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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第11章 おじさん一家の娘
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禁じられた名前

 翌日の朝、俺たちの家に一通の手紙が届いた。

 その差出人は……


 「メルクーア魔法学院……」


 そう、ミラが通っている学校からだ。 

 学校から手紙が来るのは初めてだ。

 というかよく場所が分かったな。


 学校から送られてきた手紙の内容はなにやら小難しいことが記されていたが噛み砕くとこう読めた。


 『誘拐事件の発生により、しばらく休校』


 どうやら誘拐事件のことは昨日の内に学校側でも認識していたようだ。

 メルクーア魔法学院の生徒は全員魔法使いだ、よって制服を着ているだけで自分が魔法使いだと周囲に知らせているようなものであり、犯人に目印にされかねない。

 かなりざっくりとした休校通知だが生徒の安全のことを考えれば妥当な判断だろう。


 というわけで今日は我が家に全員揃っている。

 かといってミラは迂闊に外に出歩けないし、オズが付いているにしてもアリスを外に連れ出すのも危険だ。

 少しの間は俺が外に出ていろいろ動くことにするか。


 今は朝八時、いつもならミラを起こす時間だが休校ならその必要はない。

 ゆっくり寝かせておくか。


 さて、今安全に外を出歩けるのは我が家の中では俺だけか。

 職業柄で事件があるとどうしても動きたくなる。


 今は休職中だが独自に情報集めをするぐらいなら問題ないだろう。

 思い立ったら即行動だ。


 ミラの分の朝食を作り置きし、俺は単身ギルドへと訪れた。

 事件の影響を受けてのことだろう、いつもよりも街中を歩く子供が少ない。

 子供の声は街の賑わいを作る大きな要素だ、それが減るのはやはり寂しいものがある。


 さて、今回の事件はまずどんな情報から集めていくのがいいだろうか。

 そもそも犯人はどうして魔法使いの子供ばかりを狙ってるんだ?

 魔法使いの子供に何かあるんだろうか。

 

 今回は魔法使いの人たちを中心に情報を集めに行こう。

 魔法使いが集まる場所といえば酒場だ。

 こんな朝っぱらから飲んでるやつがいるとは信じたくないけれど……


 酒場を訪れるとそこには魔法使いたちが思い思いに酒をあおっていた。

 まさか夜通し飲んでたりしたんだろうか。


 オズと一緒に禁酒してたから酒の匂いを嗅ぐのは久々だ。

 だが今日の俺は酒を飲みに来たのではない、早速聞き込み開始だ。


 「誘拐事件?ああ知ってるよ」


 まず最初に聞きこんだのは中年ぐらいの気のよさそうな男の人。

 やはり事件のことは認知していたようだ。


 「犯人に心当たり?わからないね」


 まあ、そうですよね。

 もう一つ気になることがある、それも尋ねておこう。


 「なんで魔法使いの子供が狙われるのかって?それもわからないかなぁ」


 この人からは有力な情報は得られなかった。

 仕方がない、聞き込みに協力してくれたことに感謝だ。


 「魔法使いの子供が狙われる理由、心当たりがあるよ」


 男の人への聞き込みを切り上げようとしたところでなにやら風格漂う老婆が入り込んできた。

 なにか知っているのだろうか。


 「心当たりとは、どんなことですか?」

 「今から三十年ぐらい前だったかね、魔法使いの子供が連続して攫われる事件が起きたのさ。ちょうど今起きてる事件と全く同じだね」


 今と同じだ。

 その時の犯人の目的は一体……?


 「犯人曰く、『魔法使いの子供の血には若返りの力がある』って言ってたね」

 「つまり、犯人の目的は『血を集めること』……?」


 もしそうだとすれば攫われた子供たちの命が危ないぞ。


 「そういうことになるね」

 「今、その事件を起こしそうな人物に心当たりは……?」


 俺がそう聞くと老婆は嫌なものを思い出すように顔をしかめた。


 「大悪魔カミュレ。アイツしかいないだろうね」

 

 老婆がその名を出した途端に酒場の空気がどよめき始めた。

 その肩書きだけで犯人がどんな人物だったのかが容易に想像できる。


 「いや、まさかね……」


 名前を出した老婆が否定の言葉を呟いた。


 「どうかしたんです?」

 「カミュレは二十年以上前に異国にて処刑されているんです」


 老婆とは別の女性が割り込んで答えた。

 すでに死んでる奴が同じことをするとは思えん。

 まさか幽霊の仕業だとでもいうのか?

 霊術師の人に動いてもらう案件なんだろうか。


 

 その日、俺はオズに『カミュレ』という人物のことについて尋ねてみた。


 「アンタ、どこでその名前を……?」


 どういうことだ。

 名前を聞いただけでオズが引くような素振りを見せたぞ。


 「そいつがどんな奴なのか知ってる限りで教えてくれ」

 「アタシが生まれるよりも前に魔法使いの子供を攫ってはその血を吸い上げていたやばい奴よ」

 

 うわぁ……

 つまりそれの模倣犯だとしたら……


 「もし今回の犯人がそれの模倣犯だとしたら?」

 「攫われた子供はまず助からないでしょうね」


 オズはあっさりと言い放った。

 すでに犠牲者が出てしまったのは残念でならないがミラにさらなる犠牲になってほしくはない。

 少しの間は一人で外出しないように言いつけとかないと。


 「そういえばミラは?」

 「たぶん二階にいるわよ」


 そう言っていたのも束の間、二階からミラの足音が聞こえてきた。

 最悪のタイミングだ、どんな目的であろうと外出を止めさせなければ。


 「どこに行くんだ?」

 「図書館にお勉強しに行こうかなって思ってたんだけど」

 「今日はやめておけ、外に出ちゃダメだ」


 急に外出を止められてミラは軽く膨れ上がった。


 「なんで外に出ちゃいけないの?」

 「カミュレが復活したからだ」


 カミュレの名を聞いたミラは食い下がることなくすぐに後ずさりして何も言わずに二階へと引き返していった。

 三十年以上前の事件なのにミラですら知っているとは、よほど衝撃的な事件だったのだろう。


 「参ったわねぇ……」

 「まったくだ」


 オズと一緒に俺は頭を抱えた。


 大悪魔の再来ともいえる事件の発生により、魔法使いたちは事実上の軟禁状態に陥ってしまった。

 なんとしても事件を解決してミラたちが安全に外を出歩けるようにしないと……

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