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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第11章 おじさん一家の娘
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学校にて

今回は三人称視点の話です。

 秋の七十二日、いつもと変わらない晴れ空が広がっていた。

 

 その日はギルドの中にある魔法使いたちの教育機関こと、メルクーア魔法学院は初等部から中等部、そして高等部まで多くの生徒たちが一斉に巨大な門を通り抜けていた。

 数週間前から世間を震撼させていたカミュレ復活事件を受けて発生した学校閉鎖が解かれ、今日から授業が再開するのだ。


 「おはようございまーす!」

 「おはよー!」


 生徒たちは校門を通りながら教師にまばらな挨拶をしていく。

 元気な者から気の抜けた雰囲気の者まで、声色一つで個性が溢れ出る。


 そんな平穏な学校に一つの影が飛び込んできた。


 「あれなんだ?」

 「こっちに向かって飛んできてる……?」

 「動物……ドラゴン!?」


 ドラゴンの巨影が迫ってきていた。

 それも、一人の少女を乗せて。


 「危ないよー!下がって下がってー!」


 ドラゴンに乗っている少女は地上にいる人間たちに警告した。

 巨大な翼の羽ばたきが周囲に猛烈な突風を発生させ、ある者には尻餅をつかせ、またある者を勢いそのままに吹き飛ばす。

 少女を乗せたドラゴンはゆっくりと降下し、地上にその屈強な足を着けた。


 「クロありがとー!この後は寄り道しないで家に帰るんだよ?」

 「グォン!!」


 ドラゴンに乗っていた少女ミラはその黒いドラゴン=クロにお礼をすると同時に次の行動を指示した。

 クロは彼女の言葉に応えるように吠え、再びその巨体を浮き上がらせて空へ飛び去って行った。

 飛び去るのを確認したミラは杖をつきながら初等部の教室に向けてゆっくりと歩みを進める。


 「すげぇ……」

 「流石はマーリン家のご子息」


 その一部始終を見ていた他の生徒や教師たちはただただ圧倒されるばかりであった。

 ミラが魔法使いの名家中の名家、マーリン家の出身であることは学校に携わるほとんどの人が知っている。

 むしろ知らない人の方が少ないぐらいだ。


 ミラは久々に訪れた教室の風景を目にして心を躍らせた。

 またこの場所で友人たちと共に学ぶことができる。

 そう思うと楽しみでならなかった。


 「おはよーミラちゃん!」

 「おはよー!」


 学友の少女がミラに挨拶をしてきた。

 それに対し、ミラはこれまでと変わらない無邪気で元気な挨拶を返す。


 「その杖すごく綺麗!どこで手に入れたの?」

 

 少女は水晶樹の杖を見てそれに負けないほどに目を輝かせた。

 さらにその杖の輝きに引き寄せられるかのように教室の生徒たちがミラの元へ集まってくる。

 

 「エルフ族の人たちに作ってもらったの。ミラの宝物なんだ」

 「へぇー。私もその『エルフ族』の人に頼んだら作ってもらえるかな?」

 「うーん、わかんない」


 「エルフ族ってどこにいるの?」

 「水晶の森っていうところだよ」

 「確かここからすごく離れたところだよね」

 「うん。お姉ちゃんに連れてってもらったんだ」」


 群がった生徒たちからの質問攻めにミラは一つ一つ答えていく。

 そうこうしている間に時が流れ、一限の担当教師が教室へとやって来た。


 「みなさん静かに。これより浮遊魔法の授業を始めます」


 教師の一声で生徒たちは私語をやめ、各自席に着いた。

 学校再開後の最初の授業は浮遊魔法、物体を空中に浮遊させるための魔法を取り扱う講義だ。


 ミラは初等部で学ぶ魔法の内容はほぼすべて把握している。

 それこそ知識量だけなら教師にも引けを取らないほどだ。

 だからといって彼女は授業を放棄したりはせずに真剣に聞き入る。

 彼女にとっては『同じ場所で友達と一緒に』学ぶことに意味があるのだ。

 

 そんな中、隣の席の少年がミラに声をかけてきた。

 

 「ねえねえミラちゃん。この前の事件のことである噂が立ってるんだけど知ってる?」

 「噂……?」

 

 先日の事件はミラにとってかなり苦い思い出となっている。

 だが自分がその当事者であることをクラスメイトたちに知られたくはない。

 ミラは精一杯表情を取り繕って聞きに徹することにした。


 「うん。なんでもあの大魔女にたった一人で立ち向かったんだって」


 話の内容にミラの心臓が止まりそうになった。

 季節は涼しい秋であるにも関わらず、生暖かい嫌な汗が首筋から背中へと伝っていく。


 「へ、へぇー……」


 ミラの冷や汗は加速度的に増加する。

 その噂の内容が自分自身のことであるとは思いもしていなかった。

 もし真相が知れ渡ったら授業どころではない。


 「そこ、授業中の私語は慎むように」

 

 教師からの警告によって雑談は遮られ、少年とミラは再び講義へと意識を向け直した。

 この後どのように話が続いていたらどこまで噂を聞くことになっていたのだろうか。

 

 (いや、今はそんなこと考えない方がいいよね)


 雑念を取り払うようにミラは首を小刻みに振った。


 それからというもの、噂が飛び交う度にミラはそちらに意識が向いてしまった。

 もしその正体に勘付かれたら……

 そう考えるたびに悪寒が走る。


 「はぁ……」


 一日の授業が終わった放課後、ミラは一人特大のため息をついた。

 これがいつまで続くのかと思うとなんだか心配でならない。


 「お疲れミラちゃん。一緒に帰ろ?」


 クラスメイトであるイズナがミラに声をかけた。

 ミラが杖をついている理由を知る唯一のクラスメイトだ。


 ミラとイズナは二人で帰り道を歩く。

 イズナが歩幅を合わせ、普段よりもゆっくりと進んでいる。


 「ミラちゃん今日元気ないね。学校始まるのをあんなに楽しみにしてたのに」

 「うーん、ちょっとね」

 「もしかして、噂のこと?」


 イズナの鋭い質問にミラの表情が張り付いたように固まった。


 「ううん。なんでもないよ」

 「ミラちゃん今嘘ついたでしょ」


 『バレたか』といった具合にミラは頬を掻いた。

 安易な嘘はイズナにはすぐに見抜かれてしまう。

 

 「やっぱりイズナにはすぐにバレちゃうなー」

 「もう二年以上ミラちゃんのこと見てるからすぐにわかっちゃうよ」


 イズナの観察力は母親譲りのものだ。

 どんな些細な変化でもすぐに気づいてその奥にあるものを見抜いてしまう。


 「なにかボクたちに秘密にしてることがあるの?」


 ミラは言葉を詰まらせた。

 イズナなら誰にも言うことなく秘密を守り通してくれるだろう。

 あるいはすでにこの秘密に勘づいているのかもしれない。

 しかしもしこれが他の人に聞かれてしまったら……


 「……ミラちゃん!?」


 ミラは突然何も言わずに横からイズナに抱き着いた。

 普段なら前振りをしてから正面から抱き着いてくるのに今回はそれがない。

 その突発的な行動にイズナも驚きを隠せない。


 「実はちょっとね……」

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