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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第10章 おじさんの子
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四年目のドラゴン 前編

 ドラゴン迎撃戦まで残された時間が二週間を切った。

 ミラはレオナルドさんに必死に呼びかけてくれている。

 レオナルドさん本人は開始から来られるかはわからないものの、他のマーリン派の魔法使いたちは開始と同時に参加してくれることになったようだ。


 それにしても、レオナルドさんには研究を中断するという概念がどうやら存在しないらしく、研究を早く終わらせるためにミラが手伝いをしているそうだ。

 おかげでミラは昼から夜遅くまで帰ってこない。

 強かな人だ、俺も見習った方がいいな。


 さて、俺たちの問題もそうだがクルセイダーの面々はどうしているだろう。

 気になるから様子を見に行ってみよう。


 オズを連れ、俺たちはギルドまで赴いた。

 相変わらずのお祭りムードだ。

 

 俺たち二人はドラゴン迎撃に使用する砦にやってきた。

 毎年のように破損しては補修してを繰り返しているのだが今年は何やら補修に気合が入っている。

 なにやら備え付けの兵器が新設されるようだ。


 俺は真っ先にアレンの姿が目に映った。

 図体が大きいというだけで誰よりもわかりやすい。


 「おお!タカノじゃねえか!」


 こちらに気づいたアレンが手を振ってきた。

 俺も手を振り返して反応を寄越す。

 ちょうどいい、話を聞いてみるか。


 「よう、久しぶりだな」

 「オズ家の女も一緒か。ってことは夫婦そろって視察か?」

 「まあ、そんな具合だな」


 アレンはふと俺の隣のオズに目を向けた。

 

 「なんか新しくできてるアレがなんなのか知らない?」

 「アレか。アレは俺たちが使う大砲だ」


 大砲?

 ついに火薬を使った兵器が導入されるようになったのか。

 大火力の飛び道具を使えるようになったのは魔法使いじゃない俺たち普通の人間や獣人たちにとって大きな進歩だ。


 「もっとも俺はハンマー振り回す方が性に合ってるし、誰が大砲を撃つのかはまだ未定だがな」

 「まだ決まってねえのか」

 「俺は平気なんだが他の獣人だと大砲の音にビビったりしてな。人間が扱うのが適任じゃねえかっていう話だ」


 あー、動物って爆発音が苦手だったりするもんな。

 獣人でもそれは同じなのか。


 「この前なんか試し撃ちしたらその音にアルがビビって飛び上がっちまってな。壁に張り付いてやがるの」


 マジか。

 アイツ猫だし、その場面が容易に想像できるな。


 「おい牛!何余計なことを吹き込んでやがる!」

 

 話をすれば毛を逆立てたアルがアレンの方へ飛び込んできた。

 不意打ちで繰り出されたタックルを懐に受けたアレンは吹っ飛ばされて尻餅をつく。


 「おおオッサンか!それにオズ家の当主も」


 顔を上げたアルは俺たちに気さくに挨拶をした。

 

 「へぇー、大砲の音にビビって壁を走ったんですって?口は悪いけど可愛いトコあるじゃん」

 「う、うるせぇ」


 茶目っ気たっぷりにアルをおちょくるオズに対してアルは照れ隠しに悪態づいた。

 意外なことにオズに対しては強気に出られないようだ。

 

 「そんな苦労しなくたってアタシたち魔法使いに任せておけばいいのに」

 「そういうわけにもいかない。ウチらだって魔法使いに頼りっぱなしじゃいられないからな」


 同感だ。

 いつまでも魔法使いに頼らないと俺たちただの人間や獣人たちの力でドラゴンに対処できないというのは喜ばしくない。

 討伐ができなくともなんとか撃退できるぐらいには力が欲しい。

 

 「そういえばオズ家の当主。子供ができたって聞いたが本当か?」

 「ええ。だから今はこうやってコイツと一緒にいるの」


 オズは俺の背中を軽く叩いた。

 本当は肩を叩きたいのか、ふと足元を見ると背伸びをしているのが見えた。

 俺たち二人の身長差を感じずにはいられない。


 「そういえばグレイさんは?」

 

 あの人の姿を見ていない。

 ここには来ていないのだろうか。


 「狼なら今日は街の巡回に回ってるぞ。もしかしたら帰りにでも会うかもな」

 「そうか。元気そうで何よりだ」


 もっとも、あの人がちょっとやそっとのことでどうにかなるとは思えないが。


 「産気づいてるってことはオズ家の当主は今年はこっちには来ないのか?」


 アルが思い出したように尋ねてきた。

 

 「こっちには出たいけど身体に大きな負担はかけられないし……」

 「心配すんな。オズ家の当主がいなくてもその分俺たちが頑張るからよ」

 「だからドラゴンのことはウチらに任せとけ!」


 「ふっ……アハハハハハハ!」


 アレンとアルがオズを安心させるように宣言した。

 二人の意気込みを見たオズはどこか吹っ切れたように笑った。

 

 「わかったわ。みんながアタシのことを気遣ってくれてるみたいだし、お言葉に甘えてアタシは自分のことを大切にすることにするわね」


 そうはいっているものの、オズの目は笑っていない。

 まるで自分を無理やり納得させるために言い聞かせているようだ。

 それに視線が一定していない、今の彼女は間違いなく嘘をついている。


 「仕事中邪魔して悪かったな。そろそろ帰るわ」

 「おう、夫婦の時間を大切にな」

 「さ、帰るか」


 オズの手を引き、俺はその場を後にした。

 これ以上長居しても仕方がない。


 「本当はオズ家の当主がいてくれればどれだけ心強いことか」

 「心強い存在だろうがオズ家の女だって人間だ。無理を強いることはできん」


 「なあオズ。本当はドラゴン迎撃に行きたいんだろ?」

 「やっぱりバレてたか」

 

 もう数年以上も寄り添っている関係だ。

 癖なんかはお互いによくわかっているはずだ。


 「そんなに行きたいなら行けばいい。ただし、条件を二つ飲んでくれないか」

 「条件?」


 俺からオズに課す二つの条件。

 それは……


 「まず一つは絶対に身体に大きな負担をかけないこと。特にドラゴンに大きな一撃を与えるような奴なんかは絶対に禁止だ」

 「全力を出せないアタシに何ができるかしら」

 「ワイバーン狩りならできるだろう。お前の力があれば軽い力でも存分に活躍できるはずだ」

 

 俺たちただの人間や獣人たちよりもオズの方が圧倒的に強い。

 全力を出せなくてもワイバーンを狩るぐらいなら容易くできるはずだ。

 それに魔法使いの中ではタフネスもある方だ。


 「もう一つの条件は……俺を護衛につけることだ」

 「アンタを護衛にねぇ」

 「そう。その時限り、俺はクルセイダーの仕事としてではなくお前だけの護衛として一緒に戦う」


 オズの事情を把握している俺がすぐそばにいれば不測の事態があったとしても対処がしやすくなるはずだ。

 それに俺だってドラゴン迎撃の経験者だ、護衛なら慣れたものだ。


 「……ありがとう。アンタの考えてること、全部伝わったわ」

 「そうか」


 これで迷いは吹っ切れた。

 やはり俺たちはドラゴン迎撃に参加する。

 

 それまでの時間、戦いに備えないとな。


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