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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第10章 おじさんの子
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夏の後半、何かの接近

 特別休暇開始からしばらく日が経った。

 もうそろそろ夏も終盤だ。

 あれからオズのお腹がまた少し大きくなった。

 彼女の中で赤ちゃんが順調に育っているようだ。


 ギルドの街はいつもよりも雰囲気が盛り上がり、ちょっとしたお祭り状態になっている。

 すれ違う人々もどこか陽気さを感じる。


 待てよ、夏が終わるということはドラゴンが来る時期だ。

 これはちょっとまずいことになったなぁ。


 「どうしたのよ浮かない顔して」


 俺の心配もいざ知らず、オズが呑気に伺ってきた。

 今年のドラゴン迎撃で一番心配なのはお前のことなんだよなぁ。


 「ああー、そろそろドラゴンが来る時期だからさ」

 「ッ!?すっかり忘れてた!!」


 あー、そうでしたか。

 ここ最近はいろいろと環境が変わって忙しかったから忘れてたのかな。

 急に思い出させない方がよかったかもしれない。


 「どうしよう、アタシが出れば楽なんだろうけど……」


 オズの言う通り、彼女が出ればドラゴン迎撃はかなり楽になる。

 しかし本気で魔力を行使すればお腹の子にどんな影響が出るかはわからない。


 「難しい問題だな」

 「アンタ的にはどう?」


 俺としては自分のことを大事にしてほしいから前には出てほしくない。

 万一ワイバーンに襲われたりすればひとたまりもない。


 「そうだな……自分の身体を大事にしてほしいし、できれば出てほしくはない」

 「やっぱりそうよね」


 オズも俺の言い分はわかっているようだがどこか不安が拭えないといった感じの表情をしていた。

 自分が出ないことが不服であるというよりは他の魔法使いたちの力量を不安視しているようだ。


 「そんなに他の魔法使いたちの力が心配か?」

 「レオナルドがいるし、任せておけば大丈夫だとは思うんだけど他はどうにもねぇ……」


 レオナルドさんに関しては全く問題ないだろう。

 下手すればあの人だけでも意外と何とかなるんじゃないかっていうぐらいだ。


 「どうにも不安か?」

 「多少ね」


 どうやら自分の部下たちの力量を心配しているらしい。

 オズ本人に比べれば到底及ばないだろうけれど、オズ派の魔法使いたちは一線で戦える猛者ばかりのはずだ。


 実は俺もかなり迷っている。

 俺はドラゴン迎撃に出ることはできるがその間オズとミラを二人にしてしまう。

 ミラはかなりしっかりした子だけど任せっきりにはしたくない。

 かといってオズと二人で戦線に立つのも考え物だ。


 こういうことはどうせ一人で考えていても答えは出せない。

 問題を共有できる奴と話をしてみることにしよう。

 

 「そっか!もうドラゴンが近づく時期だったね!」


 その夜、俺はミラと二人でドラゴン迎撃のことで話し合った。

 オズ以外で我が家の話ができるのは彼女だけだ。

  

 「もうちょっとだけ声を小さくしてくれないか?」

 「えっ、なんで?」

 「このことでオズがちょっと考え事をしてるみたいでな。できるだけ不安を煽りたくねえんだ」


 一人で不安を広げてしまうのは仕方がないとして俺たちが原因を作ってしまうのはできるだけ避けたい。

 

 「それで、トモユキはどうしたいの?」

 「俺はドラゴン迎撃に参加しようと思ってるんだけどオズのことが心配でな……」

 「お姉ちゃんと一緒に行っちゃいけないの?」


 そういうと思った。

 俺もそうするのがいいとは思っているんだがいろいろと不安要素が大きい。


 「そうだなぁ。オズが大丈夫そうならそれでいいんだろうな」

 「うーん……よくわからないけど難しいことなんだね」

 

 その通りだ。

 言うのは簡単だが実際に行動に移すためにはかなり慎重な判断をしなければならない。

 今回は文字通り命が掛かった問題だ、判断を誤れば取り返しのつかないことになる。

 まだ子供のミラでもそこはなんとなく理解しているようだ。


 「そこでだ、ミラにも少し頼みがある」

 「頼みって?」

 「今年はレオナルドさんに早く戦線に立ってもらうようにお願いしてきてくれないか?お前が頼めばきっとなんとかしてくれるはずだからさ」


 俺たちが頼んでもなんやかんやで気返事を寄越しされそうだ。

 親バカの気があるレオナルドさんに重要なお願いをするならミラにしてもらうのが一番だ。


 「わかった。明日お願いしに行ってみるね」


 頼むぞ。

 ちょっと情けないがレオナルドさんに関することはミラに一任しよう。


 例年通りのペースで考えるならドラゴンがこっちに最も接近するのはあと二週間ほどか。

 短めではあるがまだ考える時間はある。

 さあ、これからどうするか……


 家庭の平穏か、それともギルドの安全か。

 俺たちは今、重大な決断をしなければならない場面に直面している。


 

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