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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第10章 おじさんの子
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エピローグ:最初の贈り物

 無事に我が子が生まれた翌日。

 早くもオズは普段通りの日常生活を再開していた。


 「お腹の中にいた子供がいなくなってすごく軽くなっちゃったわね」


 あれだけ膨らんでいたお腹がすっかり元に戻っているのもそうなんだが俺的には妊娠前と体形がほとんど変わっていない方が驚きだ。

 やっぱりスタイル維持の魔法とか使ってるんじゃねえの?


 「まあ無理はすんなよ」

 「わかってるわかってる」


 振る舞いもいつも通りだ。

 ただ一つ違うところがあるとすれば、彼女は『お母さん』になったことか。


 そんな我が子はゆりかごの中ですやすやと眠っている。

 ついに生まれた俺たちの娘だ。


 「んふふー……いつになったらミラのこと『お姉ちゃん』って呼んでくれるかなぁ」


 赤ちゃんの様子をミラがうっとりしながら眺めている。

 そんなに『お姉ちゃん』という立場に憧れていたのだろうか。

 あと言葉を覚えるのは数年ほど先のことになると思うぞ。


 「そういえばこの子、名前はどうする?」


 オズに聞かれて思い出した。

 そういえばなんだかんだで女の子の名前をまだ決めていなかったんだった。

 大至急、家族会議だ。


 「これから赤ちゃんの名前を考える。この前も言った通り、一生使うことになる大切なものだから恥ずかしくない名前にしよう」

 「はいはーい!それならいい名前がありまーす!」


 ミラが食い気味に手を挙げた。

 彼女のことだからまともな感覚で名前を考えてくれているのだろう。


 「どんな名前なんだ?」

 「『アリス』っていうの。前に日本で読んだ物語の主人公の名前だよ」


 それは俺も知っている。

 きっと『不思議の国のアリス』のことだ。

 

 「それってどんな物語?」

 「女の子のアリスが服を着た兎を追いかけて不思議な世界に迷い込むの。そこでいろんな冒険をしながら最後には元の世界に帰ってくるっていうお話だよ」


 あー、確かそんな感じの話だったな。

 読んだことはないけどあらすじぐらいは知っている。


 「そういえば服を着た兎ってあっちの世界にはいなかったわねぇ」

 

 こっちの世界にはいるもんな、服を着た兎。

 兎どころかいろんな動物が服を着て歩いてるけれども。


 「それでね、アリスみたいにどんな時でも前向きでいられて、それでいて世界中を冒険する女の子になってほしいの」


 オズ家の本懐は『まだ見ぬ世界を切り拓くこと』だったな。

 そう考えればこれほどオズ家の人間にふさわしい名前はないだろう。


 「なるほど。ちゃんとそういう意味も考えてくれてたのね」


 ミラから説明を聞いたオズは感心して小さく頷いた。

 きっとミラの真剣さも伝わっているはずだ。


 「俺はアリスという名前に文句はない。オズはどうだ」

 「アタシもないわ。とても素敵な名前だと思う」

 

 こうして、俺たちの子の名前はアリスに決まった。

 ミラの願い通り、前向きに進む子に育ってくれるといいな。


 ゆりかごからアリスの泣き声が聞こえてきた。

 どうやら目を覚ましたようだ。

 そして赤ちゃんが泣くということは俺たちに何かを要求しているということだ。


 「おーよしよし、どうしたのかな?」

 「おむつの取り換えは?」

 「確認してみるわ……大丈夫」

 「じゃあご飯かな?」


 生まれたばかりの赤ちゃんのご飯ということは……


 「ちょっとだけ外れてくれない?」


 やっぱりそうなるよなー。

 ちょっと残念だけどその間に俺は別のことでもやるか。

 今日の洗濯って済ませたっけ、確認してこよう。


 「赤ちゃんってこうやっておっぱい飲むんだね」

 「ふふっ、ちょっとくすぐったい」

 「美味しいのかな?」

 「ミラも赤ちゃんだったころはヴィヴィアンさんのを飲んだでしょ」


 まだ済ませていなかった洗濯を終わらせて外へ干しに出ると窓越しにオズとミラの会話が小さく聞こえてきた。

 遠目に様子も見えるけどバレたら怒られそうだし、極力見ないようにしよう。


 そういえばこっちの世界には粉ミルクっていうのがなかったんだよな。

 あれば多少は楽ができるのかな。


 「授乳は終わった?」

 「大丈夫よ」

 「ちゃんとげっぷはさせたか?」

 

 この前勉強してわかったんだが赤ちゃんはお腹の中のガスをげっぷでさせないと飲んだものをすべて吐き出してしまうらしい。

 

 「まだしてない。どうすればげっぷしてくれるかな」

 「背中さすったり軽く叩いたりすればいいんじゃねえの?」


 赤ちゃんに食後のげっぷをさせる方法というとなんとなくそういうイメージがある。

 そして俺がいうままにオズはアリスの背中をさすったり軽く叩いたりしている。

 その十数秒後、アリスは小さなげっぷをしてくれた。

 

 「ふぅ、よかった……」


 これで吐き出してしまう可能性はなくなった。

 

 「見て見て、アリスが笑ったよ」


 ミラがアリスの顔を覗いて大喜びしている。

 我が子の初めての笑顔を見て見たい。


 「おぉ……」

 「可愛い……」


 今まで他人の赤ちゃんを見てもなんとも思わなかったのにいざ我が子となるとまったく話が変わるもんだ。

 赤ちゃんの笑顔がこんなにも可愛らしく見えるとは。


 「ほらほらアリスー、お姉ちゃんだよー」


 さっきからミラがすごいお姉ちゃんアピールをしている。

 義理の妹ができて嬉しいのは理解できるんだがやりすぎないようにな。


 「綺麗な赤い瞳、お前にそっくりだな」

 「ふふっ、顔の形なんてアンタにそっくりじゃない」


 初めてアリスの顔をじっくりと見たが瞳の色はオズ譲りだとはっきりとわかった。

 オズ曰く顔の輪郭は俺譲りらしいが自分ではわからないもんだ。


 「ミラ、俺とアリスの顔つきって似てるか?」

 「うん、すごく似てる」

 

 まさかの即答だった。

 ミラがそういうならたぶん本当に似てるんだな。


 これからもいろいろとあるだろうけれど俺とオズ、そしてミラの三人が力を合わせていけばきっとなんとかなるだろう。

 それに俺たち以外にもいろんな人が力を貸してくれる。


 俺たちの新しい子育て生活がこれから始まったのだ。



今回で十章は完結です。

次回から新章が始まります。

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