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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第8章 ミラとエルフの森
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枯れ行く水晶樹

 エルフ族と出会って一週目の休日。

 俺たちはオズと共に水晶の森へと向かった。

 一晩だけと言っておきながら数日姿を見ていないクロがどうしているのかも気になる。

 

 「なんだこれは……」

 

 俺たちは森の様子を見て目を疑った。

 枯れている、ついこの前まで輝きを放っていた水晶の樹が立ち枯れを起こしてしまっている。


 「嘘でしょ……ほんのちょっと前までは確かに綺麗な水晶の樹があったのに……」


 オズもかなりのショックを受けている。

 その言葉が確かなら、ものの一瞬でここ一帯の水晶の樹が全部枯れたって言うことになる。

 

 待てよ、水晶の樹が枯れているということは……


 「オズ、エルフ族のところへ行くぞ!」


 エルフ族が危ない!


 「あぁ……水晶が……」

 「我らの命の源が……」


 なんてこった。

 懸念していた通り、エルフ族がひどく衰弱してしまっている。

 やはりあの水晶の樹が深く関わっていたんだ。


 「大丈夫!?しっかり!」


 ミラがすかさず駆け寄って心配している。


 「どうした?何があったんだ!?」

 「ゴブリンの襲撃を受けて樹が枯れてしまったのです……今は黒竜様がゴブリンと交戦してここから追い払ってくれましたがこの通りです……」


 黒竜様……クロのことか。


 「アタシ、クロの方を見てくる!」

 「頼んだ!」


 オズは召喚魔法を発動してクロの元へとすっ飛んでいった。

 たぶん、そんなに遠くには行っていないはずだ。

 

 「私たちよりも……残された水晶の樹を……」

 「でも、このままじゃ皆が死んじゃうよ!」


 ミラの言う通り、このままだとエルフ族が全員衰弱死してしまう。


 「教えてくれ!俺たちにするべきことはなんだ?」

 「水晶の輝きを蘇らせることができれば……きっと……」

 「でも、そんなことどうやって」


 いくらなんでもすぐに樹木を蘇生させるのは……


 「ミラ、回復魔法を樹に使うことってできるか?」

 「やったことないからわからないけど……やってみる!」


 そういうとミラはすぐに近くの枯れた水晶の樹へと向かった。

 できるかどうかはわからないが今はこれに賭けるしかない。

 

 ミラは必死になって枯れかけた水晶の樹に回復魔法をかけ始めた。

 効果が出るかはわからない、俺はミラの後姿を固唾を飲んで見守る。


 樹の回復にはかなり苦戦しているらしく、ミラは必死になって魔法をかけ続けている。

 その間、俺は倒れていたエルフ族の人たちをまとめて樹の下へと移動させた。

 体格がミラと同程度のエルフ族は体重がかなり軽く、楽に集合させることができた。


 数分経過し、水晶の樹には徐々に変化が表れていた。

 枯れかけていた幹の色がよくなってきている。

 少しずつではあるが確実に樹が復活しようとしている。


 一方でミラもかなり体力を使っているようですごい量の汗が額や頬を伝っている。

 このままだと樹が復活するよりも先にミラが倒れてしまうかもしれない。


 「大丈夫か?無理するなよ?」

 「大丈夫……あともう少しだから」


 ミラの必死の治癒魔法によって水晶の樹は再び輝きを放ち始めた。

 この樹の近くにいればエルフ族が回復できるはずだ。


 「ハァ……ハァ……」


 回復魔法を長時間連続で使った反動からか、ミラはぐったりとしている。

 息も切れ切れだ、これ以上は危険だろう。

 俺は膝を追って疲弊するミラを抱きかかえて前のめりに倒れるのを防いだ。


 「よく頑張ったな。ゆっくり休め」

 「でもまだ枯れた樹があんなに……」


 ミラは他の樹に目を向けていた。

 確かに一本は復活したが枯れてしまった樹がまだたくさんある。


 「今は自分を大事にしろ。これ以上頑張ったらお前の身体が持たん」


 俺は少し強めにミラに言い聞かせた。

 一本復活させるのにこれだけ疲労するのに連続で何本も復活させようとすればどうなるかは目に見えている。

 

 金色の魔法陣が開き、オズとクロが帰ってきた。

 ゴブリンと激しく戦っていたからか、クロは少し身体に傷がついている。


 「こっちはもう大丈夫……ってどうしたのよミラ!」


 ミラの状態を見たオズが声色を変えた。


 「水晶の樹を復活させたらこうなったんだ」

 「アンタなんてことさせてるのよ!」


 マジトーンでオズに怒られた。


 「回復魔法はかなり消耗が激しいの!いくらミラでもこんな大きな樹を回復させようとしたらこうなるに決まってるじゃない!」

 「すまん……」


 そうだったのか……

 知らなかったとはいえ、ミラにはかなり酷なことをさせてしまった。


 「あと数本はアタシが回復させるわ。アンタはミラに付き添ってなさい」

 

 オズの言う通り、回復魔法は使用者に結構な負担をかけるらしい。

 ミラが復活させた樹の近くの枯れた樹を数本復活させるとオズは息切れを始めた。


 「流石にこれ以上はアタシでも無理ね……」


 それでも多くのエルフ族たちが回復できるようになった。

 これでエルフ族の滅亡は一時的に免れられそうか。


 「これ以上はアタシたちだけじゃ限界ね」

 「俺たちだけじゃって……どうするんだよ?」

 「応援を呼ぶに決まってるじゃない。アタシの部下をここに招集するわ」


 そうか、オズ派の魔法使いたちならこの森に立ち入ることができるのか。

 助けに来てくれるのならばこれほどありがたいことはない。

 

 「アタシの部下たちを大至急水晶の森へ呼びなさい!」


 オズは蝙蝠のような形の使い魔を呼び出すと伝令を送った。

 これですぐ近いうちにオズ派の魔法使いたちが救援に来てくれるはずだ。


 「さて。ゴブリン退治と森の再生、この二つを同時にやらなきゃね……」


 オズが言う通り、エルフ族を助けるためにやらなければならないことは二つ。

 森を荒らすゴブリンを退治することと枯れかけているこの森を復活させることだ。

 しかも片方だけでは意味がない、両方を同時に進めなければならない。


 果たしてこの難題を解決することはできるのか……?


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