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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第10章 おじさんの子
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来たる日に備えて

 オズのお腹は通常では考えられないほどの早さで大きくなっている。

 この調子だと冬になるころには産まれそうだ。

 今のうちに産まれた後に必要になるであろうものをこちらで用意してしまおう。


 ヴィヴィアンさんは図書館を拠点にしてしばらくの間ギルドに滞在しているそうだ。

 せっかくだし、ヴィヴィアンさんを頼ってみよう。

 あの人の天然ぶりにレオナルドさんが振り回されていないか心配になるな。


 「赤ちゃんのために必要なものですか」

 「はい。具体的にどんなものがあればいいのかわからなくて……」


 なんとなくイメージはできるのだがどういったものがいいのかまでは分からない。

 それに俺は向こうの世界基準の常識で考えているからそれがこっちの世界で通用するという保証もない。

 

 「そうですね……私がミラを産む前に準備したものというと……」

 

 なんだかんだでヴィヴィアンさんが一緒に準備に付き合ってくれることになった。

 すでに出産を経験している人目線での助言を貰えるのはとてもありがたい。


 「まずは赤ちゃん専用のベッドですね。それからシーツも用意しましょう」

 

 そういえば赤ちゃんって専用のベッドで寝てるイメージあるな。

 どういうのを用意するのがいいのかな。


 「うっかり落ちてしまわないように高めの柵のついたものが望ましいです。うつ伏せになっても呼吸ができるようにシーツは硬めで高反発のものにするのがよいでしょう」

 

 まさか赤ちゃんの力がそんなに弱いとは。

 

 「あのー、もし低反発だったらどうなるんです?」

 「埋もれて呼吸ができずに死ぬでしょうね」


 しかも想像以上だった。

 赤ちゃんって弱いんだなー。


 「ベッドではなくゆりかごを利用するのもまた一考かもしれませんね」


 なるほど、ゆりかごも存在するのか。

 確かにあやしたりする分にはゆりかごの方が便利そうだな。


 「ヴィヴィアンさん的にはどっちの方がおすすめですか?」

 「私はゆりかごで赤ちゃんだった頃のミラをあやしたりしたものですが……赤ちゃんの自由を確保するためならベッドの方がいいのでしょうね……」


 ミラが赤ちゃんだった頃の話か……

 ちょっと聞いてみたいかも。

 ミラは滅多に自分の口から過去のことを話すことはないし、内緒で聞いちゃおうかな。


 「ミラが赤ちゃんだった頃の話を聞かせてもらってもいいですか?」

 「ええ、覚えていることならなんでもお話ししましょう」


 道中、俺はヴィヴィアンさんからミラが赤ちゃんだった頃の話を聞かせてもらった。

 首が据わる前のこと、初めての寝返り、初めて覚えた言葉。

 育児の体験談としてはよくありそうなものだったが俺たちもゆくゆくは体験することになるだろうし、気が付けば真剣に聞き入っていた。


 「子供のことって何年経っても覚えてるものなんですね」

 「親にとって子というのは自分の命に代えても惜しくないぐらいに大切な存在ですから」


 それは俺も重々理解している。

 

 俺はヴィヴィアンさんと一緒に用品を揃えて回った。

 買い物すること数時間、気が付けばもう昼過ぎだ。

 午後からはミラが家に帰ってきているとはいえオズが一人だと心配だな。

 帰りは早めにしないとな。


 「タカノさん、最後におひとつよろしいですか?」

 「なんでしょう」

 「助産婦は早めに決めておいた方がいいですよ」


 そうか、この世界には産婦人科というものが存在しないのか。

 となると助産婦さんの力なくして無事に出産するのは無理だな。


 「もう少しだけ付き合ってもらってもいいですか?」

 「ええ、喜んで」


 ギルドの商人に道を尋ね、俺とヴィヴィアンさんは助産婦さんのいる場所へとやってきた。

 この付近に訪れて数年経つがここを訪ねるのは初めてだ。

 というかこんな場所に人っていたんだな。


 ん?あの影はもしや……?


 「おや、あれは……」


 俺とほぼ同じタイミングでヴィヴィアンさんも見覚えのある影に気づいたようだ。

 そしてその人影というのは……


 「ミラじゃないか?」

 「ミラですよね?」


 やはりそうか。

 どうしてミラがこんなところにいるんだろう。


 「あっ!トモユキ!それにお母さんも!」


 こちらから声をかける前にこちらに気づいたミラが大慌てで駆け寄ってきた。

 

 「どうしてミラがこんなところにいるんだ?」

 「お姉ちゃんがすごく苦しそうにしてるの!もしかしたらもうすぐ産まれるのかも!!」


 この一言で俺たちの間に流れる空気は一変した。

 もう少し先だと思っていたんだが……


 「こうしてはいられません。助産婦さん、すぐに来てくれませんか?」


 ヴィヴィアンさんは気が動転したりせずにすぐに近くの助産婦さんに声をかけて事情を説明していた。

 こういう時でも冷静でいられる辺り、ただボケてたわけじゃないんだな。

 

 「俺は先に戻る。助産婦さん、お願いします!」

 「はい!わかりました!」


 俺は助産婦さんと一緒に大急ぎで家へ向かって走りだした。

 すまないミラ、ヴィヴィアンさんと一緒に用品の一部を家に持ち帰ってきてくれ。


 待ってろオズ、戻るまでなんとか無事でいてくれよ!

 

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