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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第11章 おじさん一家の娘
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おじさんの知らせ事

 出産や育児といろいろあって忘れていたことがあった。

 仕事にはいつ復帰しようか。


 一応手当は出ているから収入が全くないわけではない。

 だが、アリスのために想像以上にあれこれ出費が嵩んだから手当と貯蓄で間に合わないような気がしてきた。

 そしてなにより、休暇が長すぎると俺自身の気が狂いそうだ。

 これは完全に国民性って奴なんだろうな。


 俺一人の判断で職場に復帰するわけにもいかない。

 まずはオズと相談してからにしよう。


 「あー、仕事復帰ねー」


 オズもすっかり忘れていたようだ。

 そりゃそうだよな、なんだかんだ三ヶ月ぐらい一緒にいるもんな。


 「まだアリスの育児とかいろいろ落ち着かせないといけないからすぐには戻らないけどさ、収入とかのことも考えたらいつまでも休んでるわけにもいかなくて……」

 「お金のことなら心配することないんじゃないの?」


 言う通り、オズの実家は大富豪だ。

 俺が一生かけても届かないような額の資産を蓄えている。

 それは俺もわかっているがそれに頼るのはあくまでも最終手段だと考えている。

 事実、これまで俺はオズの資金力を後ろ盾に考えたことはあるが実際に頼ったことは一度もない。


 「えーっと、お金以外にも不安なことあってさ」

 「と言うと?」

 「……人間関係だ」


 俺には家族関係以外にも職場絡みで築き上げた人間関係もある。

 一応周囲からの理解を得られているとはいってもずっと顔を見せずにいるとそれが崩れそうなのが心配だ。


 「仕事がしたいのはアンタの自由だし、アタシには関係ないから好きにすればいいと思うけどさ、こっちがある程度落ち着くまでは待っててくれる?」

 「無論そのつもりだ」


 オズがそういうところに無頓着なのがある意味でプラスに働いてよかった。

 久々にギルドに赴いて近況報告でもしてこようかな。


 その日の昼下がり、オズはアリスと添い寝をしていた。

 写真という文明の利器があれば迷わずにこの光景を撮っておきたかったがないものは仕方がない。

 今のうちにこなしておくこともないし、暇つぶしがてらギルドにでも足を運ぶか。


 ギルドにはいつものように通っているが職場を覗くとなると本当に久々だ。

 ドラゴン迎撃には仕事じゃなくてボランティアで参加したようなものだし、久々に僚友たちと顔を合わせるのが楽しみだ。


 代わり映えしないギルドの景色に溶け込んで俺の仲間たちは働いている。

 さて、顔なじみの奴はどこにいるだろう。


 「おっ?おっさんじゃねえか?」


 ああ、久々に聞く声だ。

 この声はアルだな。

 ふと建物の屋根の上を見ると白いメッシュの入った黒毛の猫の獣人が俺を見下ろしていた。


 「いよっと」


 アルは屋根の上から軽く飛び降りると足音をほとんど立てることもなく着地した。

 相変わらず身軽な奴だ。


 「久しぶりだな」

 「ああ、ドラゴン迎撃以来だっけ」


 その通り。


 「今は巡回中か?」

 「あー、今はサボ……巡回してたところだ!」


 今『サボってる』って言いかけただろ。

 俺が休職中なのが幸いだったな。


 「本当か?」

 「じゅ、巡回中なのは本当だぞ……」


 ちょっとカマをかけてみたがそこは事実らしい。

 それなら少しぐらい話をしていってもよさそうか。


 「マジか!?おっさんのところの子供が生まれたのか!?」

 「ああ、元気な女の子だぞ」

 

 アルはアリスに興味深々なようだった。

 

 「人間の子って随分と早く生まれるんだな。もっと時間かかると思ってたぞ」

 「実際俺もそう思ってたわ」


 結果的には問題なかったがミラの大魔法が影響しているのだろう。

 なんとなく納得できる因果があったし。


 「なあなあ!今日仕事が終わったらおっさんの赤ちゃん見に行ってもいいか?」


 食い気味にアルに迫られて俺は思わずたじろいでしまった。

 そういえばアルも女の子だったな、こういうことには興味が湧くのだろうか。


 「俺は別に構わんが……」


 いろいろと問題がありそうなんだが。

 まだ仕事終わりまで時間はありそうだし、となると来るのは夜ぐらいになるな。

 そもそもアルは俺の家を知っているのか?


 「お前、俺の家知ってたっけ?」

 「この前おっさんのところのドラゴンが飛んでくのを追いかけてったからその時にな」


 飛んでくクロを追いかけようと思ったのもすごいが振り切られなかったのもすごいな。

 流石獣人、俺たちの常人じゃできないことを平然とやってのける。


 「まあ、それならいいか」

 「よっしゃ!じゃあ仕事終わったら行くからな!」


 押し切られてしまった。

 どうせ断れなかっただろうし、まあいいか。

 このことはオズとミラにも伝えておかないとな。


 「ああ、ちょっと伝えておいてほしいことがあるん……」


 そこまで言いかけたはいいもののの、俺の視界からアルの姿は消えていた。

 アイツめ……少しぐらい俺の話を聞いてくれたっていいだろ……


 そういえばレオナルドさんに報告したっけ?

 俺がしてなくてもミラが報告してそうだけど、一応保険も兼ねて報告しに行こう。


 

 というわけで図書館へとやってきた。

 何か理由がなければレオナルドさんはここにいる。


 「……あれ?」


 図書館の三階、いつもの場所にレオナルドさんはいたもののなんだか様子が変だ。

 机に突っ伏して魂が抜けたように動かない。

 もしかしてついに過労死した?


 「もしもーし、レオナルドさーん?」


 小声で呼びかけてみたがちっとも反応がない。

 これってマジでやばい奴なんじゃ……


 「レオナルド様は現在お疲れのようですよ。この前から『お祝いの準備が』なんて呟いてて……何のお祝いでしょうね」


 偶然通りがかった図書館の司書さんが俺に説明してくれた。

 その様子だとアリスが生まれたことはすでにミラから聞いてるっぽいな。


 「何か伝言があれば私からお伝えしておきますよ?」

 「いや、いいです。手間が省けましたから」


 司書さんにはなにがなんだかさっぱりだろうけれどレオナルドさんがすでに知っているならそれでいいや。

 俺は図書館を後にした。


 アルは『仕事終わりに家に来る』って言ってたな。

 アイツのことだから絶対に来るよなぁ。

 とりあえず早く事情を説明しておかないと……


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