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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第8章 ミラとエルフの森
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トイレ籠城戦

 あぁ?今何時?

 酒が進みすぎてついつい寝落ちしてしまった。 

 ミラはちゃんと風呂に入ってから寝ただろうか。


 「うぅ……」


 まだ夜中だよな。

 トイレ行って寝るか。


 「あれ?」


 トイレの鍵が閉まっている。

 こんな時間に誰が入ってるんだろう。


 「おい、入ってるのは誰だ?」


 確認を取ってみたが返事がない。

 いたずらにしては随分と質が悪い。


 念のためにミラの部屋を覗いてみた。

 ベッドに潜り込んで杖を抱きながら寝ている、可愛い。


 しかし今はそういうことをしている場合ではなかった。

 ミラではないということはトイレに入っているのはオズか。

 

 「くかぁー……」


 ……は?

 トイレの中からいびきが聞こえてきたんですけど。

 さてはオズの奴、泥酔してそのままトイレで寝落ちしやがったな!


 まずい、シャレにならんぞ。

 我が家にトイレは一つしかない。

 それを占拠されているということはオズが起きるまで俺とミラがトイレを使えないということになるじゃないか。

 大問題だ、早急になんとかしなければ。


 酔ったオズは滅多なことでは目を覚まさない。

 声をかけるだけではまず起きないだろう。

 どうすればいい。


 いつぞやのときみたいにミラに起こしてもらうか?

 いや、今はミラも寝てるからダメだ。

 おまけに無理に起こすと滅茶苦茶機嫌悪くなるし。


 近所の農家の兄ちゃんにわけを話してトイレを貸してもらうのも考えたがさすがに夜な夜な訪ねてこれは恥ずかしすぎる。

 マジでどうすればいいんだ。


 「うっ……」


 マズい、さっきまでは余裕だった尿意が近づいてきた。

 こうなると時間とも戦わなければならない。


 いっそのこと外で用を足すか……?

 そうだよな、この世界には軽犯罪法とかないもんな。

 よし、そうしよう。

 どうせこんな時間だ、誰も見ている人なんていないだろう。


 そう思い立って玄関を開けて外に出たはいいものの……


 「ウゥー……」

 「あ、いや、やっぱりなんでもないです」


 屋根の上から様子を見ていたクロに警告するように唸られた。

 そうだよな、自分の場所を汚されるのは飼い主であろうと嫌だよな。


 前門は閉鎖されていて、後門にはドラゴンだ。

 八方ふさがりかよ。

 

 「おい、オズ起きろ!聞こえるか!」


 やはりこうするしかないのか。

 ドアをノックしながら俺は何度もオズを起こそうと呼び続けた。

  

 「かぁー……」


 アイツめえええええ!! 

 俺は修羅場に差し掛かっているというのに呑気にいびき掻きながら寝てやがるううううう!!


 ヤバい、尿意を我慢するのがそろそろマジできつくなってきた。

 ここまでくると醒めきっていない酔いと合わせてまともな思考をするのもきつい。

 落ち着け落ち着け、こういう時こそ冷静になるんだ。


 俺はふと台所にバケツを置いているのを思い出した。

 こういう時に限って最悪の選択を取ろうとしてしまう辺り人間という生き物はよくないなぁ。

 でも正直かなり迷っている。

 どうにかしてトイレのドアを開け、オズを追い出して用を足すか、バケツに用を足して別の場所で処分するか。

 

 いや、バケツはダメだ。

 酒がだいぶ入ってるから臭いでバレる。

  

 おのれオズ。

 お前がトイレで寝落ちしていなければ今頃こんな苦労しなくて済んだのに。


 ぬおおおおおおおおおお!!

 漏れるうううううううううう!!


 ええい!こうなれば最終手段だ!

 力尽くでこのドアをぶち破り、オズを追い出して用を足す!


 「うおおおりゃあああああ!!」


 渾身のショルダータックル!

 意外なことにもこれで一発でドアをぶち破ることができた。

 そしてすぐさま便座に腰を下ろしてよだれを垂らしながら幸せそうに寝ているオズを雑に入り口前まで引きずり出した。


 ああ、これで用を足せる。

 後のことなんか知るか。


 「あぁー……」


 これはかなり下世話な話なんだが限界が迫りかけてから決壊寸前ですべてを解放するのはとても気分がいい。

 

 さて、用は済んだが追加でやることができた。

 オズを部屋まで運んでベッドの上で寝かせることだ。


 それにしてもコイツ、寝る時はいつも下着姿なんだよなぁ。

 何か着ればいいのに。

 

 よくよく考えなおしてみればスタイルのいい女、しかも俺の妻が目の前で下着姿で寝ているわけだ。

 しかもさっき雑に引きずり出したせいかパンツがほぼ全部脱げている。

 なんというか、その……とても危ない雰囲気が漂ってる。


 いっそのことこのまま……

 いや、そういうのは俺の趣味じゃないからやめよう。

 

 オズの身体は相変わらず軽い。

 俺のフィジカルがそこそこ強いのもあるがそれを差し引いても軽い気がする。

 普段から好き放題な食生活を送っているのにそのカロリーをどこで消費しているのだろうか。

 下半身丸出しの女をベッドに運ぶオッサンっていう構図がなんかもういろいろと限界だ。

 まあいっか。

 俺たち夫婦だし、決してやましい関係じゃないし。

 

 「よっこらせ」


 抱きかかえたオズをベッドの上に寝かせた。

 ほんの一時間程度の出来事だったがものすごく無駄に疲れた。

 これでようやく俺も安心して寝ることができる。



 そして翌朝。


 「トイレの鍵が壊れてたんだけどトモユキ何か知らない?」

 

 朝一番、真っ先にトイレの異変に気が付いたミラが食卓にて俺に尋ねてきた。


 「マジで!?そうだったのか」


 言えない。

 昨夜、俺が無理やり壊したなんて口が裂けても言えない。


 「壊れてると不便だから近いうちに直さないとね」

 「そうだなぁ」


 今後はトイレの増設も考えないとな……


 「ところでトモユキ」

 「今度はなんだ?」

 「トイレの前にお姉ちゃんのパンツが落ちてたよ」


 ミラからの報告に心臓が止まりかけた。

 まさかあの時脱げかけのパンツが床に落ちたのか。

 ということは今のオズは……


 「そのパンツはどこだ!?」

 「まだ床に落ちてると思う」


 それを聞くと同時に俺は猛ダッシュでトイレ前へと向かった。

 爆速でオズのパンツを回収し、休む間もなく階段を駆け上がってオズの部屋のドアを開けると同時にベッドの上のオズ目がけてパンツを投げつけて着弾するよりも先にドアを閉めて食卓へと戻った。


 「ねえ、昨日何かあったの?」

 「ハァ……ハァ……何もなかったと思う……」

 「ふーん。へんなのー」


 今のオズは間違いなく下半身に何も身に着けていない。

 彼女がそんな状態に気づかずにここまで来てみろ。

 間違いなく大惨事だ。


 たぶん俺がものすごくいろいろ言われるだろうし、とりあえず今回の一件は皆には黙っておこう。


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