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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第10章 おじさんの子
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夜更かしの理由

 そういえばどうしてミラは早起きがどんどん苦手になっているんだろう。

 考えたこともなかったが今更原因が気になってきた。

 

 今晩こっそり覗いてみよう。

 もしかしたらなにかわかるかもしれないし。


 

 さて、そろそろ全員寝静まったころだろうか。

 時刻は夜の十一時、あまり人が住んでいないところとはいえ、周りの家の灯りもほぼすべて消えている。

 

 オズはいびきをかきながら寝ている。

 これは朝までぐっすりコースだろう。

 ちゃんと枕元に菓子が数個置いてある、頭痛対策も忘れていないようだ。


 さて、いよいよ本題だ。

 ミラの様子を覗いてみよう。


 気づかれないよう音を立てずにミラの部屋の扉を開けた。

 ミラは机に向かって何かに取り組んでいるようだ。

 見たところ座学のようだがどんな内容なのか気になる。


 「ふわあぁ……」


 途中、ミラは眠たげに上を向きながら大きな欠伸をした。

 少しため息をつき、机と向き合って座学を再開する。

 彼女にとってあれは何が何でも取り組みたいものらしい。

 ああいうところは無意識のうちにレオナルドさんと似たのかもな。

 きっとしばらくあの調子だろう、少し離れてまた見に来よう。


 時刻が零時を跨いで一時になった。

 再び見に来るとミラはまだ机に向かっていた。

 首が何度も傾きかけている、そろそろ眠気が限界なんだな。

 それにしても九歳の子がこんな時間まで起きていられることに驚きだ。


 あ、寝落ちした。

 気が付けばミラは机に伏して寝てしまっていた。

 もしかしたら目を覚まして自分でベッドに入るかもしれないし、少しだけあのままにしておいてあげよう。


 ミラが連日夜遅くまで何かを勉強しているということはわかった。

 熱心に打ち込むのはいいことなんだがそれで朝起きられなくなるのは困りものだ。


 少し観察を続けたが机に伏して寝ているミラは起きる様子がない。

 これは熟睡しているな。

 仕方がない、ベッドに移してやるか。

 机に伏したままだと身体を痛めるだろうし。


 初めて会った時から身体は少し大きくなったけれどもやっぱり寝顔は変わらないな。

 よく見ると目の下にうっすらと隈ができている。

 これはいけない、注意しておかないとな。


 いったいどんなことを勉強していたんだろうか。

 気になる、気になるぞ。


 ノートの隣に書物が置いてある。

 きっとこれをもとに勉強していたんだろう。

 タイトルは……


 「栄養学?」

 

 魔法とは関係のなさそうな学問だ。

 どんな思惑があってミラはこれを勉強しているんだろう。


 ちょっとした好奇心からノートを覗いてみた。

 

 『お姉ちゃんに栄養を付けてもらうための献立』


 そう題目された頁にはどんな栄養を摂るのがいいのか、その調理方法はなにが最適かなどが延々と考察されていた。

 子供の作ったものとは思えないほどに細かくつくられている。

 アイツ……俺たちのためにこっそりこんなことしてたんだな……


 嬉しさで目の奥から熱いものがこみ上げてきた。

 堪えろ、堪えるんだ俺……


 「トモユキとお姉ちゃんの子供が元気に生まれますように」


 ふと目に映ったノートの端に小さく書かれていた一言に耐えられなかった。

 やっぱりミラはどこまでも優しい子だなぁ……


 大人になってから十数年。

 俺は久々に泣かされた。

 でも悲しくはない、むしろこんなに優しいことで泣けてよかった。

 自分の寝室まで戻り、誰にも悟られないように涙を流し続けた。


 ありがとうミラ。

 きっとオズも泣いて喜ぶだろう。

 お前にとってはまだ未完成のノートかもしれないけれど俺たちにとって有益なことばかり詰まったノートだ。

 内緒にしてるつもりかもしれないけど参考にさせてもらうぞ。

 

 「起きろミラ、もう八時だぞ」

 「もうちょっとだけ……」


 翌朝、俺はこっそりとノートを返却していつものようにミラを起こした。

 彼女が寝不足気味な理由は分かったがあえて知らないふりをして接する。


 「そんなこと言ってると学校に遅刻するぞ。ほら起きた起きた」

 「うーん……」


 ミラの上半身を起こして半ば無理やりに立たせた。

 身体を動かせば眠気も覚めていくものだ。


 「おはようミラ」

 「お姉ちゃんおはよー」


 二階から降りてきたミラをオズが食卓で迎えた。

 枕元にストックしておいた菓子のおかげで早朝の頭痛はいくらか楽になったらしい。

 知識を授けてくれた薬屋の婆さんに感謝だ。


 食卓に並んだ朝食を見てミラは首を小さく首を傾げた。

 それもそのはず、今日はノートに書かれていたミラの考案料理を試してみたのだ。


 「どうかした?」

 「ううん、なんでもないよ」


 事情を知らないオズに尋ねられてミラは気丈に振る舞った。

 本人もさぞ不思議に感じていることだろう。


 「行ってきまーす!」

 「ちょっと待った」


 俺は家を飛び出そうとするミラを呼び止めた。

 どうしても言っておきたいことがある。


 「どうしたの?」

 「ミラ、ここ最近ちゃんと寝てないだろ」

 「え?なんでそう思うの?」

 「目の下に隈ができてるからな。朝起きられなくなるし、何より肌によくないからあんまり徹夜しすぎるなよ」


 俺に指摘されてミラは初めて隈に気が付いたらしい。

 

 「うん。気を付けるね」

 「よし、じゃあ行ってこい!」

 

 俺はミラの背中を軽く押して彼女を送り出した。

 これで少しは自分のことを労わってくれるだろうか。


 やっぱりあのことはオズにはまだ内緒にしておくか。

 ありがとうミラ。

 

 

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