。



 俺たちタカノ家、そして二人の娘は今日も元気です。

 その二人から元気を分けられて、俺とオズも日々頑張ってます。

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