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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第11章 おじさん一家の娘
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激昂する少女、暴走する魔力

 「許さない……お前だけは……絶対に!!」


 ミラの口調は豹変し、かなり荒っぽくなっていた。

 自身の魔力が制御を離れて暴走し、電撃のように全身から迸る。

 銀髪が逆巻き、嵐の如く荒れ狂う。


 「フンッ!拘束された体で何ができるっていうんだ!」


 豹変したミラに動揺しつつもカミュレは強気な言葉を吐いた。

 今のミラは四肢を拘束されていて身体の自由を封じられている。

 いくら膨大な魔力があるとはいえ、これを破れるとは思えない。


 「うああああああああ!!」


 ミラは力任せに叫び、魔力を全身から放出すると自身を拘束していた魔法を強引にぶち破った。

 拘束から解放され、久しく地に足を着けるとゆっくりと顔を上げて殺意に満ちた視線をカミュレへと送る。


 「ば、馬鹿な……単純な力であの拘束を破れるはずが……」

 

 まさかまさかの事態だった。

 これまでそれを破ったことのある人物など存在しなかった。

 だが目の前にいる少女は純粋な魔力だけで破ってきたのだ。


 「許さない……誰かを傷つけるお前みたいなやつは絶対に!」


 沸き起こる怒りが収まらないミラは全身から魔力を迸らせ、光の矢へと変形させてカミュレ目がけて撃ち飛ばした。

 光の矢は余剰魔力を空中で炸裂させながら空中に浮遊し、嵐のように降り注ぐ。


 「いくら膨大な魔力があろうと所詮は小娘。この私を殺せるはずが……」


 そう言いかけたカミュレの真横を光の矢の一本が音を立てて通り抜けていった。

 着弾した矢はいともたやすく屋敷の床を抉り、血塗られた足場を灰色に上書きしていく。


 カミュレは本能的に命の危機を感じ取り、身震いを起こした。

 こんな状況で背を向けようものなら目の前の脅威に殺されることは明白だ。


 カミュレは過剰に追い立てずに早急に仕留めなかったことを悔やみながら戦闘態勢に入った。

 今は暴走したミラと戦う他にない。


 「消す!絶対に消す!」


 ミラは眼に殺意を漲らせ、上げた右手を正面へと振り下ろした。

 対するカミュレは防御陣を展開し、来る攻撃を受ける構えを取る。


 「!?」


 ミラの放った魔法はあまりにも直線的であり、そしてあまりにも高出力であった。

 レーザーのように放たれたそれはカミュレの防御陣をいともたやすく突き破り、衝撃の余波でカミュレを吹き飛ばして壁へと叩きつける。


 老体のカミュレには物理的な衝撃はかなり堪えた。

 身体能力を魔力で補強している状態であり、その魔力を身体補強に回せない今は肉体的なダメージが直接反映されるのだ。


 「カッ……カハッ……」


 カミュレはもはやまともに立ち上がることすらできないほどに追い詰められていた。

 かろうじて動くであろう首を持ち上げると殺意と怒りを満面に浮かべたミラがこちらに止めを刺そうとゆっくりと歩み寄ってきていた。


 「こ、殺される……」


 カミュレは初めて子供に対して恐怖した。

 これまで自分が与えてきたものを与えられ、身体の震えが止まらなくない。


 そんな中、カミュレの手元にあるものが転がっていた。

 さっきまでミラに対して突き刺していた短刀だ。

 

 「まだだ……」


 静かにそう呟くとカミュレは左手に短刀を仕込んだ。

 いくら暴走していようとミラは子供、急所を物理的に貫けばひとたまりもないはず。


 「うおああああああ!!」


 カミュレは不意に体を起こし、仕込んだ短刀をミラの胸目がけて突き立てた。

 身体と身体がぶつかり、短刀は確実にミラの胸に突き刺さり肉を裂く。

 あまりにあっさりと会心の一撃が決まったに快感に酔いしれ、カミュレは気色悪い笑みを浮かべた。


 ……が、その直後に違和感を覚えた。

 いくら時が経てども血が滴る感触がないし、ミラが力尽きるような素振りも見せないのだ。


 「……!」


 ミラの様子を伺った瞬間、カミュレの中の僅かな希望がすべて絶望へと上塗りされた。

 短刀は確かにミラの胸に突き刺さっている。

 心臓にあたる部分を貫いているはずであり、力尽きるどころかここであっさり死んでいてもおかしくはないはず。

 にも関わらずミラは微動だにせず、直立不動でカミュレのことを睨んでいた。


 「あ、あぁ……」


 ミラに睨まれたカミュレはすっかり戦意を喪失し、全身から力が抜けだしたような虚脱に見舞われた。

 その矢先、ミラが起こした衝撃波に吹き飛ばされて抜け殻にも等しい老体が再び壁へと叩きつけられる。


 ミラは胸に突き刺さった短刀を力任せに引き抜き、床に無雑作に投げ捨てた。

 貫かれた箇所には血の一滴も流れず、うっすらと見えていた刺し傷すらも一瞬で元通りに修復される。

 決死の覚悟で放った渾身の一撃すらもミラには傷一つ付けることはできなかった。


 ミラはゆっくりとこちらへと歩み寄ってくる。

 もう自分にはどうすることもできない。

 抵抗を諦め、カミュレが己の死を受け入れたその時だった。

 

 「うっ……!あぁ……」


 カミュレに迫ろうとしていたミラは急に力なく膝をつき、そのまま突っ伏して床の上に倒れこんだ。


 「……?」


 カミュレには理解が追い付かなかった。

 さっきまで自分を圧倒していた少女がこうもあっさりと力尽きたのが信じられなかった。


 「助かった……のか?」


 十数秒後、己が助かったことを理解したカミュレは徐々に活力を取り戻し始めた。

 魔力を回し、何度も打ち付けられた老体を補強して身体を起こす。


 「フンッ!」


 カミュレは力尽きたミラの頭を掴み、強引に顔を上げさせた。

 リアクションこそ見せないもののまだ呼吸はしている。


 「今度こそ仕留める!」


 カミュレは瓦礫の山から石の槍を錬成し、ミラの身体を貫こうとその刃先を定めた。

 そしてその切っ先が身体に触れようとしたまさにその時であった。


 

 「!?」


 正体不明の何かが屋敷の壁を破壊し、拷問部屋へと乱入してきた。

 

 「今度は何だ!?」


 カミュレは声を荒げた。

 どういうわけかミラに狙いを定めてからというもの、次から次へとイレギュラーが発生する。


 埃を払い、その奥から白いローブをまとった痩せ身の魔法使いが姿を現した。


 

 「私の娘になにをするつもりだ」

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