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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第11章 おじさん一家の娘
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注目の的

 「外の空気ってこんなに冷たかったっけ?」

 「久々に外に出たから冷たく感じるんだろ」


 学校再開まであと三日、俺はミラと一緒に外を歩きながら他愛もない話をしていた。

 彼女は杖をつきながらではあるものの、外を歩くことができるまでになった。

 これなら杖なしは厳しいだろうけれど、学校の再開までには間に合いそうだ。


 俺たちはミラと一緒にギルドへと訪れた。

 彼女にとっては何日ぶりだろうか。

 

 「ここはいつ来ても変わらないね」

 「まあ、そうだな」

 

 俺は当たり障りのない言葉を返した。

 風景を見れば確かにその通りだ。

 だがそこを取り巻く空気は常に変わり続けている。

 昨日も、そして今日も。


 その空気はどうやらまた大きく変わっているようだ。

 街に入った人々は皆ある方向に向かっている。


 「みんなどこに行くんだろう」

 「あっちに何かあったっけか?」

 「図書館ぐらいだったと思うよ」


 確かに図書館ぐらいしかないはずだ。

 その図書館に何かあるのだろうか。

 ちょっと見に行ってみるか。


 図書館に近づくにつれて人だかりが大きくなってきた。

 こうなると足が悪いミラのことが気がかりだ。


 「どうするミラ、もっと奥に行ってみるか?」

 「うん、向こうの様子を見てみたい」

 「じゃあこっから先は背負ってやるよ」

 「なんで?」

 「絶対に人混みに押されて転ばされるぞ」


 そこでいろいろトラブルになるぐらいなら最初から回避してしまうのが一番だ。

 本当は近づかないのが一番なんだろうがミラの好奇心を否定するわけにもいかない。


 それにしても図書館で催し物をしているのだろうか。

 珍しいこともあるもんだ。


 「見たか?なんでもここに氷漬けの大魔女が置いてあるんだってよ」

 「マジかよ」


 観衆のなかの誰かの会話が偶然にも俺たちの耳に届いた。

 氷漬けの大魔女、それって……


 「あの向こうに置いてあるのってまさか……」


 ミラは何かを察したように小声で呟いた。

 言いかけた言葉が何だったのかは俺にはわかる。

 そこに設置されているのは『氷漬けのカミュレ』だ。

 まさかあの後放置されていたのをわざわざここまで持ってきたのだろうか。


 『手段は一つだけあるけれど……』


 レオナルドさんの言っていた『噂をかき消す方法』ってこのことだったのか。

 確かに強烈な話題が飛び込んで来れば過去の噂は一瞬で流されていくが……


 「おうタカノ。お前等も見物か?」


 踵を返そうとしたその時、俺たちの姿を見つけたらしいグレイさんから声をかけられた。

 こんなところで出会うなんて珍しいこともあるもんだ。

 普段ならグレイさんはこんなところに来ないのに。


 「グレイさんこそ、なんでここに?」

 「民衆の誘導だ。急にこんな業務を任せられてたまったもんじゃねえよ」


 そういうとグレイさんは民衆をかき分けて奥へと進んでいった。

 彼に続いて機動隊の連中がちょくちょく続いていく。


 「お前等ァ!ケガしたくなきゃ俺たちの指示に従って並べェ!そこ、通行人のために道開けろォ!」


 こんな人混みの中からでもグレイさんの声ははっきりと聞こえてくる。

 他人事じゃないけれども急にこんな業務を任せられて大変そうだなぁ。

 

 俺は人混みから離れ、背中からミラを降ろした。

 ミラは杖をつき、再び自分の足で歩きだす。


 「あそこにいるのってアルさんかな?」

 「んー、どこだ……?あーいたわ」


 ミラが指さした場所を見てみると、建物の屋根の上でアルが何とも言えない様子で黄昏ていた。

 仕事はどうしたんだ。


 「おーい!アルー!」

 「ん……おぉ!オッサンじゃねえか!それにミラも一緒か!」


 俺たちに気づいたアルは屋根から飛び降りると俺たちのところへ近寄って来た。


 「お前は誘導に向かってないのか?」

 「察しろよ、ウチみてえなチビが民衆の中に入ったところで押し流されるだけだろ」


 それもそうか。

 そう考えるとこの采配は有能と言わざるを得ない。

 

 「久しぶりだなミラ。その杖は新しいオシャレか?」

 「えーっと……今はちょっとわけありでね」


 ミラの一言で何かを察したアルは一瞬真顔になると聞くのをやめた。

 弟たちの面倒を見ているうちに磨き上げられた洞察力って奴だろうか。


 「まあいいや。じゃあまたどっかで会おうな!」


 話を切り上げたアルは壁を伝って天井に飛び移り、そのままどこかへ消えてしまった。

 やっぱり気まぐれな奴だ。


 図書館から遠ざかるにつれ、次第に人々の視線はミラの方へと集まるようになっていた。

 

 「どうしてみんなミラの方を見てるのかな?」


 どうやら本人には自覚がないらしい。

 それなら教えてやろう、その水晶樹の杖が滅茶苦茶目立つからだ。

 いつから注目を浴びるのが苦手になったのやら、ミラは心なしかおどおどしているように見える。

 よし、今日のところはこれぐらいにしよう。


 「ミラ、そろそろ帰るか」

 「そうだね。なんだか疲れちゃった……」

 

 俺たちは我が家へ帰るべく歩みを進めた。

 

 レオナルドさんの賭けともいえる大胆な行動は噂を消し去ることには成功したものの、結果的にミラの弱点が露呈してしまうことになった。

 ミラを必要以上に目立たせてはいけない、今後の反省材料にしよう。

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